大したことないことを指摘して口論になったり、相手を傷つけたりした経験は多くの人が持っていると思います。また、相手のちょっとした一言で傷ついた経験を持っている人も多いことでしょう。
人は、なぜ傷つけあうことを言ってしまうのでしょうか。
自分と関係のない人の言動は些細なことと流すことができても、自分と関わる人の言葉は聞き捨てならないと思うことがありますし、言わなくても良いことを言ってしまうこともあります。
「はずだ」が強いとネガティブになる
価値観は人それぞれ違うもの。
これが、人を傷つけたり、自分が傷つけられたりする原因でしょう。
性格リフォーム心理カウンセラーの心屋仁之助さんは、著書の「傷つけあわない関係をつくるシンプルな習慣」で、心の中にネガティブな「はずだ」がこびりついて離れないことが悪い方向に物事を考えてしまう原因だといった旨を述べています。
「自分のことを嫌っているはずだ」とか「自分のことをできない人だと思っているはずだ」など、「~のはずだ」と思い込んでいることが、ネガティブな言動につながっているのです。このような決めつけがなければ、相手の言葉に傷つかなくなりやすいのではないでしょうか。
大した意味なく発した言葉であっても、その言葉の受け手の心の中に「はずだ」が強ければ、様々なネガティブなことが思い浮かんでくるもの。それは、自分も同じで、相手のちょっとした言葉を深読みし、「はずだ」を並べていくと、不快になっていきます。
価値観は、人それぞれなのだから、同じ言葉でも受け止め方は違うもの。そう思うことが、傷つけあうことを減らす第一歩となりそうです。
他人の言動に傷ついているのではない
不用意な言葉で、心が傷つくことはよくあります。自分が発した不用意な言葉で相手を傷つけることもあります。
しかし、心屋さんは、「人は傷つくのではない、もともと傷ついている」と述べます。
どういうことでしょうか。
心屋さんによれば、「『あなたの言動で、勝手に私の古傷がうずいたの』というのが、『傷つく』の正体」だとのこと。
「やればできるのに」と言われて傷つく人は、小さいころ、やってみてできなかったのに母親から何度も「ちゃんとやればできる」などと言われて苦しい思いをしたことが、そもそもの原因だそうです。つまり、「やればできるのに」と言われると、過去の何度やってもできなかった経験がよみがえり、それで傷ついてしまうのです。
だから、他人の言葉にイラッとしたときは、「自分の中に古傷があったんじゃないか」と考えてみれば、不必要に落ち込まなくて済むのかもしれません。
常識や慣習に縛られるとネガティブに考えてしまう
人の価値観に影響を与えているものに常識や慣習があります。
この常識や慣習に縛られ過ぎると、相手の言動が気になりやすくなるもの。
朝ご飯を食べることは常識だと思っている人は、子供が朝ご飯を食べないことに不快感を覚えます。毎日、入浴することが清潔でいるために欠かせないことだと思っている人は、毎日入浴しない人を不潔だと思って不快感を感じます。
これら世間の常識や慣習に縛られていると、そこからはみ出した人を見た時にネガティブな感情がわいてきます。箸の持ち方など、大した問題ではないのに正しい箸の持ち方にこだわっていると、イライラするだけですし、それが相手を傷つける言葉を発する原因となることもあるでしょう。
朝食を食べなくても、1日くらい入浴しなくても人は死にませんし病気にもなりません。箸の持ち方が変でも、ご飯を食べられれば、大した問題ではありません。
常識や慣習など、小さな問題だと受け入れられれば、ネガティブな感情を減らせるのではないでしょうか。
上から目線で許す
何度言っても直してくれない相手の態度に怒りたくなることは誰にでもあるもの。そんな時、ついケンカになりそうな言葉を発してしまいます。その一言から関係の修復が難しくなることもあるでしょう。
心屋さんは、相手の態度にイラッとしたとき、上から目線で「まあ、よい」と許すことを提案しています。
「上から目線で」というところが重要です。自分の方がすごいと思うことで、怒りは収まるものです。子供のいたずらなら怒らないのに大人が同じことをしたら怒りたくなるのは、相手が自分と同等だと思うから。自分の方が上なんだという意識を持てば、「まあ、よい」と許せてしまうものです。
怒りたくなったら、「まあ、よい」と唱えましょう。
傷つけあわない関係をつくるのは、実にシンプルです。「まあ、よい」と自分が思えば傷つけあうことは減るでしょう。
売り言葉に買い言葉で、こちらも応戦すると傷つけあう関係となり、修復が困難になります。何でも、上から目線で許せるようになれば、ネガティブな感情もわかず、穏やかな気持ちで人と付き合えるようになりそうですね。
- 作者:心屋仁之助
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 新書