テレビ東京系列で放送しているカンブリア宮殿という番組では、毎回、作家の村上龍さんとゲストの経営者の方が対談します。
カンブリア宮殿は、書籍にもなっており、これから就職活動をしようと思っている学生の方や求職中の方が読んでおくと、役に立つ内容も収録されています。特に「カンブリア宮殿 就職ガイド」では、過去に出演された73人の経営者の方が、自社で働いて欲しい人材について語っているので、就職活動中の方には、大変役に立つ内容となっています。
今回の記事では、その中から数名の経営者の方の求めている人材について紹介します。
学歴は無用だけど学力は必要
学歴社会は終わったと言われますが、決して学力が軽視されているわけではありません。
本田技研の福井威夫さんは、学力と実力を身に付けることが大切だと述べています。
例えば、”学歴無用論”というのは、学力がなくていいということではなくて、学力や実力は必要なんです。学歴はいらないと言っているのです。(中略)
物事を真実まで極めた真理じゃないと、世界には通用しないということです。(23ページ)
高校や大学に進学することよりも、そこで、どれだけ学力をつけるかが大切です。また、卒業してからも、実力をつけるための努力は継続しなければなりません。
福井さんが求める人材は、そういう人なのでしょうね。
基本的なスキルと方法論やプロセス、心構えが必要
日産のカルロス・ゴーンさんは、学生に専門能力を求めていません。なぜなら、スペシャリストは、社内で育成したいと考えているからです。これは、他の企業にも当てはまります。
それよりも、エンジニアであれ、営業職であれ、基本的な知識を習得することが大事だと述べています。
基本的なスキルに加えて、特に必要とされるのは、方法論やプロセス、それから心構えといったものです。具体的には、レポートの書き方、プレゼンテーションの仕方、外国語の習得などです。(中略)
学生時代に必ずしも技術的なスキルを深める必要はないということです。(27~28ページ)
基礎学力を養っておけば、どんな職種についても、役立つ存在になれるということでしょう。社会に出る前から、専門技術の習得ばかりを意識していては、社会人として最低限必要となる知識が欠落してしまう危険があります。だから、一般教養をおろそかにしてはいけません。
仕事以外でも学ぶ姿勢が大切
鍋屋バイテックの岡本太一さんは、仕事以外のことも勉強することが必要と述べています。
会社に入っちゃうと、忙しいからあまり活字を読まなくなる傾向があります。そうではなくて、仕事のことも含めて世間のことも学ぼうよ、と。(中略)
とにかく字を読もうよ、世間のことを学ぼうよ、他の人のことを学ぼうよということを、いつも一生懸命やっている。その結果として仕事が変わり、会社が変わるのではないかと思っています。(47ページ)
学ぼうとする意識が生まれることで、自分の周囲のことや社会のことに関心を持つようになります。仕事が忙しいからと、活字を読まなくなると、だんだんと周囲のことや社会のことがわからなくなっていきます。
まずは、活字を読む習慣をつけて、世間のことを知るようにすれば、会社や仕事も変わっていくでしょう。
頭の中に資料をインプットしておく
知識の詰め込みで頭でっかちになることを否定する人がいますが、資料を頭の中にインプットしておかなければ、良いアイデアは生まれません。ハードロック工業の若林克彦さんは、資料を頭の中に作って備蓄しておくことが大切と述べています。
例えばナットの場合、緩み止めナットか何かを頭の中に入れて、そこに何を付けたら有効な価値や効果に結びつくかを考えるわけです。(中略)付加する要素をずっと並べて、一つずつジョイントしてみる。それでこれはいいとか悪いとかやってみるんです。最終的に一番いいものを選択すればいいだけの話であって、アイデアの開発というのはそういうことでしかないんですよ。(49ページ)
アイデアは、ある時、パッと頭にひらめくものではありません。過去のインプットの蓄積から、湧き出るようにしてアウトプットされるものです。
世の中はつまらないところからスタートする
就職活動をしても、必ず自分が希望する会社で働けたり、職種につけたりするわけではありません。男前豆腐の伊藤信吾さんは、「しょうがねえなあ、世の中つまんねえなあ」というところからスタートしたそうです。
向いている、向いていないに関しては、関係なしに突き進んでいったというのが事実ですね。たぶん誰もやらないし、僕がやらないと会社はおかしくなっちゃうと思って、無我夢中でやってきたというのが本音です。(102ページ)
仕事の向き不向きというのは、やってみなければわかりません。また、仕事を始めてすぐにわかるものでもありません。ただ、続けていけば、その仕事が得意になっていき、そして、愛着がわいてくることがあります。多くの人が「しょうがねえなあ」から出発するのですから、卒業したらどこでもいいので働いてみることが大切でしょう。
仕事を選択できるステージまでのぼる
多くの人が、与えられた仕事に不満を持つことがあります。だからと言って、それに対して愚痴を言ってても仕方ありません。SBIホールディングスの北尾吉孝さんは、以下のように述べています。
上司が気に入らないとか、自分はもっといい仕事が与えられるはずだという理由で、特に入ったばかりの人でそう思う人がたくさんいる。それはほとんど間違いだと思いますね。そういうことを判断するステージにまだ入っていない。働いて働いて、そして自然と天の啓示が聞こえてくる、というのがご縁です。(126ページ)
仕事を与えられているうちは、自分の仕事の良し悪しを判断できるステージにはのぼっていません。ましてや、自分はもっといい仕事をできるというのは、思い上がりです。
考えるだけでなく実行すること
現代人は、とてもよく物事を考えます。でも、その反面、脳内で結論を出す傾向があります。日本交通の川鍋一朗さんは、考えただけの人とやった人とでは大きな差があると述べています。
やった人と考えただけの人の間には、二十ぐらいの扉があって、それを一個やるために、一個扉を開け始めると、また次の扉があって。要するにやることっていうのは意外とアバウトにできるのね、っていうのがわかってくる。(139ページ)
考えてみて、難しそうだからやめるのではなく、ちょっとやってみることが大切です。もしかしたら、意外と簡単にできることなのかもしれませんからね。小さなことでも、自分自身で試すことで、見えるものがあるはずです。
手の感触を楽しむ
JTBの田川博己さんは、経験したから体験が思い浮かぶのだと述べています。
一度行くと、人間には「また行ってみたい、もっと見たい」という欲求が出てきますから。インターネットの画面で見ていると、「もっと見たい」というより、「いつでも見られる」という感覚になってしまうと思うんです。本当はもっと手の感触を楽しんでもらいたいと思います。(221ページ)
インターネットがあれば、いつでも桜の写真を見ることができます。でも、実際に咲いている桜を見ようと思うなら、春に桜が植えられているところに行かなければなりません。そして、目の前で、満開になっている桜、風が吹くと散る花弁を見た時、何かしらの感情が出てくるものです。
これが、田川さんが言う「手の感触を楽しむ」ということなのかもしれません。
何事も経験しなければわからない
日本マクドナルドの原田永幸さんも経験することの大切さを述べています。
何事も、経験せずにわかるわけがないんです。愚かな人間に言い聞かせなければいけないことは、”You don't know what you don't know”。知らない世界なのに、自分に合ってる合っていないと言うこと自体が、自分の可能性を狭めていると思わないといけない。よく私は若い人に言うのですが、「二十代は何でもやれ、何でも吸収しろ」「三十代は自分の人生の方向を決めろ」「四十代は成し遂げろ」。こういう感覚でいてほしいと思います。(283~284ページ)
この言葉を聞くだけでも、経験せずにわかることなんて少ないんだということがわかりますね。どんな小さなことでも経験することが大切です。
他にもたくさんの経営者の方が、就職活動中の方に役立つことを語っています。その内容は、様々ですが、大部分で共通していることは、経験することは大切だということです。
やりもせずに結論を出すのではなく、まずは、少しでも行動して、そこから何かをつかもうとする人を経営者の方は求めています。
「テレビで言ってたんだけど・・・」とか「インターネットで見たんだけど」という話ばかりをしている人よりも、「この間、○○に行ったんだけど・・・」とか「あそこのお店のランチを食べたんだけど・・・」と体験談を語る人の話の方が楽しいですよね。
自分の体験を語れる人がたくさんいる会社ほど、自社製品やサービスを差別化できるということを多くの経営者の方はわかっているのでしょう。
- 作者:村上 龍
- 発売日: 2011/05/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)