ウェブ1丁目図書館

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ホモ・サピエンスが均質化した理由はなんだ

イヌには、秋田犬、柴犬、シェパード、ポメラニアンなど様々な種類があります。ネコにも、アメリカンショートヘアやマンチカンなど多くの種類があります。

他の動物たちも同様にいろんな種類があるのに人類は我々ホモ・サピエンスだけしかいません。

考えてみると不思議です。昔は、ジャワ原人北京原人フローレス原人、ネアンデルタール人と人類にも複数の種類があったのですが、ホモ・サピエンスを除いてどこかに行ってしまったのです。

ホモ・サピエンスが駆逐したのか?

人類が、ホモ・サピエンスだけになったのには、どういう理由があったのでしょうか?

もしかしたら、ジャワ原人ネアンデルタール人も、ホモ・サピエンスの侵略によって根絶やしにされてしまったのか?ヨーロッパの帝国主義時代を思い起こすと、そういうこともあり得そうです。他の土地を次々に侵略し、そこに住む人々を追い出し、やがて地球上で人類はホモ・サピエンスだけになったのではないかと。

文筆家の川端裕人さんの著書「我々はなぜ我々だけなのか」を読むと、必ずしも、そうとは言えないと思います。同書は、人類進化学者の海部陽介さんが監修しており、様々なところで海部さんの言葉が紹介されています。

海部さんは、ホモ・サピエンスが他の人類を駆逐したのかどうかの質問に対し、このように答えています。

「それは、本当によく聞かれる質問なんです。多くの方々が、血なまぐさいことをイメージしています。でも、必ずしもそうではないと、いつも言っています。たとえば、セイヨウタンポポが日本古来のタンポポを凌駕したと言っても、戦争しているわけではないですよね。他の動物にしても、直接、戦っているわけではないですよね」
(251ページ)

確かにそうです。海外からやって来た移入種が在来種と入れ替わることはありますが、戦いが繰り広げられることはそうそうありません。多くの場合、移入種が生態系の中での位置(ニッチ)を奪うかたちで入れ替わって行きます。

ホモ・サピエンスも、同じような増え方をし、原人や旧人と入れ替わって行った可能性があります。

ホモ・サピエンスの機動力

では、生き残ったホモ・サピエンスと絶滅した人類との違いはどこにあったのでしょうか?

その答えとなりそうなのが、ホモ・サピエンスの機動力です。

他の人類は、ホモ・サピエンスほどは機動力を持っていませんでした。そのため、他の人類は、その土地で長く生活することになります。そして、その土地で独自の進化を遂げ、人類は多様になりました。例えば、孤島で進化したフローレス原人は、体高を1メートルほどに縮め低燃費化を果たしています。

しかし、このように自らの体を変化させて環境に適応する方法には限界があったのでしょう。土地に縛られて生きていくことは、その土地の資源が枯渇した時に絶滅する危険性をはらんでいます。他の土地に移動する手段を持たなかった人類は、環境変化に耐えられず絶滅したのかもしれません。

一方、絶滅しなかったホモ・サピエンスは、海を渡る機動力を持っていました。

ホモ・サピエンスは、かつての人類が到達できなかったありとあらゆる場所へとあっというまに広がった。ユーラシア大陸を東端まで歩き通すのは、原人も、おそらく旧人も果たしたことだが、ホモ・サピエンスはそこから先が違った。航海術を得た集団は、インドネシアの島々や、ニューギニアやオーストラリアに至った。寒い地域でも生き延びられる技術を得た集団は、シベリア奥部にも進出して、やがてベーリング海の陸橋を渡り、アメリカ大陸へ拡散した。
ホモ・サピエンスの均質さは、地球を股にかけることができる能力の裏返しだ。長い時間をかけて身体を大幅に変えるのではなく、洗練された石器を使い、海洋には舟を、寒冷地には毛皮の服をといったふうに、時と場合によって適した技術を創造しては乗り越えていった。
(257ページ)

なるほど。ホモ・サピエンスは環境に適応するために身体を進化させる道を選ばなかったわけですね。

自分に合わない環境からは逃げ出す。そのための航海術を身に着けていたので、地球上のあらゆる地域に移動することができたのです。また、寒冷地では毛皮を着て温まることを思いつきました。火を使って温まることもしたかもしれません。

ホモ・サピエンスは、暖かい土地に住んでいても、寒い土地に住んでいても、体のつくりは同じです。肌の色が違っていたり、顔のほりの深さが違っていたりすることはありますが均一です。

原人や旧人であれば、時間をかけてその土地にあった身体へと変化させていくところですが、ホモ・サピエンスは道具を使うことで身体を変化させず環境に適応することができたのです。それが、ホモ・サピエンスの均質化につながっているのでしょう。

本当にホモ・サピエンスは1種だけか

しかし、世界中に拡散したホモ・サピエンスは本当に1種だけなのでしょうか。

ホモ・サピエンスが未開の土地に移動した時、そこで他の人類と遭遇していないのでしょうか。例えば、クロマニヨン人(新人)は、ネアンデルタール人旧人)と出会わなかったのでしょうか。

残念ながら、クロマニヨン人ネアンデルタール人と直接出会ったとする遺跡は見つかっていないようです。しかし、DNAの分析では、両者の間には限定的な交雑があったことが明らかになっています。

そうすると、ネアンデルタール人以外との交雑も考えられそうです。海部さんの話によると、もしかしたらジャワ原人と現生人類は混血していたかもしれないそうです。しかし、証拠が積み重なって定説になったことではありません。


現生人類、すなわちホモ・サピエンスも、原人や旧人との混血があって多様なのかもしれません。

しかし、混血して多様性があったとしても、道具を使うことを覚えたホモ・サピエンスは、身体を環境に合わせて変化させる道を選ばなかったので均質化したと考えられないでしょうか。