ウェブ1丁目図書館

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過信と当たり前が経済を落ち込ませる

低迷する日本経済。

この言葉を何度聞いたことでしょう。20年以上前から同じことが言われていますから、もしかしたら、日本経済は低迷していないのではないかとも思ってしまいます。しかし、将来の展望が全く見えないと感じている人が多いのであれば、やはり、日本経済は低迷しているのでしょう。

では、日本経済が低迷しているとして、その原因はいったい何なのでしょうか。

世界的投資家が見る日本

世界を旅する投資家として知られるジム・ロジャーズさんは、日本経済の今後について、著書の『日本への警告』でいくつか提言をしています。

その中で、日本の人口減少を食い止めることを日本人が克服すべき課題として挙げています。そのためには、家事は女性がするものだとの古い日本の意識を捨てる必要があります。このような考え方は、女性が働くことを阻害する要因ともなります。

労働力が減少していくであろう日本では、女性が働くことは好ましいことです。一方で、女性が働くと少子化が加速するとの懸念があります。しかし、両者は相反するものではなく、同時に取り組まなければならない課題だと、ロジャーズさんは述べます。

また、日本は、労働力不足を解消するために移民を受け入れるべきなのですが、外国人に対する差別意識が強く、なかなか移民の受け入れが進みません。このような差別意識をなくすことも重要な課題です。

品質重視こそ日本の強み

一方で、ロジャーズさんは、日本の強みも指摘しています。

日本は素晴らしい観光地であり、豊かな伝統と文化を持っていること。世界最高のインフラが備わっていること。これらは、まさに日本の強みであり、そして、その強みを生み出しているのが、世界一のクオリティに対する情熱だと。

しかも、クオリティの高さは、2番目の国が思いつかないほど群を抜いていると語ります。

しかし、最近は、日本の電化製品が、海外メーカーの製品との競争に負けたことで生産性を重視する姿勢に日本企業も変わりつつあります。このような姿勢は、日本の強みを捨てることになります。低価格を武器にしたビジネスは永続しません。物価が安い国との競争には必ず負けます。貧しくとも庶民は、高品質の製品を欲するものです。だから、高品質を捨てるような事業内容の変更はするべきではありません。

世界は変わるが歴史は繰り返す

人口が減少する日本に将来性はないと指摘するロジャーズさんは、逆に世界的に人口が多い中国が、今後、覇権を握ると予想しています。

また、北朝鮮や韓国も、これから日本以上に発展するだろうと考えています。北朝鮮と言えば、核開発ばかりをしている国のように思われがちですが、金正恩が国のトップになってからスキー場開発を行っており、これから北朝鮮は変わっていくと述べています。金正恩は、若い時にヨーロッパを見ているので、自国の遅れをよく理解しています。だから、スキー場開発に手を付けたのです。金正恩は、国の外に出たことで視野が広がり、このような新しい取り組みを行えたのです。

後々、朝鮮半島が南北統一されれば、韓国の北朝鮮に近い土地の開発が進み、韓国経済が活発化することが予想されます。財閥も北朝鮮に投資し、さらに勢いを増すでしょう。海外からの投資も期待できますから、将来的には、日本よりも韓国の方が経済的に発展する可能性が高いです。

このようにロジャーズさんは、日本人が思いつかないような予想をしています。ロジャーズさんの予想の背景にあるのは、歴史です。ロジャーズさんは、世界の歴史を学び、歴史が繰り返していることに気づきました。どんなに新しいことだと思っていても、それは、数百年前、数千年前にすでに起こったことと同じ場合が多いです。歴史を知ることで、今起きていることの対処法を考えることができるのです。

確かめること、過信しないこと、学び続けること

歴史を学ぶことは、他人から学ぶことに他なりません。

しかし、それは、人が言っていることを鵜呑みにすることではありません。常識となっていることを人は疑おうとしません。空が青いことは常識ですが、他人が空が青いと言ったら、そのまま受け入れるのではなく、いったん空を見上げ青いかどうかを確かめましょう。

また、自分の思い通りに事が運んでいても、過信してはいけません。どんな成功も、過信によってあっという間に崩れるものです。自分が賢く感じた時こそ、目の前に危険が迫っていると思うべきです。

自分の能力への過信は、学ぶことをやめたときに起こります。学ぶことは、自分の無知を認めることにつながります。自分が何も知らないことに気づけば、自分の能力を過信することもなくなります。

日本経済の低迷は、人口減少が理由とされがちですが、自分たちの能力を過信したことで起こっているのかもしれません。「ジャパンアズナンバーワン」と言われていた時代からずっと過信し続けた結果、いつの間にか学ぶことをやめ、社会が停滞したのでしょう。

日本の経済成長率と人口増加率との間に相関関係は見られません。長引く日本経済の衰退は、少子高齢化よりも、長期間、自分たちの能力を過信した結果だと思いなおすことができれば、これからの日本経済は良い方向に変わっていくのではないでしょうか。