ウェブ1丁目図書館

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筋肉だけではない!タンパク質には様々な役割がある。

我々人間の皮膚、筋肉、内臓はタンパク質を材料としてできています。

タンパク質と一言で言っても、その種類は非常に多く、ヒトの遺伝子が作り出すタンパク質は約2万種類であるとされています。1990年代以降のゲノム解析の急速な発展は、タンパク質の種類の数を知るだけでなく、どのような働きをしているのか、病気への対処をどのようにすれば良いのかを教えてくれるようになってきており、今後は個々人の遺伝子に合わせた治療法も確立していくかもしれません。

もはや、タンパク質が我々の健康維持にとって重要な栄養素であり、身体の構成成分であることは疑いようがなく、日本人は米を食べなければ健康に生きていけないという言説が迷信であることもわかっています。

ヒトタンパク質の特徴

タンパク質の網羅的解析により、ヒトタンパク質の特徴が解明されています。

農学博士の平野久さんの著書「タンパク質とからだ」では、様々な科学的手法によりタンパク質の分布を示すマップが作られたことが紹介されています。

健康な時と病気の時で、タンパク質が、いつ、どこで、どれくらい発現しているのかの違いが明らかになれば、病気になった時に発現するタンパク質を捉えることが可能となります。そして、そのようなタンパク質を早期診断で見つけることができれば、効果的な治療を行えると期待されています。

タンパク質の視点から病気の治療を行うためには、ヒトタンパク質の特徴が明らかにされていなければなりません。

生体内には、以下のような機能のタンパク質があることがわかっています。

  • 酵素として機能するタンパク質
  • 遺伝子に結合してその発現を制御するタンパク質
  • 生体内の情報伝達に関係するタンパク質
  • 抗体
  • 栄養の貯蔵・輸送に関わるタンパク質
  • 膜タンパク質
  • 生体構造に関与するタンパク質
  • 筋肉などを形成するタンパク質


タンパク質と聞いて、筋肉を思い浮かべる人は多いと思いますが、生体内のタンパク質は筋肉だけではありません。上記のように様々な働きをしているタンパク質が存在しています。

タンパク質の分解は筋肉が減ることと思われがちですが、筋肉の材料となっているタンパク質だけが分解されるのではありません。その他のタンパク質も分解されています。そして、再合成、つまり、タンパク質のリサイクルも体内で行われているので、タンパク質が分解されたからと言って、体が溶けてなくなるわけではありません。

様々な視点からタンパク質を分類する

ヒトの体に約2万種類存在するタンパク質を様々な視点で分類してみましょう。

細胞内局在による分類

細胞内局在によりタンパク質を分類して見ると、細胞質に最も多くの種類のタンパク質があり、全タンパク質の20%がここにあります。

次いで、ミトコンドリア、細胞膜、核、核質、細胞骨格、小胞体、リボソーム、核膜、プロテアソーム、ゴルジ体、リソソームなどが続き、各14~1%のタンパク質があるそうです。

分子機能による分類

分子機能による分類では、DNA結合タンパク質の種類が多く、全体の20%を占めています。

次いで細胞接着関連タンパク質が14%、輸送タンパク質と細胞周期関連タンパク質が各13%、カルシウム結合タンパク質が7%です。他にDNA損傷応答、p53シグナル伝達タンパク質、抗アポトーシス、シャペロン関連タンパク質、細胞死が各5%となっています。

生物学的役割による分類

生物学的役割による分類では、酵素が29%と最も多くなっています。酵素がなければ、生体内で化学反応がスムーズに起こらないので、その量も多くなければならないのでしょう。

他に輸送タンパク質が20%、DNA損傷修復関連タンパク質が17%、ミトコンドリアタンパク質が16%、mRNAプロセッシング関連タンパク質が11%、リソソームタンパク質が7%となっています。

可溶性、膜、分泌タンパク質

可溶性タンパク質、膜タンパク質、分泌タンパク質で分類すると、それぞれ61%、23%、11%ほどとなっています。


以上のように様々な視点でタンパク質を分類すると、タンパク質=筋肉という思い込みは解消されることでしょう。

酵素だってタンパク質ですし、エネルギーを作り出すミトコンドリアだってタンパク質でできています。DNAが損傷した時に修復するのもタンパク質ですから、ありとあらゆる生命活動にタンパク質は重要な働きを担っています。

筋肉を増やすためだけに鶏のササミを食べるのではありません。生命活動の維持のために必要なタンパク質を補給するために卵や肉などの良質なタンパク質の補給が必要になるのです。

タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されており、そのうち9種類(子供は10種類)は食事から必ず摂取しなければならない必須アミノ酸で、これらは動物性タンパク質に多く含まれている傾向にあります。

米には少量のタンパク質しか含まれていませんし、必須アミノ酸の量も少ないです。当然、米ばかりを食べてお腹を満たしていれば、タンパク質不足になり、様々な疾患を招くでしょう。