最近、イライラしている人が増えているような気がします。
政治に何かと不満を漏らす人、有名人の不祥事に怒りをあらわにする人。
そんなイライラしている人をよく見かけるようになっています。でも、よく考えてみると、自分の周囲でイライラしている人は、そんなに多くありません。でも、世の中には、イライラがあふれかえっているように思えます。
いったい、このイライラはどこからやって来るのでしょうか。
心にさざ波が立っている状態
ところで、イライラとはどんな感情なのでしょうか。
何か、こう心の中にモヤモヤとしたものがあり、それが不愉快に感じるけども、怒りが爆発するほどではない感情といったところでしょうか。
教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする齋藤孝さんの著書「イライラしない本」では、イライラを「心にさざ波が立っている」状態と述べられています。不安や焦りで、怒りにまでは至っていないけども、心が微妙に不安定になっている状態を人はイライラと表現しているんですね。
心にさざ波が立っているとは、言い得て妙です。
では、人は、いつ心にさざ波が立つのでしょうか。
心にさざ波を立たせるのは、ネガティブ感情です。未来への不安や過去への後悔、他者に認められない不安、嫉妬、テンポを乱されるといったことが、ネガティブ感情を生み出し、心にさざ波を立たせます。
しかし、こういったネガティブ感情は、昔からあったはずです。それなのに世の中にイライラがあふれ出しているのは、どうしてなのでしょうか。
その一因となっているのは、インターネットです。
赤の他人の言動を無視できない
インターネット、特にSNS上での発言が物議を醸すことがよくあります。こんなことは、一昔前まではなかったことです。有名人がテレビで発言したことに文句を言う人は以前からいたはずです。でも、それが自分の耳に届くことはほとんどありませんでした。なぜなら、文句を言っている人と面識がないからです。
ところが、インターネットの発達で、SNSの利用者が増え、面識のない赤の他人の言葉が見えやすくなってきました。自分とは関係のない赤の他人の言動など放っておけば良いのですが、見てしまうとモヤモヤとした感情が出てきます。心にさざ波が立ち始めるんですね。
しかも、その発言にやたらと「いいね」が集まっていると、嫉妬が生まれます。
「なんで、こんなどうでもよい発言に多くの人が賛同しているのか、自分の方がまともなことを言っているのに」
そして、嫉妬に加えて自分が認められないネガティブ感情も顔を出すのです。
自分とは関係のない人の発言なのだから、無視すれば良いのです。でも、それはわかっているけども、見てしまったらイライラが湧きあがってくるのですから仕方ありません。
ネガティブ感情を浄化する
齋藤さんは、ネガティブ感情を生んでいる元凶をコントロールできるかどうかを見極めることが重要だと述べています。
「あれこれ悩んでも仕方がないこと」「悩んだり焦ったりしてもどうしようもないこと」だと開き直るのです。そして、自分がコントロールできるネガティブ感情に時間やエネルギーを使うのです。
先の例であれば、SNS上で他人が発言することを止めさせることはできません。発言者に注意をして止めさせることはできるかもしれませんが、無視されることが多いはずです。そんなことに時間やエネルギーを使うのであれば、SNSを見る時間を減らすといった方向に努力をした方が、心にさざ波が立つことが少なくなります。
もしも、SNSで不快な発言を見てしまった時は、心を浄化するのです。
友人に愚痴を言う、カラオケに行って大声で歌うなどは、心を浄化する良い方法です。悲劇を見るのも良いそうです。悲劇を見ることで、恐れや憐みの感情が呼び起され、ストレスが解消されて心がスッキリする効果があるとのこと。とんでもなく不幸な悲劇を見て、自分の悩みなどちっぽけなものと思えれば、ネガティブ感情が浄化することでしょう。
齋藤さんは、1日単位で、感情を清算することをすすめています。齋藤さんは、嫌なことがあって気分が晴れない日には、好きな焼肉を食べて、プラマイゼロにするそうです。いや、1日の最後に良いことがあったので、最終的にプラスが上回るのだとか。
焼肉じゃなくても構いません。仕事で嫌なことがあったら、帰宅する前にカフェでゆっくりしていくのもありです。カフェを間に挟むことで、仕事モードから家庭モードに切り替えられます。
ネガティブ感情を含む雑念をシャットアウトする手段として、単純作業に没頭するのもありです。
コピー取りや不要書類のシュレッダーがけといった単純作業を繰り返していくうちに「ノッてくる」ような感情を覚えます。このような状態は、ランナーズハイに似た感覚なので、気分が盛り上がって来るそうです。確かに単純作業をしている時は、無心になっていることが多いので、イライラしにくいように思えます。
情報過多の現代社会では、心にさざ波が立つ瞬間は1日に何度も訪れます。
他者が発信することを止めようと努力することは、イライラを募らせるだけです。
情報を遮断する。単純作業に没頭したりカフェに行ったりして無心になれる時間を作る。カラオケや焼き肉で気分を高揚させる。
このような、自分でできることに時間とエネルギーを使うようにすれば、イライラを浄化できます。
他人をどうこうしようと思わないこと。
- 作者:齋藤 孝
- 発売日: 2016/01/29
- メディア: 新書