僕は、テレビ東京系列で放送されている「カンブリア宮殿」という番組を毎回欠かさず観ています。番組の内容は、作家の村上龍さんと企業の経営者の方が対談するというもの。アシスタントが小池栄子さん。
毎回、様々な企業の経営者の方が出演し、龍さんと仕事について語り合います。語り合うというよりかは、龍さんの質問に経営者の方が答えていくといった感じですね。トークの合間にVTRが流れ、どんな仕事をしているのか、どういう製品を造っているのかなど、その企業の業務内容が紹介されます。
カンブリア宮殿は2006年に放送を開始し、その後、放送内容が書籍化されています。
自己犠牲を払える経営者になって欲しい
書籍のカンブリア宮殿には、22名の経営者の方との対談内容が収録されています。その中で、一番最後に登場するのが、京セラの名誉会長の稲森和夫さん。
龍さんから経営者に向いている資質について質問されると、向いている資質という問題もあるが、持ってほしい資質と、持ってほしくない資質があると稲盛さんは答えています。
持ってほしくない資質というのは、自分の欲望や野望を達成することを目的とすること。こういう経営者の下で働くと、従業員は被害者になります。だから、経営者になりたいと思う人は自己犠牲を払ってでも従業員やお客さんを大事にしてほしいと、稲盛さんは述べています。
でも、経営者を目指す人は、どちらかというと、自分の野望を叶えたいと思っている人が多いような気がします。
当然、自分の欲望を満たすために努力をするという面が人間にはあります。初期はそれでもいいけど、幼稚な感じがします。経営者が成長すると、周囲の人が喜ぶ方が楽しく感じるようになり、会社が長く発展していくような気がします。そう稲盛さんは感じているそうです。
また、京セラは、他にはない高度な技術を持っていることが強みとなって成長してきたと思われがちですが、稲盛さんは、そういった面もあるけど、誰でも作れるものでいいものを作れないとダメだと、おっしゃっています。
「特許なんていりません。誰でもできることだけれども、一番いいものを一番安くつくれて、かつ利益が出るということが、一番普遍性があって強いんですよ」(345ページ)
稲盛さんがおっしゃっていることは、誰もが一度は聞いたことがある言葉なのですが、重みが違うような気がします。長年、愚直に働き続けてきた人にしかない重みなのでしょうね。
その他の経営者
本書に登場するその他の経営者と龍さんとの対談内容も一部紹介しておきます。
高田明(ジャパネットたかた)
今やお茶の間の人気者となっているジャパネットたかたの高田明さん。テレビで見ていて、話すのがうまいなと思っている人も多いのではないでしょうか。
人間というのは、いいと感じるものはいいと自分の心の中で自然に感じていますから、まずその商品に惚れ込む。そして、下手でもいいからお客さんの立場で、素直に自分の想いをトークで表現することが大事だと思います。(264ページ)
だそうです。好きだから素直に表現できるんですね。話すのが上手かどうかは二の次ということですね。
岡野雅行(岡野工業)
稲盛さんが、誰でもできることで一番安くていいものをつくれと言っているのに対して、岡野さんは、他でできない仕事をうちに持って来いというそうです。
うちのお得意さんに一番最初に言うのは、他でやっているものはうちに持ってきてくれるな、ということなんです。どこもできないやつ、どこもやってないやつだけ持ってきてくれ、と、それしか受けない。他でやっているなら、そこでやったほうがいいじゃないのと思うんです。(116ページ)
岡野工業と聞いてもピンとこない方がいると思いますが、太さ0.2ミリの痛くない注射針を造っている会社と言えば、わかるのではないでしょうか。岡野さんがおっしゃっていることは、他社でできるものは他社に任せて、他社でできないものだけを自社が引き受けた方が、社会的に価値があるということなのでしょう。
寺田和正(サマンサタバサジャパンリミテッド)
サマンサタバサは、有名なブランドですね。お金持ちが愛用している、そんなイメージがあります。でも、寺田さんは感性や内面が大切とおっしゃっています。
外見のキラキラもいいけど、内面のキラキラといのもある。親孝行でも何でもいいのですが、人のためや社会のために少しでも何かをやっている人がもっと輝くように、着ているもの、持っているものの内面までプロモーションしたいという気持ちがあります。(217ページ)
この言葉にサマンサタバサの強みがあるような気がしますね。
他の経営者の方と龍さんとの対談の中にも、数々の名言が出てきます。やっぱり、組織のリーダーになる人というのは、自分のことよりも他者を優先して物事を考えているんですね。そうじゃなければ、人の上に立たない方がいいのかもしれません。
カンブリア宮殿 村上龍×経済人1(日経ビジネス人文庫) (日経ビジネス人文庫 ブルー む 2-2)
- 作者:村上 龍
- 発売日: 2009/12/02
- メディア: 文庫
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