ウェブ1丁目図書館

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心のゆとりが幸福度を高める

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)による2023年の世界の国別幸福度ランキングで、日本は、137ヶ国中47位でした。一方、1位となったのはフィンランドで6年連続とのこと。

幸福度ランキングでは、北欧の国々が上位に入る特徴があります。日本も、経済的に発展している国なので、もっと上位に来ても良さそうなものですが、毎年真ん中くらいの順位で安定しています。

フィンランドと日本でいったい何が違うのでしょうか。

法律でコーヒー休憩が定められている

フィンランド大使館で広報の仕事に携わる堀内都喜子さんの著書『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』を読むと、フィンランド人は、幸福度ランキングで1位になっても、それほど良い国ではないと思っているようです。

でも、本書を読んでいくと、確かにフィンランドの方が日本より暮らしやすい国だなと感じられる部分がいくつもあります。

例えば、本書のタイトルにもあるように平日の仕事が忙しくても定時で家に帰ることができるのは、日本との大きな違いの一つと言えるでしょう。夏休みも1ヶ月あり、フィンランド人の働き方には、日本にはないゆとりを感じさせられます。

興味深いのは、コーヒー休憩が法律で定められていること。だからと言って、コーヒー休憩は強制されるものではなく、各自が好きな時間にとっても良いし、仕事をしながら何かを飲んでいる人もいるそうです。

この強制されないところが、幸福度ランキングで1位になる理由なのではないかと思います。強制しない社会は、多くの選択肢を個人に与えることにつながるはずです。堀内さんによると、フィンランドの場合、選択を限定する要素が少なく、勉強、就職、結婚、出産、転職など、人生における選択の場面で、本人の事情や希望、ニーズに応える選択肢が用意されているとのこと。そして、年齢、性別、家庭の経済状況などは、たいした障壁にならないそうです。

対して、日本はどうかと考えると、仕事で見た場合、年齢や性別の壁を感じられる場面があります。進学するにしても、家庭の経済状況が影響することがあります。

選択肢を限定しないフィンランドは、格差も小さく、子どもの貧困率も低い水準を維持しています。日本にはない「ゆとり」がフィンランド国民の幸福度を高めているのでしょう。

学歴なんて気にしないし残業もしない

日本では、いい齢したオッサンがSNSでFランがどうたらこうたらと、学歴について語っています。その年で、学歴に何の意味があるのか、語っていて恥ずかしくないのかと思いますね。

フィンランドでは、学歴にこだわる人は少なく、大学名で、頭が良いとか自分より上だとか、そんな上下関係を作らない社会になっているようです。公立学校が多く、家から近い学校に通うのが一般的です。

また、学校を卒業した後、即戦力で働けるように進学は、職業高校専門職大学を選ぶ人が多いとのこと。日本のように偏差値で大学を選ぶことはないようです。偏差値で大学を選ぶのは、考えてみればおかしな話です。自分がやりたいことよりも、偏差値が高い大学を選ぶのですから。

先ほど、フィンランドでは夏休みが1ヶ月あることを紹介しました。そんなに長く休みを取ると、日本の職場では仕事が回らなくなります。フィンランドでは、夏の人手不足をどうやって乗り切っているのでしょうか。

フィンランド企業では、6月からの約3ヶ月間、大学生や卒業したばかりで定職についていない人をインターンとして積極的に雇っているそうです。新卒採用制度がないフィンランドでは、インターンで仕事の経験を積むことは、就職に有利になるので学生にとっても利点があります。企業にとっては、重荷になる面もありますが、学生は重要な戦力となっているようです。

根性と忍耐で乗り切る場面も

フィンランドでは、強制されない代わりに自分から積極的に行動しなければならない場面が多くあります。就職に関しても、日本のような就職サイトは充実しておらず、自分から動かなければならない場面が日本よりも多い印象を受けます。

一方で、精神面では、フィンランド人と日本人で似ている部分もあります。

日本では精神論で困難を乗り切ろうとする場面を見ることがよくありますが、フィンランドでも、困難に耐えうる力、努力してあきらめずにやり遂げる力、不屈の精神、ガッツといった意味合いのシス(SISU)という言葉が使われる場面があります。

日本の根性に近い言葉ですが、シスの使用頻度は、日本の「頑張る」といった意味合いの言葉より少ないようです。

シスを使用する前提にあるのは、不可能とも思える困難です。おそらく、人生においてシスを使う場面は少ないのでしょうが、そのような場面に直面したら、一心不乱に目標に向かって努力するのがフィンランド人の特徴なのでしょう。

このシスという言葉の裏返しで、フィンランド社会には、ゆとりがあるのかもしれません。フィンランドでは、サスティナブル(持続可能性)が重視されており、リユースやエコに配慮した商品が多く見られるようです。フィンランド社会では、力を入れるところと力を抜くところがはっきりしているように感じられます。それが、様々な場面で、ゆとりを生み出しているのでしょう。

自分がいなくなっても社会は持続する

本書の最後の方で、あるフィンランド人が語っていた言葉が印象的でした。

組織は、自分が抜けても必ず周りの人が穴埋めするから、安心して抜けても良いという言葉です。

日本だと、自分が抜けると仕事に穴が空くから絶対に抜けられないと思う人が多そうです。でも、組織は、構成員1人が抜けたところでつぶれることはそうそうありません。社会も同じではないでしょうか。

社会は、自分1人が抜けても持続するのです。


幸福度ランキングで1位のフィンランドと真ん中くらいの日本で何が違うのか。

違いを見つけるとしたら、考え方でしょう。日本は、物質的に充実していますし、自然も豊かです。違うのは、考え方、特にゆとりです。何かに追われているような強迫観念や義務感。そういったものが、国民の幸福度を下げているのでしょう。

「足るを知る」という言葉があるように十分に満たされているのだとの気持ちでいることで、幸福度は上がるはずです。

いつでも水洗トイレが使える日本は、幸せな国です。

いったい何が不足しているのか。