ウェブ1丁目図書館

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インスリンを出しまくっている現代日本人がアルツハイマー病にかかるのは必然

高齢化社会の到来で罹患者の数が増えているのが認知症です。

認知症は記憶障害を起こす病気で、その種類はいくつかありますが、中でもアルツハイマー病の罹患者が多いです。アルツハイマー病にかかる原因としては加齢が考えられますが、近年、別の原因でアルツハイマー病にかかることがわかってきました。

その別の原因は、インスリン抵抗性です。

アルツハイマー病の原因物質

広島大学名誉教授の鬼頭昭三さんと公益財団法人冲中成人病研究所主任研究員の新郷明子さんの共著「アルツハイマー病は『脳の糖尿病』」では、インスリン抵抗性がどのようにアルツハイマー病と関わっているのかが、一般人にも理解しやすいように解説されています。

アルツハイマー病の原因物質は、アミロイドβタンパクと呼ばれる絹糸のような強靭な繊維性のタンパク質とされています。アミロイドβタンパクが、脳内で過剰蓄積すると、神経細胞の間質に老人斑と呼ばれる塊ができていきます。老人斑に続いて、神経細胞の内部に異常にリン酸化されたタウタンパクが凝集して蓄積し、繊維となって神経細胞の中を埋め尽くします。

このような一連の化学反応をアミロイド・カスケード反応と言います。

タウタンパクは元来、細胞が正常な機能を営むうえで必要な役割をしているタンパク質ですが、過剰にリン酸化されると、”異常な折り畳み構造”をつくります。すると、神経細胞内で重合して、神経原線維変化を起こしてアミロイドβタンパクが蓄積するとともに、毒性を発揮して、細胞から細胞へと伝えていきます。その結果、神経細胞が次々と死んでいってしまうのです。このような現象を、最近では「タンパクがん」とよんだりしています。
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アミロイド・カスケード反応は、脳の中でも記憶を担当している海馬で早期にかつ強力に起こります。アルツハイマー病にかかると記憶障害が起こるのは、これが理由です。

アルツハイマー病の最大の危険因子は糖尿病

先にアルツハイマー病にかかる原因として、インスリン抵抗性を挙げました。

インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンです。血糖値が上がると、インスリンが分泌され骨格筋や脂肪組織に血糖が取り込まれて血糖値が下がります。しかし、肥満するとインスリンが効きにくくなり、速やかに血糖を処理できなくなり上がった血糖値をなかなか下げられなくなります。これがインスリン抵抗性と呼ばれる状態です。

インスリン抵抗性がある状態では、膵臓は血糖を下げるために多くのインスリンを分泌し続けます。しかし、インスリンを多量に分泌しつづけていると、やがてβ細胞が疲弊してインスリンを分泌できなくなります。このようにβ細胞が壊れてインスリン分泌が減ってしまうのが糖尿病です。

欧米人では、インスリン抵抗性からインスリン分泌の減少へと進み糖尿病を発症することが多いです。しかし、アジア人はβ細胞の働きが弱い人が多いことから、インスリン抵抗性を惹起する前にインスリン分泌が減少し糖尿病を発症する場合が多いとされています。


インスリン分泌は、膵臓のβ細胞だけでなく脳の海馬からも分泌されています。実は、インスリンは脳に働いて記憶物質としても重要な役割をしているのです。

糖尿病になるとアルツハイマー病にかかる確率が高まるのですが、糖尿病もアルツハイマー病もインスリン抵抗性が関与していることから、両者はどちらが先でどちらが後かではなく同時進行で起こっていると考えた方が良いでしょう。

インスリンアミロイドβタンパクの関係

脳は、ブドウ糖を取り込んでエネルギー利用します。しかし、インスリン抵抗性があると脳のブドウ糖取り込みが上手くいかなくなります。これがアルツハイマー病につながる大きな原因です。

インスリン抵抗性があると、膵臓はより多くのインスリンを分泌し、高インスリン血症の状態になります。血液中にインスリンが多くあると、脳に多くのインスリンを送ることができそうです。しかし、高インスリン血症の状態では、血液脳関門インスリンが越えにくくなるので、逆に脳が血糖(ブドウ糖)を摂り込みにくくなるのです。

また、高インスリン血症の状態では、インスリン分解酵素IDE)の活性が低下することもアルツハイマー病発症に拍車をかけます。

インスリン抵抗性による高インスリン血症の状態では、インスリン分解酵素インスリン分解のために大量に消費されるのでアミロイドβタンパクの分解ができなくなります。
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インスリン分解酵素は、アミロイドβタンパクの分解も行います。しかし、高インスリン血症の状態では、インスリン分解酵素インスリンの分解にたくさん使われるので、アミロイドβタンパクの分解が疎かになってしまいます。

つまり、高インスリン血症は、アミロイドβタンパクの蓄積を助けることになるのです。

いかにして高インスリン血症を防ぐか

これまで見てきたようにアルツハイマー病は、アミロイドβタンパクの過剰蓄積で発症します。そして、アミロイドβタンパクの過剰蓄積は高インスリン血症によって拍車がかかります。

したがって、アルツハイマー病の予防は、高インスリン血症を防ぐことが重要と考えられます。

本書では、アルツハイマー病の予防と糖尿病の予防は基本的に同じだと述べられています。そして、食品交換表を利用した食事制限や地中海食が、糖尿病予防に有効と述べられています。

しかし、食品交換表を使っても高インスリン血症を防ぐことはできません。地中海食も同様です。これら従来型の糖尿病予防の知識はすぐに捨てましょう。


そもそも、高インスリン血症は食後高血糖が原因で起こります。食後高血糖は、糖質が含まれている食品を多量に食べると急峻に血糖値が上がることで、グルコース・スパイク(血糖値スパイク)とも呼ばれています。そして、グルコース・スパイクが起こると、速やかに血糖値を下げようとインスリンも多量に分泌されます。これがインスリン・スパイクです。

すなわち、糖質の多量摂取が高インスリン血症を招くのですから、糖尿病予防もアルツハイマー病予防も糖質制限食こそが、現在考えられる最も有効な予防食なのです。食品交換表を使っても糖質摂取量を減らせません。地中海食でも糖質を摂取しますから意味がありません。


先ほど脳はブドウ糖を取り込んでエネルギー利用すると述べました。それなら、食事でしっかりと糖質を摂取しなければならない思うでしょうが、人体には糖新生と呼ばれる自前でブドウ糖を作り出す機能が備わっていますから心配御無用。また、糖新生と並行してケトン体も作られますが、これも脳はエネルギー利用できますから、糖質を外部から補給しなくても脳はエネルギー不足には陥りません。

ただし、ブドウ糖もケトン体も、タンパク質や脂質を原料として合成されますから、これらは食事でしっかりと補給しておく必要があります。


脳にとってブドウ糖は重要なエネルギー源だからと言って、茶碗いっぱいに白米を食べたり、ランチで半チャンラーメンや焼きそば定食を注文してはいけません。そんなことをしていると、高インスリン血症からアルツハイマー病を発症するリスクが高まります。