ウェブ1丁目図書館

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いきなり本題に入っても誰も聴いてくれない

話を始めてすぐに本題に入ると、相手に聞いてもらえないことがあります。

「この商品を買ってください」といきなり言われても困ります。一方で、セールスをしなくても売れる商品があります。知名度の高い商品がそれですね。

知名度が低い商品は、とにかく「買ってください」と言い続けなければなりません。しかし、いきなり「買ってください」と言われても、すぐに買おうと思う人は少ないです。

だから、セールスという本題に入る前に相手に話を聴いてもらう姿勢になってもらうことが大切です。

まくらで聞いてもらう姿勢を作る

落語は、本題に入る前に「まくら」と呼ばれる小話を先にします。

「雑談はいいから本題に入ってよ」と思うかもしれませんが、このまくらがあることで、落語がより楽しく聞けるのです。

落語家の立川志の春さんの著書『あなたのプレゼンに「まくら」はあるか?』は、仕事で、相手に自分の話を聞いてもらうためのヒントが紹介されています。

落語のまくらは、ただの世間話のように思えますが、落語家にとっては、まくらをしゃべりながら、どういうお客さんが来ているのかをリサーチする手段としての役割があります。相手が何を求めているのかわからずに一方的にしゃべっても、良い反応は返って来ません。相手が求めているものを探るためにまくらは欠かせないのです。

また、まくらは、落語やしゃべっている落語家に対して親近感を持ってもらう役割もあります。何か面白そうだなと思ってもらってから本題に入るのと、これから何が始まるのか全く分からない状況で本題に入るのとでは、聴く側の姿勢が違ってくるものです。何が始まるのかわからない緊張感がある状況では、話を聴く前に帰りたい気持ちが先に出てきて、最後まで自分の話を聴いてもらうことはできません。

だから、いきなり本題に入るのではなく、相手が何を求めているのかを探り、自分に興味を持ってもらうために、プレゼンの前にまくらを入れた方が、良い結果を得られるはずです。

前座の役目

落語は、若手が最初の方でしゃべり、その後で、ベテランが登場します。

トップバッターは、前座と呼ばれる駆け出しの落語家が務めますが、この前座にも、まくらのような重要な役割があります。

前座の話がウケれば、後の落語家はしゃべりやすくなります。それなら、前座から、腕のある落語家がしゃべった方が良いではないかと思うでしょうが、前座の役割はウケることよりも、むしろ、後からしゃべる落語家にデータを提示することにあります。

前座のしゃべりの中のどこで、お客さんが笑ったのかがわかれば、後からしゃべる落語家は、今日のお客さんが求めているものがわかります。また、前座はウケなくても構いません。なぜなら、今日のお客さんがその話題に興味がないというデータを他の落語家に提供できるからです。

前座もまた、まくらと同じようにお客さんに落語を聴く姿勢を作ってもらう大切な役割を担っているのです。

聴く側が持つ情報は少ない

志の春さんは、落語では、「リズム、間、調子」が大切だと述べています。

その中でも、間の取り方が上手いと、聴く側の頭の中に内容のイメージが湧きやすくなるとのこと。

話す側と聴く側では、持っている情報量が違います。商品のセールスであれば、その商品についての情報はセールスをする側、すなわち話す側の方が多くの情報を持っています。

聴く側も多くの情報を持っていれば、少々雑に話しても、内容をイメージできるでしょう。しかし、通常は、話す側の方が多くの情報を持っているので、話す側がイメージできる速さでしゃべっても、聴く側は情報を処理しにくいです。

でも、間をあけることで、聴く側は、話の内容をイメージしやすくなります。聴く側に時間を与えることで、情報処理が追いつくと言った方が良いかもしれません。聴く側に内容をイメージさせるために同じ言葉を繰り返すことも有効です。話す側にとっては、間を入れたり、同じことをしゃべったりするのは、まどろっこしく感じますが、それくらいの方が聴く側の頭に情報を浸透させるためには良いとのこと。

まくらの段階で、相手が興味を持つ話題を提供できていると、聴く側の理解がより進みそうですね。


知名度が低い商品を売るためにいきなり「商品を買ってください」と言っても、相手に話を聴いてもらうのは難しいです。セールスでもプレゼンでも、相手に興味を持ってもらうためにも、話し始めにまくらを入れた方が良いでしょう。