ウェブ1丁目図書館

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鉄分不足と心の病

現代日本はストレス社会と言われています。それを反映するようにうつ病パニック障害など、心の病で悩んでいる人が増えています。

精神科を受診し、適切な治療を受けて完治する人もいますが、中には薬の力に頼ってうつの症状を緩和する寛解までしか改善しない人もいます。治療を受けても、ストレスの原因となっているものを取り除かなければ、心の病を治すのは難しいですが、他にも患者が取り組むべきことがあります。

それは、現在の食事を見直すことです。

うつやパニック障害は鉄不足を疑う

精神科医の藤川徳美さんは、うつやパニック障害で悩む患者に「高タンパク・低糖質食+鉄剤」を基本とした栄養摂取を指導したところ、驚くような症状の改善が見られたそうです。

藤川さんは、自身が受け持つ患者の血液検査をし、多くの人が鉄不足に陥っていることに気付きました。しかし、一般的な血液検査で、鉄不足を指摘される人は、多くはありません。通常の血液検査では、ヘモグロビン値の測定で鉄が足りてるかどうかを判断します。でも、ヘモグロビン値だけでは真の鉄不足は見抜けないようです。

藤川さんは、著書の「うつ・パニックは『鉄』不足が原因だった」の中で、鉄不足の指標となるのは「フェリチン値」だと述べています。ヘモグロビンが財布の中のお金に例えられるのに対し、フェリチンは貯金額に例えられます。そして、鉄が足りているかどうかは、家計を財布のお金と貯金の両方で判断するのと同じようにヘモグロビンとフェリチンの両方を調べなければわからないのです。

仮に、ヘモグロビン値が正常であったとしても、フェリチン値が低下していれば、鉄の貯金が減っていることになり、鉄不足の症状が出ます。ヘモグロビン値は正常でも、フェリチン値が低い場合を「潜在性鉄欠乏症」といいます。一見しただけでは貧血を見逃すことから、「隠れ貧血」とも呼ばれます。
お金にたとえて、ふだん使う財布のお金をヘモグロビン、貯金分をフェリチンということもあります。つまり、貯金分まで含めないと、本当の家計の状態はわからないのです。体内の鉄分量を知るためには、ヘモグロビン値だけでなく、フェリチン値を知ることが肝心なのです。
(23~24ページ)

「宵越しの金は持たない」と言ってる人の生活が不安定になりやすいのと同じで、「宵越しのフェリチンは持たない」と言っていたら、少しずつ心身が疲れやすくなり、ある時、様々な症状が出てくるのでしょう。

赤血球合成以外にも鉄には3つの重要な役割がある

ヘモグロビンは、体内の酸素運搬を荷っている赤血球の構成物質です。そして、鉄は赤血球合成の材料となる重要な物質です。鉄が不足すれば赤血球が作られないので酸素運搬が上手くいかなくなります。その状態が鉄分欠乏性貧血です。

とかく鉄は、赤血球との関係で重要性が語られることが多いですが、赤血球の材料となること以外にも3つの重要な働きがあります。

1.モノアミン系の神経伝達物質の機能を助ける

うつ病の原因の一つとされているのは、セロトニンドーパミンノルアドレナリンといったモノアミン系の神経伝達物質の減少です。

セロトニンは心の安定、ノルアドレナリンはやる気アップ、ドーパミンは快楽を作る作用に関わります。これらモノアミン系の神経伝達物質が不足すれば、心の病になりやすいことは、それぞれの働きから容易に想像できるでしょう。

鉄は、モノアミン系の神経伝達物質を作る際に必要な酵素の補因子として機能します。したがって、鉄が不足すればモノアミン系の神経伝達物質が必要な時に作られなくなるので、鉄不足は、うつ病パニック障害と同じような症状を引き起こす原因となるのです。

2.活性酸素から細胞を守る

人間は生きている限り、体内で活性酸素が発生します。活性酸素は細胞から電子を奪い、老化、ガン、慢性病など様々な病気を引き起こす原因となります。

活性酸素から細胞を守る抗酸化物質はいろいろとありますが、鉄はその中のカタラーゼという酵素の働きに関わっています。カタラーゼは、活性酸素の元になる過酸化水素水を極めて高い効率で分解し無害化します。カタラーゼが素早く働けるのは、鉄のおかげなのです。

3.大量のエネルギー獲得

人間はアデノシン三リン酸(ATP)をエネルギーとして活動しています。ATPは、ミトコンドリアで大量に獲得されますが、鉄はATP合成の最終段階の細胞呼吸で必要となります。

もしも、鉄が不足していればミトコンドリアで大量のATPを作り出せません。そうなると、鉄を必要としない解糖系で作られる少量のATPで体を動かさなければならなくなります。解糖系は糖質を材料としてATPを作るので、鉄不足でエネルギーが足りなくなっていると甘い物が欲しくなるようです。


鉄不足は、心の病、細胞の老化、エネルギー不足の原因となります。特に月経で鉄を失いやすい女性は、慢性的な鉄不足に陥りやすく、20代から40代の女性で、藤川さんが基準とするフェリチン値100ng/mlをクリアしているのは、わずかに1%程度です。そして、この世代の女性の実に約3人に1人が、フェリチン値10ng/ml以下の重度の鉄不足なのですが、ヘモグロビン値だけしか調べていない女性が多いので、自身が鉄不足だと認識することはほとんどありません。

女性は中学生になったら鉄補給を意識する

先ほども述べましたが、女性は月経があるため鉄を喪失しやすいです。したがって、女性は中学生になったら意識的に鉄補給をする必要があります。お母さんやお父さんも、そのことをしっかり理解していないと、娘さんの複雑な心理状態を単に思春期に起こりがちなものだと軽視し、鉄不足を見逃す危険があります。

日本女性の世代別のフェリチン値をみると、新生児は200~300、12歳までは100~300ぐらいですが、中学に入ってからの3年間でどんどん減少し、枯渇してしまいます。(中略)
ですから、ぜひとも女子は、中学生になったら「高タンパク・低糖質食」に切り替えるべきです。とはいえ、エネルギーをたくさん使う時期でもありますので、厳格に行う必要はなく、「清涼飲料水は飲まない」、そして「なるべくおかずを先に食べ、ご飯は後にする」「おかわりをするときには、ご飯ではなくおかずのおかわりをする」というルールだけでも十分です。
(82ページ)

高タンパク食にすることで、必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルといった人体に必要な栄養素を多く補給できます。もちろん鉄も。しかし、日本人の伝統的な高糖質食では、必須アミノ酸不足、必須脂肪酸不足、ビタミン不足、ミネラル不足を招くのは必至です。

藤川さんは、肉、魚、卵、乳製品を食べることを推奨しています。これらを中心とした食事にすれば高タンパク・低糖質食となります。

また、中学生になった女子には、アミノ酸キレートされた鉄のサプリメント「フェロケル」の服用もすすめています。アミノ酸キレートとは簡単にいうと、鉄の吸収率を高めるための加工です。鉄に関しては過剰症を心配する声が多いですが、経口摂取の場合には滅多に鉄過剰とはなりません。鉄過剰は、経口摂取ではなく輸液によって起こりやすいので、救急車で病院に運ばれるような事故に短期間に何度も遭わない限りは、そうそう問題にならないでしょう。


心の病は、現代のストレス社会が大きな原因と考えられています。しかし、うつやパニックになった多くの患者を鉄補給で治療してきた藤川さんの著書を読むと、心の病は、必須アミノ酸不足、必須脂肪酸不足、ビタミン不足、ミネラル不足といった質的な栄養不足が引き金となっているように思えます。