ウェブ1丁目図書館

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世界が抱える問題を解決する英断

戦争、貧困、差別、環境破壊。世界は、今も様々な課題を抱えています。

そして、これらの課題にどう向き合っていけば良いのか、人類は常に頭を悩ませています。

全世界的には、これらの課題は未解決です。でも、一部の国や地域では、これらの課題を解決しています。だから、世界的に未解決のこれらの課題は、すでに解決している国や地域に学ぶことで、地球上から徐々に消し去ることができるはずです。

世界のリーダーの知恵に学ぶ

世界が今も抱えている課題のうち、部分的に解決してきたリーダーがいます。そのリーダーたちにサイエンスライター吉成真由美さんがインタビューした書籍が『知の英断』です。

本書では、以下のリーダーたちにインタビューをしています。


これらのリーダーたちが、何を人類の問題とし、そして、どのようにして、それを解決したかを知ることは、より良い世界を築いていくためのヒントになるはずです。

時代が変化しても変わらない基盤

カーターさんは、戦争をしかけなかったアメリカ大統領です。

潜水艦将校としての経歴を持つカーターさんは、国が強力な自衛力を持つことは必要であるが、戦争を避けるためには、自ら攻撃を仕掛けないことが最も効果的だと述べています。

時代が変わり、技術が発展しても、変わらないプリンシプル(基盤)があります。人の命を奪ってはいけないというのは、変わらないプリンシプルであるはずです。しかし、戦争になれば、相手国の市民を人間ではないと考え、相手国の兵士を殺害することが正当化されます。

このプリンシプルを変えないためには、戦争をしない以外に方法はないでしょう。

インフレの克服は貨幣価値は下がっていくものとの意識を変えること

ハイパーインフレが50年続いたブラジルでは、貨幣価値は日々下がり続けるものだと考えられていました。

この国民の意識を取り払うことで、ハイパーインフレを克服したのが、カルドーゾさんです。

ブラジルの通過であったクルゼイロは、毎日のように価値が下がり続け、それにより物価高となっていました。これを解決したのは、バーチャル通過のURVの導入でした。

1URVはほぼ1USドルに設定し、物の値段にはURVとクルゼイロの両方を表示するようにしました。クルゼイロとURVとの交換比率は日々変動するものの、商品に表示したURVの値段は一定に保たれるようになりました。それにより、「物の値段は上がるもの」との意識を持っていたブラジルの人々は、URVで表示される値段は変わらないことに気づき始め、ハイパーインフレが収束しました。

人々の意識をどう変えていくかを考える時、何かを強制する施策が行われることがあります。しかし、それよりも、人々が気づくようにすることの方が、意識を変えるのに効果的でしょう。

犯罪から健康問題へ

ドラッグの問題も、意識を変えるという視点が大切です。

今、多くの国がドラッグの使用を犯罪として取り締まっています。しかしながら、ドラッグの使用者はなかなか減りません。厳罰化しても、ドラッグの使用者が後を絶たないのは、そのやり方に問題があると考えるべきです。

カルドーゾさんは、ドラッグをタバコと同じように健康に悪い影響を与えることを宣伝し、その需要を減らさなければならないと述べています。このカルドーゾさんの考えと同じことをして成功したのがポルトガルです。ポルトガルは、ドラッグの使用者を犯罪人ではなく、病人としたことで、その数を減らすことに成功しています。

タバコは、健康被害を訴えることで、愛煙家の数を減らすことができています。ドラッグもまた、タバコと同じように健康被害を訴えることで解決可能な問題です。

ブランソンさんも、ドラッグに対しては同様の見解です。ビジネスの視点から、失敗したポリシーや会社があれば、1、2年のうちに方針を変えると述べています。しかし、ドラッグに関しては、失敗したポリシーをいつまでも続け、むしろ強化することで解決できると信じている国が多いのが現状です。

女性への教育が貧困を解決する

世界中には、貧困で苦しんでいる人が、まだまだたくさんいます。

貧困とは、単に経済的な問題ではなく、女性差別ともかかわっています。貧しい国では、女の子を他の家族に売ることが簡単にできる貧困の解決手段になっています。これは、少女は少年よりも価値が低いとみなされる社会で起こっています。

女性差別は、伝統的な慣習や宗教で起こっています。仏教でも、女性は業が深いから往生できないとされていました。

ブルントラントさんは、「宗教が権力と抑圧のために悪用されていることに対して、反対していく必要がある」と述べています。人類にとって絶対に変えてはならないプリンシプルよりも、守らなければならない教義はありません。

また、貧困を解決するには健康に対する知識も必要です。不健康では経済に寄与できません。健康に関する知識は教育と同じくらい、人々を貧困から救うために大切です。

少女結婚は、健康に悪影響を与え、教育を受ける機会も奪います。女性の教育機会を奪うことは、貧困の連鎖を生み出すことにもつながります。両者は、密接に関係しているのです。


戦争、貧困、格差の問題は、日々報じられています。

しかし、それらをどう解決すべきかについては、根本的な課題を認識できずにいるのが現状ではないでしょうか。『知の英断』で紹介されているリーダーたちの考え方を知ることで、問題解決の糸口を探ることができるはずです。