ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

過労や長時間労働は勤勉を称賛する社会で起こる

現代の多くの日本人は、組織に所属して働くようになっています。そして、仕事とは、組織に所属し、組織の規律に従って行動することとも言えます。

多くの人が集まり、分業することは、仕事を効率化しました。エアコンも自動車も、1人で作るより、複数人で作業を分担した方が、より高品質なものをより多く作ることが可能です。現代日本人が、快適に生活できるのは、組織化された仕事のおかげです。

でも、組織の中で分割された仕事を日々こなすのは、どこか味気ない気がします。日々の暮らしは快適になったけども、1日の大部分を分割された仕事に費やすことにやりがいを感じられないという方がいるのではないでしょうか。

時間の奴隷

組織の中で働くことは、組織のルールに従うことでもあります。組織のメンバーが、それぞれ好きに仕事をしていたのでは効率的ではないので、職場にいる間は、組織のルールに従い作業をすることを要求されます。

組織のルールは、創立当初はメンバーの合議で決められたかもしれませんが、組織が動き始めるとメンバーはルールに従って作業するだけとなります。そして、新たに加入したメンバーは有無を言わさず組織のルールに従わされます。

転勤、組織内での競争、長時間の会議への出席など、メンバーに不都合なことでも従わなければなりません。

労働法を専門とする大内伸哉さんの著書『勤勉は美徳か?』では、このように仕事に主体的に参加できない状況が、労働者を不幸にすると述べています。

仕事に主体的に参加できない状況は、時間の奴隷になっていると言えます。人々が時間の奴隷になったのは、産業革命からとのこと。大規模な工場で、分業と協業が進められた結果、多くの労働者が集まって働かなければならなくなりました。多くの人が働く職場では、人をまとめるためのルールが必要になります。それが、働く人を時間と場所に拘束するようになったのです。

では、働くことが人を不幸にするのでしょうか。同じ所得を得ている人でも、働いている人の方が仕事を探している人よりも幸福に感じているという研究結果があることから、働くことが人を不幸にするとは言えません。

働くことで、時間の奴隷になることが人を不幸にするのです。

お金以外の充実感を得る

しかし、時間の奴隷となることを必ずしも不幸と感じない場合もあります。

例えば、残業です。

残業をすれば、拘束時間が増えるので労働者にとっては不幸なことのように思えます。しかし、日本では、残業を積極的にして残業代をもらうことに喜びを感じる人が多かったのです。

法律上は、従業員に残業をさせた会社は、割増賃金を支払わなければならないと規定されています。この趣旨は、長時間労働を防止し、違反した会社にはペナルティを与えることにあります。残業代の支払いは、会社に罰金を科すためにあるのです。

ところが、日本の労働者は、残業代欲しさに残業をしており、しっかりと残業代を支払ってくれるのなら残業をすることを苦にしませんでした。これが、長時間労働や過労を生み出すことになり、人々を時間の奴隷にしていったのです。

お金のためだけに働くことは、やがて人々を不幸にしていきます。幸福になるためには、生活のためにお金を稼ぐだけでなく、仕事から充実感や満足感を得られるようにする必要があります。

パラレルキャリアの可能性

一つの職場でずっと働き続けることは望ましいことに思えます。その仕事が好きで、一日中、仕事ばかりしていたいという人なら、ずっと同じ職場で働き続けることが幸せとなるでしょう。

しかし、誰もが、そうとは限りません。中には、不本意な仕事をしている人もいるでしょう。そのような人が、1日の3分の1を仕事に費やし、仕事時間外でも職場に配慮して行動しなければならないことは苦痛です。

仕事時間外は、自由にして良いと言われても、正社員で働いていれば副業が禁止されるなど、何かと行動に制限が加わることがあります。

そもそも、なぜ副業が禁止されるのでしょうか。それは、ライバル会社で働くことで、自社に不利益をもたらす危険があるからです。だから、従業員には競業避止義務が課せられます。しかし、競業避止義務に反しなければ、副業は認められて良いはずです。

会社の業務に支障が出る、副業の内容によっては会社の品位を損ねるなどの理由で副業が禁止されることがありますが、これは、そのようなことがなければ副業を認めても良いと解釈できます。また、副業禁止は、職業選択の自由を奪うこととも言えますから、競業避止義務に反しないのであれば、副業は問題ないはずです。

むしろ、労働者にとって副業は、時間の奴隷から解放される可能性があり、人生をより幸福にできる可能性も持っていますから、積極的に本業以外の仕事を持つことが望ましいと言えます。副業に限らず、ボランティアでも趣味でも構いません。このような本業以外の活動をパラレルキャリアといいます。

最近では、パラレルキャリアを推進する会社が増えています。本業以外の活動が個性を生み出し、それが本業に役立つと考えるからです。

労働者にとってもパラレルキャリアは、転職に役立つ能力を養えるので、本業がダメになった時の保険になります。時間の奴隷になることも避けられるでしょう。

強制的に休ませる

幸福な労働者になるためには、休暇もしっかりと取る必要があります。

休むことは、過労を防ぐことになりますから、誰もが大切なことだとわかっているでしょう。しかし、有休休暇を取ることをためらっている人は多いのではないでしょうか。

有給休暇は労働者の権利であり、法律上は、いつでも取得できます。10日でも20日でも、持っている有休休暇をまとめて使うことも許されます。有給休暇の取得に上司の許可が必要としている会社は違法です。

海外では、労働者を強制的に休ませる法律があります。仕事と仕事の間は必ず11時間はあけなければならないとしている国もあります。土日や深夜に営業することを禁止する閉店法がある国もあります。

365日24時間営業は消費者にとって便利ですが、それを望むことは長時間労働や過労につながります。他者に長時間労働を強いることは、自分もまた他者から長時間労働を要求されることになるでしょう。


組織のルールに従い長時間働くことを勤勉だと考え称賛することは、労働者を不幸にする行為なのかもしれません。何より自分自身も労働者なのですから、その考え方が自分の首を絞めることにもなります。

時間に隷属する働き方から、単純労働であっても、創造性のある働き方に変えていくことが、幸福な日常生活を送るためには大切です。