ウェブ1丁目図書館

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時代小説

力なき者の中立は実現しない

江戸時代の新潟県に越後長岡藩という小さな藩がありました。無名な藩なので、現代人で越後長岡藩を知っている人はほとんどいないでしょう。もしも、知っているとしたら、河井継之助とセットで知ったという人ばかりと思います。河井継之助は、幕末の越後長岡…

源平合戦は庶民にとって益のない権力欲にまみれた戦い

「祇園精舎の鐘の声」で始まる平家物語は、栄華を誇った平家が転がり落ちていく姿を描いた古典で、現代でも、平安末期から鎌倉初期の時代を題材とした歴史小説が数多く出版されています。「驕る平家は久しからず」という言葉がありますが、この時代は、平家…

歴史上の事件の当事者の心理を読み解く

芥川龍之介の『羅生門・鼻』は、王朝物と呼ばれる平安時代を題材にした作品が収録されており、その中には、歴史上実際にあった事件を題材にしたものもあります。「その話は知っているよ」という内容でも、芥川龍之介の視点は角度が変わっているので、新鮮さ…

平安時代から人間の心理は変わらない

芥川龍之介の作品には、王朝物と呼ばれる平安時代を題材にした歴史小説があります。それら王朝物を収録したのが、『羅生門・鼻』をです。芥川龍之介の王朝物には、今昔物語や栄華物語など必ず出典があります。だから、『羅生門・鼻』を読んでいると、どこか…

伊藤博文暗殺は殺人事件か独立戦争か

1909年10月26日午前9時過ぎ。東清鉄道ハルビン駅で、伊藤博文が韓国人の安重根に射殺されました。この事件は、日本側から見ると、テロリストによる殺人事件です。ところが、安重根は、伊藤博文の暗殺は殺人ではなく、独立戦争だと述べています。その真意は、…

悪人は悪人のまま

犯罪を描いた物語の終わりは、大体こんな感じです。 犯人が最後に改心する 犯人が正義の味方に成敗される やむを得ない理由で悪事に手を染めた犯人に慈悲を与える 多くの場合、物語の終わりとともに悪者がいなくなるのが定番です。このような展開が、ウケが…

金銭問題も色恋沙汰も人間社会が続く限り発生し続ける

ドラマ、小説、漫画などの作品の中で、何か揉め事が発生する時、その原因は、金か色恋沙汰ということが多いです。どちらも、視聴者や読者のウケが良いから、物語の中で使われるのでしょう。金や色恋沙汰をテーマにした物語は、日本では随分と古くからあり、…

正直者が報われない話が多い今昔物語

12世紀に書かれたわが国最古の説話集である今昔物語。「今は昔」で始まる有名な説話集で、1200編以上も収録されています。こんなに多くの説話が収録されているのですから、今昔物語の説話を参考にして作られた物語が多そうですね。今昔物語を一から読もうと…

関ヶ原の戦い前の情報収集の違いで分裂した真田家

慶長5年(1600年)9月に起こった関ヶ原の戦いは、天下分け目の合戦として知られています。全国の大名が東西両軍のどちらかに加わらなければならない状況にあり、自軍が味方した方が負ければ、その時点で家は滅亡。したがって、関ヶ原の戦い前に徳川家康率い…

思想ではなく利益で人を結びつけた坂本竜馬

大政奉還によって江戸幕府を終わらせた坂本竜馬。後世の人は、武力を使わず、無血革命を実現させた竜馬を偉大な政治家や革命家と評価します。しかし、彼は、政治家でも革命家でもなく、商売人だったからこそ時代を動かすことができたのではないでしょうか?

責任転嫁と権力の所在を明らかにしない日本人の特徴は高杉晋作譲りか?

日本人は、責任の所在を明らかにしないとか、不祥事が発生した時に誰も責任をとらないと指摘されることがあります。会社が不祥事を起こせば、社長が責任をとるべきだと思うのですが、日本の場合、そうなってないことが多いように思います。政治の問題でもそ…

佐久間象山に学ぶ。思想が違えば善悪はひっくり返ることもある。

人には人の考え方があり、どういった思想を持っても自由です。これが現代の民主主義の考え方ですよね。しかし、他人の権利を侵害する行為は罰せられます。でも、民主主義を標榜している国家が、他国を侵略することについては、その国の人々の自由を奪ったと…

吉田松陰のように思想を安易に他人に語ると取り返しのつかないことになる

誰しもが、何かしらの思想を持っていることでしょう。どのような思想を持とうと、民主主義の世の中では建前上は自由です。もちろん、他人の権利を侵害するようなことは許されませんが。しかし、どんなに自由と言っても、自分の思想を語る場は慎重に選んだ方…

高杉晋作と芸者おうのの二人旅

幕末の長州藩を滅亡から救ったのは、間違いなく高杉晋作です。幕府の長州征伐におののいた藩首脳は、尊王攘夷派を一掃し幕府寄りの勢力である佐幕派が実権を握りました。この時、高杉晋作は長州にはいませんでした。しかし、事態を知った彼は騎兵隊を率いる…

欧米の植民地支配を回避した高杉晋作の交渉力

日本は、その歴史の中で一度も他国の植民地になったことがありません。島国だから、他国の侵略を受けにくかったということもあるでしょう。しかし、19世紀に入ると、欧米列強が軍艦で大海原を走り回り、島国を次々と植民地支配していったことを考えると、必…

競わせて才能を引き出す吉田松陰流教育術

幕末の長州藩士・吉田松陰は、松下村塾を開き藩士たちの教育にあたりました。子供から大人まで、様々な塾生が通う松下村塾は寺子屋のようでもあり大学のようなものでもありました。吉田松陰が、塾の中で最も目をかけていたのが久坂玄瑞(くさかげんずい)で…

吉田松陰の思想の基礎を築いた玉木文之進のスパルタ教育

明治維新の実現を語るうえで、欠かすことができないのが吉田松陰の存在でしょう。もしも、吉田松陰が長州藩で生まれなければ明治維新は違ったものになっていたかもしれません。彼は、高杉晋作や久坂玄瑞(くさかげんずい)など、幕末の勤王の志士たちに大き…

年齢の離れた大人に褒められたら警戒しろ

天下を統一した徳川家康が苦手としていたのが城攻め。家康は、野戦にはめっぽう強かったのですが、城にたてこもった敵と戦うのが非常に下手でした。だから、関ヶ原の戦いの時も、西軍が城にたてこもらないように様々な策を講じて、野戦に持ち込み、そして勝…

早すぎた倒幕計画が明治維新を1年遅らせた

幕末。外国人を日本から追い払おうという攘夷(じょうい)の思想が、国内に満ち溢れていました。この攘夷の思想は、やがて倒幕へと変わっていきます。万延元年(1860年)3月3日の雪の日に起こった桜田門外の変で、大老の井伊直弼が水戸浪士たちに襲撃されて…

石田三成の正義よりも徳川家康の私欲の方が多くの人々を幸せにした?

慶長5年(1600年)に徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍が戦った関ヶ原の戦いは、天下分け目の合戦として名高いですね。最終的に勝ったのは東軍で、西軍を率いた石田三成は後に処刑されます。関ヶ原の戦いは、徳川家康よりも石田三成に正義があったと思…

いつの世も口のうまい人間が勝つのか?現代は平将門の時代から何も変わっていない。

平安時代に平将門が起こした天慶の乱。この時、将門は、自らを新皇と名乗ったのですが、これが、後の世でけしからんと言われます。朝廷に刃向い、自分を新皇だと名乗ったのですから、戦前の天皇陛下が絶対だという教育では、彼を悪人にするのは当然と言えば…

バブル経済時代に織田信長ブームを巻き起こした歴史小説

バブル経済花盛りの1980年代後半。この頃から、織田信長ブームが起こり始めました。織田信長がブームになったのは、その時代の社会背景が彼の生き方とぴったり合っていたのでしょうが、その火付け役となったのが、津本陽さんの歴史小説「下天は夢か」です。…

死刑宣告を受けた敵将を助けた乃木将軍

乃木希典(のぎまれすけ)は、明治時代の軍人。戦前は、日本国内で知らない人はいなかったほどの人気者だったのですが、現在では知らない人の方が多いですね。また、乃木希典を知っている人でも、彼に対する評価は、日露戦争の旅順攻撃で多大な犠牲を出した…

応仁の乱を描いた短編時代小説を読んで、世の中が乱れても変わらないものがあることを知る。

応仁の乱は、戦国時代に突入する原因となった中世の大乱です。応仁の乱が起こった理由は、将軍継嗣問題なのですが、それ以外にも畠山氏の後継者問題なども絡んで、何が何だかわかりにくいですね。その複雑な応仁の乱を短編小説にしたのが、池波正太郎さんの…

結末を読むと笑ってしまう敵討ちを題材にした短編時代小説

時代小説の定番のネタと言えば敵討ち。物語の設定は、父親の仇を討つというものが多いですね。池波正太郎さんの短編時代小説「黒雲峠」も、息子が父親の仇を討つというものです。最後は悲願を果たすのですが、その結末が、ちょっと笑ってしまうんですよね。

日本左衛門を召し取った徳山五兵衛秀栄を描いた短編時代小説

延享3年(1746年)9月9日に大盗の日本左衛門逮捕の命が、徳山五兵衛秀栄(とくのやまごへえひでいえ)に下ったことから始まる池波正太郎さんの短編小説「秘図」。この作品は、「賊将」という本の中に収録されています。始まりが、このような感じだから、五兵…

自分が放った刺客に左遷させられた信州松代藩の執政を描いた短編時代小説

江戸時代に信州松代藩という藩がありました。藩祖は真田幸村の兄の真田信之です。江戸時代中期、松代藩の執政であった原八郎五郎邸に密かに呼び出された児玉虎之助は、恩田木工(おんだもく)の密使平山重六を斬り、懐中から密書を奪うように命じられます。…

明治維新の功労者から賊将に落ちた桐野利明を描いた短編時代小説

幕末の薩摩藩に一人の剣の達人がいました。彼の名は中村半次郎。後に日本で最初の陸軍少将となった桐野利秋のことです。池波正太郎さんの短編小説「賊将」では、桐野利明の生涯が描かれています。池波さんは、他にも桐野利秋を主人公にした「人斬り半次郎」…

技術力で明治新政府に参加した肥前佐賀藩

明治維新を実現した勢力と言えば、薩摩藩、長州藩、土佐藩が有名です。この薩長土の3藩が、政治的に大きな役割を果たしたことが、倒幕につながったことは言うまでもありません。しかし、政治力だけで、倒幕が可能だったかというと、そうではありません。倒幕…

提灯張りかえ職人が黒船を造る短編時代小説

幕末の宇和島藩に嘉蔵という細工物にかけて、おそろしく器用な職人がいました。その器用さを褒められたことから、嘉蔵は提灯の張りかえを生業として生計を立てます。とは言え、提灯の張りかえだけでは食えないから、看板の下の方に「どんな細工物でもいたし…