ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

従業員の人生を守っている経理部

会社の業務の中でも、経理はお固い仕事との印象を持たれます。いつもお金の計算ばかりをして、細かいことをチクチク言ってくる嫌な部署と思っている営業担当者もいるでしょう。

しかし、それが彼らの仕事ですから文句を言うわけにはいきません。むしろ、気づかない間に経理に助けられている人が多いのですから、感謝しなければなりません。

税務、決算、コンプライアンスが絡むから厳しい

そもそも経理が厳しいのは、税務対応、決算対応、コンプライアンス対応の3つの目的があるからだと、「働く意味」をテーマに取材・執筆に取り組み、大学講師を務める楠木新さんが、著書の『経理部は見ている。』で述べています。

税務対応は、会社が適正な納税をするための業務です。各種税法にのっとり税額を計算し、申告・納税しなければなりません。

決算対応は、自社の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況を報告するために必要な業務です。会計基準にのっとり決算書を作成しなければなりません。

コンプライアンス対応は、経理部が社内のすべての業務にかかわるお金を扱うことから、金銭面での不正が起こらないようにする業務です。万が一、不正が起これば組織に与えるダメージは大きいです。

これら3つの目的は、すべてお金と関係していますから、経理部がお金に対して厳しくチェックするのは必然です。

私用の支出を経費にすると厳しくチェックされる

従業員の支出がどこまで経費として認められるかは、社内規定に照らして判断されます。もちろん、税法上損金として認められるかどうかも重要な判断基準となります。

例えば、取引先との打ち合わせでの飲食代は1人につき5,000円までと社内規定に書かれていれば、5,000円に抑えなければなりません。1人につき5,000円を超えるかどうかで税務上損金と認められるかどうかが変わってきますから重要です。5,000円を超えた場合には交際費となり、損金算入が制限され、税額が増えてしまいます。だから、ちょっとくらいオーバーしても構わないだろうと思ってはいけません。参加者の人数を水増しするのも、当然ながら許されません。

黙っていればわからないと思って経理部に領収書を持っていっても、誰が打ち合わせに参加したのか聞かれるのでばれてしまいます。必要なら取引先に電話で確認もしますから、人数の水増しはやめましょう。

キャバクラの領収書を会議のための経費だと偽って精算しようとしても、今はインターネットでお店のホームページを調べれば簡単にばれてしまうので、私用の支出を会社の経費にすることも難しいです。

出張時の旅費や宿泊代の精算は会社によって異なる

泊りで出張に行った後の旅費の精算も、経理部はしっかりと見ています。

仕事で新幹線に乗ったり、ホテルに泊まったりするので、その費用は会社が負担してくれます。だからと言って、グリーン車に乗ったり、高級ホテルに泊まったりした支出まで会社が負担するわけではありません。会社ごとに旅費の規定があるので、そこに書かれている範囲でしか旅費や宿泊代を精算してもらえません。

会社によって、宿泊代は実費を精算する場合もあれば、1泊9,000円と定額支給になっている場合もあります。実費だからと言って高いホテルに宿泊しても、上限が決められているので宿泊代全額を精算できるわけではありません。

営業担当者にとっても経理部にとっても、楽なのは定額支給です。しかし、定額支給にすると、できるだけ安いホテルに泊まろうとカプセルホテルを予約する従業員が出てくる可能性があります。カプセルホテルでも問題なさそうですが、疲れが取れず、翌日の仕事に支障が出る可能性があります。それを危惧して、定額支給から実費に変更した会社もあるそうです。

経費で貯めたポイントやマイルは誰のもの?

最近では、ポイントプログラムを導入しているお店が多く、仕事用の文房具などを購入した際にポイントが貯まることがあります。

では、業務中に立て替えた経費から発生したポイントは誰のものなのでしょうか。原則からすると、経費は会社のお金で支払ったものなので、そこから発生するポイントも会社のものです。出張時に貯まったマイルも会社に帰属します。

しかし、ポイントやマイルの問題も、会社側のルールによって異なるので、一概に会社のものとなるわけではありません。社内規定で従業員が経費を立て替えた時に貯まったポイントやマイルが会社のものだと明記されていれば、従業員は獲得したポイントを会社に返還しなければなりません。でも、ポイントやマイルの管理に手間がかかることから、従業員の立替金から発生したポイントやマイルを会社に返還する必要はないとしている会社もあります。いずれの場合も、社内規定を確認してポイントやマイルの取り扱いがどうなっているのかを知っておくべきでしょう。

手書き領収書よりレシート

従業員が経費を立て替えた場合には、お店から領収書をもらう必要があります。領収書がなければ、何の経費を立て替えたのかがわかりませんから、経理部は、立替金の精算の際に従業員にヒアリングをしなければなりません。

飲食店での支払いの際に領収書をもらうのは時間がかかるから、お店の人に領収書をお願いするのは気が引けると思うかもしれません。その場合は、レシートでも構いません。むしろ、手書き領収書よりレシートをもらう方が好ましいです。

手書き領収書は、金額はわかっても明細はわかりません。一方、レシートは、従業員が何を購入したのかがわかるので、経理部は経費の精算がしやすくなります。日時も正確ですから、経理処理にはレシートの方が助かります。税務上、手書き領収書じゃなければダメだと思っている人もいるでしょうが、支払いの事実が証明できれば手書き領収書である必要はありません。

従業員の不正な経費の精算を防止するためには、手書き領収書よりレシートが効果的ですから、社内規定も立替金の精算にはレシートを添付するように記載しておきましょう。

従業員の人生を守る

会社の経費だからと言って何でもかんでも立替金を精算できると考えるのはやめましょう。

経理部は、従業員の支払いを細かくチェックしているものです。厳しすぎるのではないかと思う人もいるでしょうが、経理部のチェックが緩いと私用の支出まで会社の経費として精算する従業員が出てきます。下手をすると、不正請求が警察沙汰となり解雇される場合もあります。

経理部のチェックが厳しければ、従業員は、不正請求できませんから、正しく経費を精算するようになります。経理部が厳しいほど、従業員の金銭の不祥事が減ります。それは、犯罪から従業員の人生を守ることにもつながっているのです。