地震や火山の噴火は、人々の生活をあっという間に破壊してしまうので、起きて欲しくない自然現象です。しかし、日本列島は、火山が多く、地震も頻発しやすい場所にあるため、これらから逃げようと思うと海外に移住するしかありません。
一方で、富士山などは、人々に自然の美を楽しませてくれます。また、広大な関東平野は多くの人が住むのに適していますし、三陸のリアス海岸も、漁業に適した海岸となっています。
日本列島は、地震や火山によって形成され、人が住みやすい地形になったというのですから、災害と快適な暮らしは表裏一体の関係にあると言えます。
きれいな円錐形をしている富士山
日本列島の地形がどのようにしてできたのか、その疑問を解消しようと思うと、膨大な勉強時間がかかります。だから、地学を時間をかけてじっくり勉強する根気がない僕のような人間には、その道の専門家が書いた一般向けの本を読むのが手っ取り早いです。
地形学、第四紀学、地震地質学を専門とする山崎晴雄さんの著書『富士山はどうしてそこにあるのか』は、日本列島の形成をざっくりと知りたい人におすすめの1冊です。
富士山は、左右対称の円錐形をした美しい姿をしていますが、人々に大きな被害をもたらす火山の一つです。
火山と言えば、ドロドロとした超高温のマグマを想像しますが、そのマグマが形成されるのは、プレートの沈み込み帯やホットスポットと呼ばれる場所です。
富士山が、伊豆半島から見て北西にそびえているのは、決して偶然ではありません。伊豆半島の西側には駿河トラフ、東側には相模トラフがあります。
トラフはプレートの浅い沈み込み帯のことです。駿河トラフと相模トラフは、陸上でつながっていると考えられています。その2つのトラフの上に形成されたのが富士山とのこと。つまり、富士山の下には、駿河トラフから北に延びたプレート沈み込み境界が存在していると考えられているのです。だから、富士山は、あの場所に形成されたわけですね。そして、富士山は陸上で3枚のプレートが重なり合っているから、あのように裾野を広げた独立峰となっているそうです。
リアス海岸は海面上昇でできた
東北の三陸海岸は、海岸線がギザギザになっています。このような海岸はリアス海岸と呼ばれ、かつては、地殻変動によって短期間に土地が大きく沈み込んで形成された沈降海岸と考えられていました。
ところが、その考えは、戦後にまちがいであるとわかります。現在では、氷期が終わり、地球全体が温暖となったことで、大陸氷床が融け、海水量が増加したことが理由でできたとされています。
リアス海岸ができたことで、山地の中に平坦な土地ができ、人々が住めるようになりました。そして、波も穏やかなので、漁船を非難させることができ、漁業にも恩恵を与えています。
しかし、津波が来た時には、海岸のくぼんでいる部分の波が増幅されるので、その周辺は大きな被害を受けるという欠点もあります。自然の恵みと脅威は、背中合わせなのです。
断層があるから関東平野ができた
自然の恵みと脅威が背中合わせなのは、リアス海岸だけではありません。人々が住みやすい平野もまた、自然の驚異と背中合わせになっています。
地震は、断層のずれで起こる場合があります。だから、断層がある場所に住むのは危険だと言われるのですが、活断層がなければ、平野も盆地も形成されません。
21世紀に入ってからも、日本列島は、断層のずれによる地震が何度も起こっています。活断層が多い日本列島に住む限り、断層のずれによる地震からは、逃れることができません。
関東大震災のように多くの人が住む場所で地震が起こると甚大な被害が出ます。だから、活断層がない土地に住むべきだと考えてしまいますが、人が住みやすい場所は、ほとんどが平野や盆地なので、活断層がない土地を見つけて暮らすのは困難です。
山崎さんは、自然には必ず恩恵と厄災の二面性があると強調しています。快適な土地には、自然の猛威が突如訪れることがあります。だからと言って、それを恐れていたのでは生活できません。
自分が住んでいる地域の地形や地質を知り、地震や水害が発生した時に避難できる場所がどこかを事前に調べておくことの方が、前向きな対策なのではないでしょうか。
富士山を見て美しいなと感じた時が、防災グッズや避難場所を確認する時ですよ。