ウェブ1丁目図書館

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心配事は発生確率をざっくり計算してみれば気にならなくなる

世の中は危険で溢れている。

その通りなのですが、危険な出来事はいったいどのくらいの確率で発生するのかまで考える人は少ないように思います。

昔、焦げた食品を食べるとガンになると噂になったことがありますが、実際にガンになるためには、数トンもの焦げた食品を食べなければならないそうですから、普段の食生活でガンを恐れて焦げた食品を食べないという選択をする必要はなさそうです。

ところで、我々は、なぜ様々なことに心配するのでしょうか?

心配しなければ、もっと精神的に楽に生きられるのに不思議と心配になるような情報を現代人はすすんで集めているように思います。

心配はリスクから生まれる

我々が心配になるのは、どんな時でしょうか。

「遅刻すると上司から怒られる」と心配して、朝寝坊を予防するために目覚まし時計をセットして寝る人もいるでしょう。でも、本当に遅刻して上司に怒られている時は、もう何も心配はしていないはずです。ただ、上司に怒られるという苦痛を耐えているだけです。

逆に何度遅刻しようと、上司が怒らないのなら、何も心配する必要はありません。

そうすると、発生確率が0%の時やすでに発生している状態(100%)の時には、心配はしないことになります。実際に何かに心配している時というのは、まだ起こって欲しくない事象が発生していない状態です。

心配学を専門とする島崎敢さんは、心配は、「不幸なできごとが起きるのか起きないのかわからない状態」から生み出されると、著書の「心配学」で述べています。つまり、不幸なできごとが発生する確率が0%よりも大きく、100%よりも小さい状態に心配するのです。そして、そのような状況をリスクといいます。

したがって、不幸なできごとが絶対に起こらない場合には心配しませんし、不幸なできごとが起こった後も心配することはありません。心配になるのは、不幸なことが起こるかどうかわからない状態、すなわち、リスクがある状態に置かれている時と言えます。

危険を煽る情報が氾濫するのはなぜ?

テレビでもインターネットでも、各種メディアでは、危険を煽るような情報が氾濫しています。焦げた食品を食べるとガンになるという情報も、そのうちの一つです。

数年前に携帯電話を使うと、電磁波の影響で脳腫瘍が増えるというニュースがありました。しかし、その後、携帯電話が普及しても脳腫瘍が増えたというニュースは報じられていません。

島崎さんは、リスクに関する情報の多くは、危険性を強調して報道されることが多いと述べています。そして、その主な理由を以下の3つだと指摘しています。

  1. 滅多に起きないことのほうがニュースバリュー(価値)が高い
  2. ショッキングな内容や、感情に訴える内容のほうが興味をひける
  3. リスクを高めに報道しておけば、あとで批判を浴びずに済む


3つ目の理由が、最もわかりやすいでしょう。「大丈夫」と報道したのに大事故や大損害が発生すると、その情報を発信したメディアには責任をとれと苦情が来ます。だから、後々の責任のことまで考慮すると、大げさな表現をしておいた方が無難だと、メディア側は考えます。

1つ目の理由は、我々の脳が飽きっぽく、既に知っていることやよくあることには興味を持たないことと関係しています。それはつまり、滅多に起きないことの情報を欲しがる傾向があるということです。だから、メディア側も、滅多に起きないことを報道した方が、ニュースバリューが高まります。

さらにそのニュースがショッキングな内容であるほど、我々は興味がわきます。2つ目の理由ですね。

そして、我々が興味を持つ情報が掲載されているメディアほどよく見られますから、メディア側も発行部数が増えたり、広告料が増えたりとメリットがあります。

このような理由から、世の中には、危険を煽る情報が氾濫しやすくなります。

ざっくりと発生確率を計算する

日常生活の中で、人を心配にさせる情報はたくさんありますから、できるだけ、そのような情報に触れないようにすれば心配にならずに済みそうです。

しかし、情報化社会の現代日本では、なかなか外からの情報を遮断するのは困難です。

それなら、開き直って、リスクに関する情報を受け入れましょう。でも、ただ、情報を耳に入れるだけでなく、心配事がどのくらいの確率で発生するかをざっくりと計算してみましょう。

リスクを計算するためには、計算に必要な情報を入手しなければなりません。インターネットを使えば、官公庁のホームページを見られますから、信頼できそうな情報を取得することは可能です。ただ、官公庁のホームページから必要な情報を探すのは骨が折れる場合もありますから、その他のわかりやすく解説しているウェブサイトを利用するのもありです。ただし、官公庁以外のウェブサイトだと、情報の信頼性が怪しい場合もあります。だから、そのようなウェブサイトを利用する場合、島崎さんは以下の点に注意するように述べています。

  1. データの出典が明記されているかどうか。
  2. 結論ありきではなく中立的で客観的な立場を取ろうとしているかどうか。
  3. 身分を明かして、訂正を受け入れる用意があるかどうか。
  4. ほかのサイトと書いてあることが違いすぎないかどうか。


3つ目の「身分を明かして」に該当するウェブサイトは少ないです。でも、メールフォームの設置など、そのウェブサイト運営者に連絡を取る手段が示されている場合には、批判を受け入れる用意が多少なりともあると言えそうです。

また、個人サイトを利用する場合には、複数のサイトを必ず比較することも大切だと、島崎さんは述べています。個人サイトかどうかに関わらず、情報源は複数ある方が信頼性が高まることは言うまでもありません。


データを取得できれば、後は、リスクが発生する確率を計算し、同じようなリスクが発生する事柄と比較するだけです。

例えば、歩行中に交通事故で死亡する確率が、人生80年の間に1万人に1人の確率だったとしましょう。この確率が高いのか低いのかを知りたい場合は、別の死亡する確率との比較をしなければなりません。今、喫煙習慣がある人だと、喫煙が原因で肺ガンにかかり死亡する確率と比較するのが良いかもしれませんね。もしも、人生80年の間に喫煙者が肺ガンで死亡する確率が100人に1人だったら、交通事故を恐れて外出を控えるよりも禁煙した方が死亡する確率を低くすることができます。


将来の不幸に対して心配する理由は様々でしょう。

でも、その事象が発生する確率がどれくらいかを知らないから、ことさら心配するというのが、現代日本人の特徴かもしれません。

不幸なことが発生する確率がどれくらいなのかをざっくりとでも計算すれば、意外と心配だと思っていたことが大したことないと気付けることでしょう。

これまでなんとも思っていなかったことでも、テレビやインターネットで危険だと言われてから心配になったという事柄については、まず、その発生確率をざっくりと計算してみることです。

心配学 「本当の確率」となぜずれる? (光文社新書)

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  • 作者:島崎 敢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 新書