SDGs(エスディージーズ)という言葉をよく聞くようになりました。また、サステナビリティという言葉も同時に普及してきました。
SDGsは、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」となります。そして、サステナビリティは、持続可能性と訳され、SDGsの「S(Sustainable)」から来ています。
今、SDGsやサステナビリティが強調されているのは、これまで通りに人間が活動していては、地球も社会もダメになってしまうとの危機感があるからです。地球の未来のことを考えるのであれば、SDGsについても知っておいた方が良いでしょう。
SDGsの17の目標
SDGsは、地球環境に配慮することだと思われがちですが、それだけではありません。SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標があります。
ESG投資の支援や気候変動リスクと金融などが専門の村上芽さんとスタートアップ支援が専門の渡辺珠子さんの共著「SDGs入門」は、そのタイトル通り、SDGsが何なのかほとんど理解していない方が最初に手に取るのに適した書籍です。企業の取組の例も紹介されており、SDGsが具体的にどういうものか想像しやすい内容となっています。
本書の19ページにSDGsの17の目標が記されているので以下に列挙します。
- あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
- 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
- あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
- すべての人々の、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
- すべての人々の水と衛星の利用可能性と持続可能な管理を確保する
- すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
- 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
- 強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
- 各国内及び各国間の不平等を是正する
- 包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
- 持続可能な生産消費形態を確保する
- 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
- 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の促進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
- 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
- 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
上記17の目標を見ると、環境だけではないことがわかりますが、とは言え、環境に関する目標が並んでいるので、SDGsを環境のための目標と思うのも仕方ないでしょう。
これら17の目標が2015年9月の国連総会で採択されたのは、世界共通の目標なしに各国や企業がふるまうと、世界的な課題が速やかに解消されないどころか、逆に悪化させてしまい、最終的に人間の生活そのものが脅かされるとの危機感があったからです。
アメリカ人の生活は、地球3.9個分の資源を必要とすると言われています。また、先進国は、途上国と比較して1人当たりのエネルギー消費量が30倍もあると言われています。このような状況が続いていけば、我々の生活が近い将来に終わりを迎える危険があります。だから、そうならないための世界共通の目標が必要なんですね。
発言力の弱い世代を考える
我々の生活が持続可能であるためには、将来世代のために地球環境を守る必要があります。そのためには、声の小さい将来世代のことを考慮しなければなりません。
子どもたちは、国際社会で発言できる力がありません。だから、子どもたちは、今、自分の力で自らの将来を決定できません。そのような状況で大人が好き勝手にふるまえば、今の子どもたちが大人になった時に生きづらい環境となる危険があります。
そのため、持続可能な開発の場合は、「後のことも考えてお金・知恵・技術を使いましょう」と呼び掛けているのです。
SDGsの目標達成は企業に期待される
SDGsの目標は、国連まかせで達成できるものではありません。
17の目標は、企業が社会や環境に与える影響が大きいからこそ、出来上がったものであり、企業の参加なしでは到底達成できません。
近年、多くの企業がSDGsの目標達成に取り組むようになっています。一見すると、SDGsの目標達成は企業活動にとって余計な支出が増すだけだと思われがちです。しかし、積極的にSDGsの目標達成に取り組む企業が増えているのは、そこに大きな利点があるからです。SDGsは、新事業開発や既存事業の拡大、新たな人材獲得、コミュニケーションツールとして企業経営に役立つと経営者も期待するようになっています。
そして、経営者が関心を持つようになっているのが、「ESG」です。「E」は環境、「S」は社会、「G」はガバナンスです。これら3つを意識して事業を行うことで、企業の生き残りだけでなく、新たなビジネスチャンスが生まれます。投資家も、ESGに対して関心を高めており、ESGを無視すれば企業は生き残れなくなるでしょう。
1つの目標が達成されれば良いのではない
SDGsの17の目標を達成するのは難しいことかもしれません。
だから、企業は、そのうちのいくつかでも達成できるようにしようとするでしょう。その際、注意しなければならないのは、1つの目標を達成するために他の目標が犠牲にならないようにすることです。
例えば、農作物を育てるのに農薬を使うと、生態系や人体に悪影響を与えるから農薬を使わないとか、別の環境に配慮した農薬を使うといった選択をしたとします。しかし、その選択により、多くの人手が必要となったとしましょう。この時、農薬の使用をやめて費用が増加した分を給料の引き下げで補うようにすると、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」という目標と相反することになります。
1つの目標達成が、他の目標達成の邪魔にならないようにすることも考える必要があります。
また、当たり前のことですが、環境や人権に配慮していることを偽装してもいけません。
例えば、環境に配慮しているふりをすることをグリーンウォッシュといいます。環境にやさしいと宣伝している製品が全く環境に配慮されていない場合は論外ですが、法律で使用が禁止になっている原材料を使っていないことを声高に宣伝することもグリーンウォッシュとなります。そんなことは当たり前ですよね。「我が社は、給料を支払っています」と社外に宣伝することと同じです。
省エネ製品を製造販売している企業が、多大なエネルギーを消費する仮想通貨に投資するのも矛盾しています。
企業がESGを意識して活動することは、これから当たり前となっていきます。持続可能な社会を実現しなければ、企業の存続を危ぶまれるのですから。そして、企業がESGに関心を示すほど、SDGsの17の目標の達成に近づきます。
二酸化炭素が地球温暖化に影響を与えているのかどうかは疑問です。しかし、二酸化炭素の排出量を抑えることは「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という目標の達成に近づくことになります。
エネルギー問題の解決は、SDGsの17の目標達成に大きく貢献するはずです。