ウェブ1丁目図書館

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人類の未来は技術に依存する

人類は、どこに向かっているのか。

AIの発達で、人間の仕事が減り、何もしなくても生きていける社会になると言う人もいれば、多くの失業者が現れて社会が混乱すると言う人もいます。また、政治の面では、これから世界は一つになっていくという見方もありますし、逆に閉鎖的な国が増えていくとの見方もあります。

人類の未来は、どうなるのでしょうか。

技術がもたらすのは幸福か不幸か

サイエンスライター吉成真由美さんが、海外の5人の識者にインタビューした内容が収録されている『人類の未来』は、これから世の中がどう変化していくのかを予測する端緒となる1冊です。インタビューを受けたのは以下の方々です。

  1. ノーム・チョムスキー=マサチューセッツ工科大学を代表するインスティテュート・プロフェッサー
  2. レイ・カーツワイル=人工知能研究の世界的権威
  3. マーティン・ウルフ=英フィナンシャル・タイムズ紙の経済論説主幹
  4. ビャルケ・インゲルス=建築事務所PLOTの共同設立者
  5. フリーマン・ダイソン=若くしてダイソン方程式を発表した数学者、理論物理学者、宇宙物理学者


人類が直面している大きな問題として挙げられるのが環境問題です。気候変動や資源の枯渇など、人類だけでなく、あらゆる生物の脅威と考えられている地球規模の大問題です。

気候変動も資源の枯渇も、化石燃料を消費することが原因とするのが通説です。だから、どうやって化石燃料を使わないようにするかが、人類の課題となっています。

化石燃料を消費しない最も良い方法は、電化製品や自動車など、エネルギーを必要とするものを使わないことです。しかし、そのような生活は、現代人にとって苦痛でしかありません。でも、地球環境を守るためには、そうするしかないでしょう。

これに対しては、カーツワイルさんが、太陽光発電によって、今起こっている環境問題を克服できると述べています。2012年時点で、世界中のエネルギーの0.5%がソーラーで賄われています。たったこれだけでは、太陽光発電で世界中のエネルギーを賄えるようになるのは、まだまだ長い年月がかかりそうです。

しかし、技術は指数関数的、つまり、倍々に発達するので、太陽光発電ですべてのエネルギーを賄えるようになるまで、あと8回倍々で成長すれば良いだけです。

技術は、歴史を見ても指数関数的に発達してきたことが分かります。今後も、この傾向が続けば、それほど遠くない未来に太陽光発電ですべてのエネルギーを賄える日が来るはずです。

一方で、チョムスキーさんは、技術が加速度的に発達していくシンギュラリティについて否定的な考えを持っています。技術は、急速に発展しているけども、それは量的拡大であって知能や創造性の本質についての洞察をもたらすという兆候はないとのこと。

また、炭素削減は全く理解できない愚かな行為だと、ダイソンさんは語っています。気候に影響を与える因子は非常に多いのに二酸化炭素だけを意識するのはおかしなことです。植物は、大気中の二酸化炭素を使って生息しているのですから、大気中の二酸化炭素は緑化に貢献していると考えられます。

気候変動の原因は二酸化炭素だとする考え方は、もはや信仰であり、これを信じない者は、いかなる研究もできないようになってきています。科学が宗教化し始めているのです。気候は、複雑なシステムなので、単純なモデルによって全体を理解することはできません。これは、経済学も同じで、単純な経済モデルで、複雑な人間社会を理解しようとしても無理な話です。

生物進化を超えた技術の進化

生物は、進化に非常に長い年月を要します。人間も生物なので、進化には何十万年、何百万年という年月を要します。

しかし、人間は、技術の進化により生物進化を超える発展を遂げてきました。

1000年ほど前には、人間の平均寿命は30歳程度でした。ところが、現代の日本では80歳を超え、90歳に迫ろうとしています。このように短期間に寿命を延ばせたのは、生物進化ではなく、技術の進化のおかげです。

時に技術は、ひどい環境汚染をもたらします。でも、それを克服するのも、また技術です。

原爆で多くの命を奪うことができる一方、原発で多くのエネルギーを生み出し、快適な生活を人々に与えることもできます。今後も技術は進化を続け、現在人類が抱えている多くの問題を解決してくれるでしょう。

ただし、技術の進化の前に地球環境を破壊してしまうと、取り返しがつかなくなります。人類だけでなく地球の未来を守るためには、技術の進化を待つ姿勢が必要になります。

複雑さを受け入れる

気候も人間社会も非常に複雑です。

それを単純化した理論で説明することはできません。しかし、人間は、物事を単純化して受け止めようとします。本書のあとがきで、「先の見えない不確実社会では、感情に訴えるようなシンプルなストーリーは、おそらくすべてプロパガンダである」と記されています。

権力を持つ者やそれを欲する者は、大衆を動かそうとわかりやすいメッセージを発するものです。プロパガンダ(宣伝)かどうかを見破るには、事実を確認する作業が必要です。


気候変動は二酸化炭素が原因だ。
景気が悪いのは消費が拡大しないからだ。


これらは、物事を非常に単純化しています。プロパガンダを疑いましょう。

ウルフさんは、「大人になってからの知的生活の基盤は、若いころに読んだ本によって作られるように思います」と語っています。読書によって思考の基盤ができます。事実を確認する作業にも思考は必要です。思考が単なる妄想にならないようにするためにも、読書で知識を整理しましょう。


人類の未来は、技術に依存します。人類の未来は技術に縛られているのです。

社会の発展も破壊も、その技術を使う人間の意思次第です。