ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

世の中は後知恵バイアスだらけ

良かれと思ってしたことが逆効果だった。

そんな時、「やっぱり最初から上手くいくわけないと思ってたんだよ」と言ってしまうことがありませんか。

その気持ちよくわかります。「最初から上手くいくわけないと思ってたのなら、やらなければ良かったのに」と責める人もいるでしょうが、そういう人だって、過去に同じような経験をしているものです。

後付けで、いろいろと理由を並べるのは、人間の性です。どんなに合理的に行動しようと思っていても、結果的に不合理な行動をしてしまうのは人間だから仕方ないことです。人間は、論理的に物事を考えられるように思えても、そんなに大した思考回路を持っていないのです。

知識の錯覚

「いやいや、物事に失敗するのは、事前にしっかりと情報収集しないからだ」

という声が聞こえてきそうですが、果たして本当なのでしょうか。

経済学を専門とする古川雅一さんの著書「ねじれ脳の行動経済学」では、情報豊富な人が、常に合理的な行動をできるとは限らないことが紹介されています。

最近では、インターネットで株式取引をできるようになり、また、投資に役立つ情報もたくさん入手できるようになりました。だから、それまで電話取引をしていた投資家は、インターネットの登場でさらに多くの利益を株式取引で得られるようになったはずです。

ところが、結果は反対で、電話取引からインターネット取引に移行した一般投資家の多くが、以前よりも運用成績が悪くなったそうです。

人は、ある事柄について多くの情報を持っているほど、有利な結果を導き出せると考えがちです。ところが、知識量と判断力は必ずしも一致しないので、多くの情報を入手できたからと言っても、良い結果を残せるかどうかはわからないのです。

多くの情報を持っていると陥りやすいのが知識の錯覚です。多くの時間を費やして情報を収集しているのだから、自分の判断は正しいと思い込んでしまう罠が、そこにはあるのです。

競馬歴が長くても馬券が当たらないのは、知識の錯覚が影響しているのでしょう。

初期値効果

「毎日のメールチェックが面倒だ。なんでこんなにたくさんのメールが来るんだ」

そんな愚痴をこぼしているあなた。それは、あなたが招いた結果かもしれませんよ。

最初の状態のまま受け入れる人間の特性を初期値効果といいます。

毎日、たくさんのダイレクトメールを受け取っている人は、この初期値効果が影響している可能性があります。インターネット通販を利用する場合、最初にアカウント登録をしなければならないことが多いです。その際、画面上にはダイレクトメールを受け取るかどうかを訊ねる項目があり、何もしなければ「メールを受け取る」にチェックが入った状態になっています。

そう、たくさんのメールが届くのは、通販の時に「メールを受け取る」のチェックを外さなかったことが原因です。

だから、メールチェックが面倒だと思っているのなら、通販サイトの管理画面にログインして、「メールを受け取る」のチェックを外せば良いのです。ところが、多くの人は、それをしません。これこそが初期値効果です。

古川さんによると、初期値を受け入れている人は意外と多いそうです。例えば、会議の時、進行役の人が「この方針に関して反対意見のある方?」と聞いても、誰も何の反応も示さないことはよくあります。これも初期値効果の現れなのだとか。

だったら、会議では、まず最初に発言すれば、自分の案が採用される可能性が高まりますね。

交渉は前向きに

仕事で交渉をしなければならない時、どのような気持ちで臨むでしょうか。

交渉の当事者のどちらもが「どこまで譲歩しなければんらないのだろうか」という気持ちで交渉をしていると、当事者の利益は小さくなるそうです。これを損失のフレーミングといいます。

反対に当事者が「どれくらいの利益幅を広げられるだろうか」と前向きな気持ちで交渉に臨むと、当事者の利益は大きくなるそうです。こちらは、利益のフレーミングと呼ばれています。

ビジネス上の交渉は、前向きな気持ちで臨むのが吉です。

結果を見れば何とでも言える

野球観戦が好きな人なら、自分が監督になった気持ちで試合を見ていることと思います。

ゲームは終盤の8回裏。応援するチームが1点負けています。

応援するチームは、1アウト、ランナー1塁。打席には、ここまで3打数1安打の選手が立ちます。

しかし、バッターは、変化球をひっかけてショートゴロ。ダブルプレーで8回裏の攻撃を終え、9回裏も見せ場なく試合終了となりました。

試合を振り返って、「なんで、監督は、8回裏に送りバントをさせなかったんだ」と文句を言っている姿が目に浮かびます。しかし、送りバントをしていても、応援するチームが勝っていたかどうかはわかりません。それでも、あの時に送りバントをさせていれば、逆転できたはずだと思ってしまうのが野球ファンの性です。

このようにまるで結果が最初から見えていたかのように考えることを後知恵バイアスといいます。野球ファンに限らず、多くの人が最初から結果がわかっていたかのように話します。「だったら、その時言えよ」と思ってしまいますが、後知恵バイアスも人間の性ですから仕方がないですね。


自然災害が発生し、大きな被害が出た時、「これは人災だ」と言いだす人がいます。一方、人災だと言われた側は「想定外だった」と言います。

人災だと言うのは、後知恵バイアスの具体例でしょう。もしも、自分が当事者だったら、自然災害を予知できていたかはわかりません。ニュースで識者が、事故の状況を解説しているのを聞くと、つい「これは人災だ」と思いたくなります。でも、事前に自然災害がもたらす被害の規模を想定するのは、なかなかに難しいのではないでしょうか。

人間は合理的に行動するのが苦手な生き物です。

最初から結果がわかっていたようなことを言う人は、ちょっと信用できないですね。

ねじれ脳の行動経済学 (日経プレミアシリーズ 41)

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