ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

誰かの借金は誰かの資産であり、誰かの支出は誰かの収入である。

世の中には、常に表と裏があるもの。

それは、経済の世界でも同じことです。誰かが借金をすることは誰かの資産が増えることであり、誰かが支出することは誰かの収入を生み出すことになります。自分がお金持ちになれば、誰かが借金をしています。自分が借金をしているのなら、誰かの資産が増えています。

買い物をすれば、自分の財布からお金が減りますが、そのお金はお店のレジに入ります。景気の良し悪しは、つまるところ、この表と裏の関係が頻繁に発生するか、鈍化するかと言えます。

国民の収入を増やすには

ある国の国民が、皆多くのお金を持っていれば、経済が活性化しそうです。反対に国民全員が貧乏なら、経済は停滞しそうです。消費が増えれば、国民の支出は増えますが、その一方でお店の収入は増えます。しかし、国民がお金を持っていなければ、買い物できませんから、お店の収入は増えません。

国民が貧乏である以上、彼らに多くの支出を望むことは難しいです。そうすると、お店の収入も増えなくなりますから、景気が悪くなっていきます。

実にシンプルな仕組みです。

ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンの著書『さっさと不況を終わらせろ』では、リーマンショック後の不景気からどのように脱出するべきかが解説されています。もちろん、その方法は、上のシンプルな仕組みを利用することです。

誰かの資産の裏には、誰かの借金があります。では、国民全員の資産が増えるためにはどうしたら良いでしょうか。その答えは、誰かの借金を増やすことです。誰かとはいったい誰なのか。それは国です。早い話が、国が国債を発行すれば、国民の資産が増えるのです。

もしも、国が借金をせずに景気を良くしようと思ったら、国民の誰かが借金をして、別の国民の資産を増やさなければなりません。でも、誰が、他人の資産を増やすために進んで多額の借金をするでしょうか。誰かが借金をするのを待っていたのでは、いつまで経っても自分の資産は増えません。

収入も同じです。誰かが支出をしなければ、自分の収入は増えません。だから、国が進んで支出をしなければ、国民の収入を増やすことは難しいです。

金融緩和と財政出動

国民の資産と収入を増やすためには、誰かが借金をし、誰かが支出しなければなりません。

国民が借金をしやすくする方法として考えられるのが金融緩和です。金利を低くすることで、お金を借りやすくなりますから、国民が借金をしやすい水準まで金利を下げるのです。デフレが進んでいる状況では、マイナス金利も一つの手段となります。

国が借金をする場合は、国債を発行し、中央銀行が引き受けることになります。国の借金は良くないことに思えますが、それは、誰かの資産を増やすことになるので、必ずしも悪いことではありません。むしろ、景気が低迷している時には、積極的に国が借金をして、国民の資産を増やし、支出しやすい環境を整えることが大切です。

しかし、国が国債を発行しても、銀行が引き受けてくれない場合が考えられます。ユーロのような統一通貨だと、ユーロ圏のある国が国債を発行しようとしても、欧州中央銀行国債を引き受けてくれない可能性があるからです。独自の中央銀行を持つ国では、このようなことは起こり得ませんが、ユーロに加盟している国では、欧州中央銀行が非常時に現金を提供してくれない可能性があり、負債を満額返済できない事態が起こる危険性があります。統一通貨の弱点とも言えます。

将来へのツケ

多額の国債を発行することは、未来の国民に負担させることになるので好ましいことではないと言われています。

しかし、クルーグマンは、今の失業を長期間放置することは、失業者が持つ技能を陳腐化させ、雇うに値しない人との評価を与えてしまい、こちらの方が損失が大きいと主張します。高学歴の失業者であれば、これまでの教育を無駄にしたことになるのです。

財政出動は、国民にインフレの期待を持たせます。この状況が長く続くと思えば、消費しようと思うようになります。誰かの借金や支出は、誰かの資産や収入になることを思い出しましょう。国の財政出動で、国の借金が増えた結果、国民の資産が増えます。そして、懐が温かくなった国民がさらに支出をすれば、より経済が活性化します。

ただし、財政出動は単発では意味がありません。長期的に行うからこそ、インフレの期待が国民全員にもたらされ、国全体の支出と収入が増え続けるのです。

逆に緊縮財政に舵を切れば、国の支出は減りますが、国民の収入も減ります。そうすると、失業者の数が増えていきます。長期の失業が社会や経済に大きなダメージを与え、そして、将来に多額のツケを残します。

増税もまた同じです。国の収入を増やそうとすれば、国民の支出も増えていきます。消費税率の引き上げは、膨らみ続ける社会保障費をまかなうために必要だと考えられていますが、デフレ下では逆効果をもたらすだけです。江戸時代の年貢を想像してみましょう。不作の時にお上の取り分を増やせば農民は貧乏になってしまいます。デフレもまた不作と同じような状況ですから、デフレ時の増税は国民を貧しくするだけです。


景気を良くするためには、誰かの借金と支出を増やさなければなりません。そして、その誰かになりやすいのは国です。国の財政出動なしに景気回復は難しいでしょう。

GoToキャンペーンを単発的に行っても効果は限定的です。何度でも実施することで、景気回復が期待できるのです。