イヌやネコを飼う家庭は多くなっています。
一方で、飼育できなくなった飼い主などが、保健所に引き取りを依頼し、殺処分されるイヌやネコもいます。環境省の統計資料によると、2021年度は14,457頭のイヌやネコが殺処分されています。特にネコの方が殺処分数が多く、2021年度は11,718頭が殺処分されています。
2014年度以前は10万頭を超える殺処分数でしたから、確実に減ってきていますが、まだまだ多い状況です。
保護猫カフェ
NPO法人東京キャットガーディアン代表の山本葉子さんとニッセイ基礎研究所不動産研究部長の松村徹さんの共著『猫を助ける仕事』では、東京キャットガーディアンによるネコの殺処分ゼロを目指す活動が紹介されています。
東京キャットガーディアンでは、他のボランティア団体と同様に行政の保護施設から引き取ったネコの里親探しを行っていますが、シェルター内に猫カフェスペースを設けて一般に開放しているのが特徴的です。
台湾発祥とされる猫カフェは、日本で大きく発展し、現在では、世界中の主要都市でも見られるようになっています。一般的な猫カフェは、営利を目的として運営されているので、利用するには入場料や飲食代が必要になります。一方、東京キャットガーディアンが運営する保護猫カフェは、営利目的でのネコの展示をしない第二種動物取扱業者であるため、決まった入場料や飲食代はなく、入場者の寄付によって運営されています。
単に施設で保護しているだけだと、里親を募集しているネコがいることを伝えにくいですが、保護猫カフェであれば気づいていもらいやすい利点があります。もちろん、誰もが、里親になれるわけではなく、譲渡のための手続きを経てネコを譲り受けることができます。
猫付きのマンションとシェアハウス
東京キャットガーディアンでは、保護猫カフェだけでなく、猫付きマンションや猫付きシェアハウスの運営もしています。
猫付きマンションは、保護猫を飼育するための外部シェルターとしての役目を担っており、マンションに住むためには、保護猫の飼育が必要です。餌代やトイレ砂などのネコの飼育に必要な消耗品は、全て住人の負担です。
猫付きマンションは、保護団体の管理費用を抑えられる利点があります。住人にとっては、ネコを飼育しなければならないことが欠点になりそうですが、ペット可のマンションに住みたい人にとっては、ネコと暮らせるのは大きな利点となります。もちろん、誰もが入居できるのではなく、しっかりとネコを飼育できる人だけが住人となれます。
猫付きシェアハウスも猫付きマンションと同じような仕組みですが、ネコの飼育が当番制になっている点で異なっています。
猫付きマンションも猫付きシェアハウスも、不動産業界にとって、新たなビジネス・チャンスとなることが期待されます。部屋を完全室内飼いにするための改装が必要ですが、ネコと暮らしたい入居者を集められる利点は大きいので、空室を減らしたいマンション・オーナーにとっても大きな利点となるでしょう。
譲渡数を増やすことが殺処分の減少につながる
大災害が起きた後、被災者のために仮設住宅が建設されます。
仮設住宅は、当面の生活に必要なものですが、被災者の生活再建や仕事復帰までのつなぎの場でしかありません。新たな住環境と仕事が用意されることで、被災者の避難生活は終わります。
これと同じで、ネコも、シェルターにいる間は保護猫であり、新たな里親が見つかるまでは飼い猫にはなれません。保護猫カフェも、猫付きマンションも、仮設住宅と同じようなものです。ネコの殺処分を減らすためには、保護と譲渡の効率を高めていかなければなりません。
行政の施設からネコを保護しても、里親が見つからなければ、シェルターの空きが不足していきます。やがて満杯になれば、これ以上保護することが不可能になります。そうならないためには、支援のネットワークが広がるよう広報やイベントを充実させることが必要とのこと。
また、これ以上、野良猫が増えないようにすることも、殺処分を減らすために重要となって来ます。そのために行われているのが、野良猫を捕獲し、不妊去勢手術をし、元の場所に戻すNTRと呼ばれる活動です。手術されたネコは、地域猫として近隣住民から餌をもらうなど、1代限りの世話を受けることになります。もしも、不妊去勢手術をしないまま、野良猫に餌を与えていると、雪だるま式にその数が増えてしまい、住民トラブルが発生し、やがて保健所に引き取られ殺処分されてしまいます。
現在は、ネコの不妊去勢手術に対して補助金を出している自治体もあるので、野良猫に餌を与える前に不妊去勢手術をしておきましょう。
ネコの殺処分を減らすためには、多くの里親を探すことが必要です。それとともに野良猫が増え過ぎないようにすることも大切です。