ウェブ1丁目図書館

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老化を感じたら糖質過剰症候群かも

人間の体は食べた物からできています。最近では、食が精神に影響を与えるとも言われるようになっていますから、食事は心身ともに健康を保つために重要な行為と考えられます。

だから、食事を疎かにすることは、肉体面の劣化だけでなく、精神面にも悪い影響を与えますから、食事から必要な栄養素をしっかりと補給しなければなりません。

ただ、食品の中には、人体にとって好ましくないものも含まれていますから、健康に悪影響を及ぼす可能性のある物質は、食事からできるだけ排除した方が良いでしょう。化学調味料は、人体に好ましくない影響を与えると言われていますから、あまり使わない方が良いですが、それらよりも控えなければならないのは糖質です。

そう、糖質こそが、摂取し過ぎると心身ともに悪影響を与える極めて厄介な物質なのです。

高血糖は細胞を老化させる

糖質。

それは、日本人が日常的に食べている米、小麦、砂糖、根菜に多く含まれています。日本人が1日に摂取すべきとされている糖質量は、摂取カロリーを2,000kcalとした場合、およそ300グラムです。

しかし、これだけの量の糖質を食べていれば、必ず食後に血糖値が上がります。人間の血液中に含まれているブドウ糖は、わずか4~5グラムでしかありませんから、1食に100グラムもの糖質を食べれば、食後高血糖を起こすことは容易に想像できます。ちなみに血中のブドウ糖が8~10グラムになれば糖尿病です。たったこれだけのブドウ糖が約5リットルの血液中に含まれているだけで、人体に様々な不都合をもたらす糖尿病となるのですから、1日に300グラムもの糖質を摂取することが糖質過剰摂取だと気付くでしょう。

その糖質過剰摂取が惹き起こす様々な病態を糖質過剰症候群と命名した医師の清水泰行さんは、著書の「糖質過剰症候群」の中で、糖質摂取が数々の病気の原因となっていることを7,000もの論文に目を通して指摘しています。

科学的根拠(エビデンス)に基づき、高血糖が心身に及ぼす悪影響を解説した本書は、米食やパン食を主食とする現代日本人にはショッキングな内容となっています。

血中でブドウ糖とタンパク質がくっついて作られる終末糖化産物(AGEs)は、細胞を老化させる原因と考えられています。いったんタンパク質がAGEsになれば元に戻りません。人間の細胞はタンパク質でできていますから、血中のタンパク質がAGEsになり、細胞へのタンパク質(アミノ酸)供給が邪魔されれば、細胞が劣化し、身体が老化することは理解できるはず。

だから、人間の体には高血糖から細胞を守るための仕組みが備わっているのです。

インスリン抵抗性から種々の疾患へ

高血糖から身を守るのは、すい臓から分泌されるインスリンです。すい臓にはβ細胞という細胞があり、高血糖を察知すると多くのインスリンを分泌して血糖値を下げます。

上がった血糖値が速やかにインスリンによって処理されていれば、健康を維持できますが、インスリンの作用を受けた血中のブドウ糖は、中性脂肪に変えられて体に蓄えられていきます。そのため、高血糖インスリン分泌を繰り返していれば、体に中性脂肪が増えていき、中年と呼ばれる年代に差しかった時には、立派なメタボになっているのです。

食後に血糖値が上がっても、インスリンが作用しているうちは、健康を維持できるでしょうが、頻繁に糖質摂取とインスリン分泌を繰り返していくうちにインスリン抵抗性が惹き起こされます。

インスリン抵抗性は、インスリンの作用が弱くなる状態です。食後に血糖値が上がってインスリンが分泌されても、血糖値は下がらず高血糖がいつまでも続きます。そうすると、血中のブドウ糖がタンパク質にくっつきやすくなりますから、AGEsの合成が進み、老化が促進されます。


ところで、インスリン抵抗性はなぜ起こるのでしょうか?

仮説は3つあります。

1つ目の仮説は、インスリンに慣れてしまうというものです。最初は少量のインスリンでも処理できていた血糖が、次第に少量では処理できなくなり、インスリン分泌量が増えていくと考えられています。清水さんは、これを磯野家仮説と呼んでいます。

2つ目の仮説は、インスリンが血糖をブドウ糖に変えて中性脂肪として体に蓄えることに限界が来て、インスリンの効き目が悪くなるというものです。これを清水さんは、満員電車仮説と呼んでいます。

3つ目の仮説は、糖化仮説です。タンパク質にブドウ糖がくっついてできる物質をAGEsと述べましたが、このタンパク質にブドウ糖がくっつくことを糖化と言います。血中がブドウ糖で溢れかえっていると、インスリンインスリン受容体も糖化し、上手く機能しなくなるというのが糖化仮説です。

これらの仮説は、全て血中で起こっていることなのだと思いますが、老化と関係しているのは糖化仮説でしょう。細胞の老化は、酸化と糖化が原因だと言われていますから、糖質過剰摂取が老化を促進している可能性があります。

糖質過剰症候群は種々の疾患に通ず

清水さんは、数多くのエビデンスから、糖質過剰摂取が種々の疾患と関わっていることを明らかにしています。

  1. アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβは、インスリン抵抗性が原因で蓄積し、3型糖尿病と呼ばれている。
  2. 食品に添加された糖が多いほど、閉経後の女性がうつ病を発症するリスクが高まる。
  3. 心疾患は、LDLとの関連性は薄く、砂糖の摂取や高インスリンとの関連性が高い。
  4. 高血糖は血管内腔を守るグリコカリックスを減少させ、むくみや冷えの原因となる。
  5. 非アルコール性脂肪肝は、果物に多く含まれる果糖の摂取量が多いほど発症しやすい。


これらの疾患は、一例であり、現在、多くの国や地域で問題視されている生活習慣病の多くが糖質過剰症候群から惹き起こされていると考えられます。

エビデンスは怪しい

数多くの論文を読み込み、糖質過剰摂取と種々の疾患との関連性を明らかにしている清水さんですが、エビデンスには限界があることも述べています。

どんなにもっともらしい説であっても、病気との因果関係を見出すことは非常に難しく、医学では、エビデンスとは言え仮説の域を出ません。そうは言っても、エビデンスを無視することもできません。因果関係については、ヒルの判定基準に照らして検証されるのですが、それでも因果関係があると断定することは難しいようです。

清水さんは、糖質過剰摂取と糖質過剰症候群との関係をヒルの判定基準に照らし、高血糖と高インスリンが種々の疾患との間に矛盾がないと考えています。

当然でしょう。

糖質を摂取すれば、血糖値が上がることは生理学的にわかっています。そして、血糖値が上がればインスリンが追加分泌されることも生理学的にわかっています。高カロリーな食品が高血糖の原因ではありません。高カロリーな食品だからインスリンが分泌されるのではありません。

このような生理学的事実や生化学的事実を無視した論文が、医学の世界では、やたらと多くないか。

統計的に相関関係があるものを因果関係と主張するのは、どうなのでしょう。他の論文を多く引用した論文は、システマティックレビューとして高く評価されますが、NAVERまとめとどう違うのか。

清水さんによると、大量に公開されているメタアナリシスで、本当にまともで有用なものは数%だそうです。

それはそうでしょう。

地べたに這いつくばるようにして、摘み取った証拠資料こそ、強い証明力を有しているのです。アンケートを集計しただけの論文では、事実も真実もわかるはずがありません。

「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因 (光文社新書)

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