ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

光合成の目的は何だろうか

人間は、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出して生きています。

人間は、酸素を体内に取り込んでエネルギーを作り出し活動しています。だから、酸素の安定供給は、我々の生存に重要な意味を持っています。一方で、人間は、エネルギーを作り出す過程で二酸化炭素も体内で合成しています。二酸化炭素は、呼気に含まれて体外に出されますから、言ってみれば産業廃棄物のようなものです。

地球上に酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す生物しかいなければ、やがて、大気中の酸素は減り二酸化炭素ばかりになってしまいます。しかし、地球上には、二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出す植物がいます。だから、植物が二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す活動が、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す生物の活動とバランスが取れていれば、我々人間は酸素不足で悩む必要なく生きていけます。

植物はどれくらい二酸化炭素を吸収するのか

ところで、植物はいったいどれだけの二酸化炭素を吸っているのでしょうか。

こんなこと普段は意識しませんが、植物が大気中の二酸化炭素を処理してくれないと息苦しくなりますから、なかなか切実な問題です。

理学博士の園池公毅さんが、著書の「光合成とはなにか」の中で、木がどれだけの二酸化炭素光合成により有機物として固定しているかを計算しています。それによると、1年間で約120kgの二酸化炭素を固定しているとのこと。

ただ、この計算はざっくりとした計算なので、必ずしも正確な値ではなさそうですが、大まかな指標とはなりそうです。

では、人間は1年間にどれだけの二酸化炭素を吐き出しているのでしょうか。

人間は、1日に約1kgの二酸化炭素を吐き出しているとされていますから、1年で365kgとなります。

したがって、人間は1本の木が吸収できる量の約3倍の二酸化炭素を吐き出していることになります。そうすると、人間が毎日の活動で排出する二酸化炭素を完全に処理するためには、人間1人に対して木が3本必要と計算できます。

世界の人口が1人増えるごとに3本の植樹をしなければならないということですね。

酸素はどの程度作り出せるのか

植物がどの程度の酸素を吐き出しているのかも気になります。

光合成活性が高いC₄植物などを前提にすると、光が十分に当たる状態で温度も最適な条件であれば、1㎡あたり1秒間に35マイクロモルの酸素を発生できるようです。

人間が1秒間に吸収する酸素の量は、約300マイクロモルということですから、9㎡、すなわち3m四方の面積分の植物が必要になる計算です。先ほどの二酸化炭素の吸収量の計算の結果とほぼ一致します。

したがって、人間1人が必要とする酸素の量も、3本の樹木でまかなわれていることになります。やはり、子どもが生まれるたびに3本の植樹が必要となりそうです。

植物は何を目的に光合成をしているのか

植物が二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す活動は、光合成によって行われています。

中学校では、植物が、水と二酸化炭素から酸素を発生させるのが光合成だと習います。この説明だと、なぜ、植物が光合成を行っているのかはわかりません。

次に高校生になると、光合成とは「植物が光によって水を分解して酸素を発生し、二酸化炭素有機物に固定する反応」と教わります。これだと、光合成は、二酸化炭素をデンプンといった有機物にするために行うのだとわかりますね。

ところが、二酸化炭素有機物に固定する反応は、化学合成に共通の反応です。窒素同化やイオウ同化もまた、光合成によって得た還元力とエネルギーを使って行われますから、二酸化炭素固定だけを光合成とする理由はありません。

そこで、光合成は、「光のエネルギーによって環境中の物質から還元力を取り出し、その還元力とエネルギーを用いて行う代謝系をすべて含む反応」と定義されるそうです。

この文章を読むと、いったい光合成とは何なのかがさらにわかりにくくなります。

要するに外から吸収した物質から電子を取り出す時に光のエネルギーを使い、その電子とエネルギーを使って体の中で様々な化学反応を起こすことが光合成ということでしょう。

なるほど、植物は光合成という特殊な技を持っていますが、光合成をしない生物でも、光のエネルギーは使わないものの、外から吸収した化合物から電子を取り出してエネルギーを作り出す反応が体内で起こっています。

その反応の最終段階が電子伝達であり、光合成をする植物も人間も、仕組みに違いは見られますが、電子伝達により多くのアデノシン三リン酸(ATP)を獲得し、このATPをエネルギー通貨として様々な活動を行っています。


植物は、まったく動かないし、見た目も哺乳類と全然違いますから、我々人間とは似ても似つかない生物だと思っていましたが、体の中を覗いて見ると、意外と似ている所があるのだなと気付かされました。

これからも、光合成生物とその他の生物との間で、酸素と二酸化炭素の循環が繰り返されていくことでしょう。

光合成とはなにか―生命システムを支える力 (ブルーバックス)

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