ウェブ1丁目図書館

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ブランディングで最初にすべきは社内で理念を共有すること

ブランド力とはどういうことか。

知名度が高いことが、ブランド力と思っている人は多いのではないでしょうか。ブランドに限らず、カタカナ言葉は、漠然としたイメージで語られることが多く、その意味がしっかりと理解されていない印象を受けます。ブランドやブランディングは、特にその傾向が強く感じます。

僕も、まあ、ブランドのことを単に「知名度が高いことなんじゃないの?」と思っていたわけですが。

ブランドは2つの言葉から成り立っている

ブランディング・ディレクターでコンサルタントの佐藤圭一さんの著書『選ばれ続ける必然』では、ブランディング(BRANDING)は「BRAND」と「ING」の2つの言葉の組み合わせであると述べられています。

これを見た時、ブランディングとはそういうことだったのかと、すぐに理解できました。

これまで、ブランド力を高めるといえば、広告を打ち、知名度を上げることと同義と捉えられていました。かつて情報の流通量が少なかった時代では、有名なものが、すわなち、良いものだと思われていたことから、知名度を上げることで自社の商品やサービスを選んでもらえました。

ところが、現代のように情報があふれかえっている時代では、単に広告を打って情報を発信しているだけでは、商品やサービスが選ばれにくくなっています。しかも、どの商売にも必ずライバルがいる経済が成熟した状況では、広告の効果も昭和の時代のようには高くないでしょう。

で、先ほどの「BRAND」と「ING」になります。

「BRAND」は、あるべき姿を規定して、カタチにすることを意味します。そして、「ING」はBRANDをあらゆる活動を通して、伝え、浸透させることを意味します。従来のブランド力を高める活動は、「ING」にばかり力を入れており、「BRAND」が軽視されていました。広告を打つことは、「ING」であり、「BRAND」とは違います。

あるべき姿をカタチにする

「我が社もブランディングを始めるぞ」と社長が言い出した場合、最初に取り組まなければならないのは、「BRAND」です。

自社のあるべき姿をカタチにするのがBRANDですから、会社のあるべき姿を規定し、それを関係者全員にわかりやすい形で共有しなければなりません。つまり、社員が会社に誇りを持てるようにすることがBRANDの開始です。

会社に誇りを持つ社員は、仕事に責任感を持ち、自発的に考え、同僚と協力し合うようになります。社員がこのような意識を持つようになると、会社の魅力を社外に伝え始めます。ブランディングの目的は、多くの人に選ばれ好きになってもらうことですが、そのためには自分の会社で働く社員の忠誠心を高めることが、まず必要になります。

職場の文句ばかり言っている知人の話を聞いて、その会社の商品やサービスを選ぼうとは思いませんよね。社員こそがブランド伝道師なのです。

現場と経営層のズレをなくす

BRANDにおいては、現場と経営層のズレもよく起こります。

例えば、「我が社はクールなイメージだから色で例えると青だな」と社長が思っているのに対し、現場で働いている人たちは、「スパルタな職場だからイメージカラーは赤だ」と思っているような場合です。この場合には、経営層と現場で理念の共有が行われていません。

本書では、名刺のデザインが同じ会社でも部署によって異なっている例を挙げています。この例は、自社の理念が社員に共有されていないことを意味します。その会社で働いている人でも理念が共有されていないのに、顧客が、その会社の理念をイメージすることはできません。

現場と経営層の意識のズレをなくすためには、関係者全員で自社のブランドを規定しカタチにしていく必要があるのです。

また、会社のロゴを作る場合も、社外のデザイナーに丸投げするのではなく、社内で、自社の魅力探し、想い、価値を規定する作業に時間をかける必要があるとのこと。ロゴの制作は、社員全員を巻き込んで行う仕事なのです。


本書では、BRANDINGについて、「BRAND」を中心に説明されています。「ING」については、あっさりとした説明になっていますが、それは、BRANDINGでは、「BRAND」こそが、最も重要な活動と認識する必要があるからです。

自社の魅力や強みが、社内で共有されていない状況で広告を打っても、顧客の心に響くものは何もありません。短期的に商品やサービスを売るだけなら、バンバン広告を打てば良いのでしょうが、長く愛される会社になるためには、「BRAND」にこそ、多くの手間をかけることが大切です。