ウェブ1丁目図書館

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会議はコミュニケーション

人が何人か集まると会議が始まるもの。

一口に会議と言っても、親しい友人同士がただ雑談をするような井戸端会議もあれば、何かを決定しなければならない学級会のような会議まで様々あります。講師が参加者の前に立って話をするセミナーもまた会議の一種です。

会議は、言葉によるコミュニケーションで行われますが、それ以外のコミュニケーションの影響も受けます。会議があらぬ方向に進んで行ったりするのもまた、言葉以外のコミュニケーションの影響を受けるからです。

話すことだけがコミュニケーションではない

コミュニケーション論、メディア調査論、定性的調査法を専門とする加藤文俊さんの著書『会議のマネジメント』では、タイトル通り会議を円滑に進めるための方法が事例で紹介されています。ただ、会議ではこのように振る舞えば良いといった情報ではなく、会議で何が起こっているのかを解説したものなので、読めば即効性のある会議でのテクニックが身につくというものではありません。

さて、会議は、話し合いをする場ですが、決して言葉だけでその場が形成されているわけではありません。

言葉はコミュニケーションの一手段であり、それ以外にもさまざまな形で、人はメッセージを発しています。話すことでメッセージを伝えられますが、話さないこともまたメッセージとなります。動くことも動かないことも、どちらも相手に何らかのメッセージを与えます。

不機嫌そうな顔をしていれば、今は話しかけない方が良いだろうと相手に思わせることになります。お互いの関係性が深まっていけば、相手のことをより理解できるようになりますが、一方で、相手の全てを知ることはできないので先入観や偏見も頭の中で形成されていきます。

先入観や偏見も含め、不完全な情報で相手を判断しなければならない以上、コミュニケーションは相手に対して抱いているイメージの影響を受けます。決めつけは良くないと思っていても、コミュニケーションには、相手に抱いているイメージも関わってくるのです。

会議では空間・時間・情報を整える

会議もコミュニケーションなので、イメージづくりが重要になります。

コミュニケーションは、必ずある時間・ある場所で行われますから、会議では、時間と場所を整える必要があります。また、その場で何を話すのか、何を話し合うのかといった情報も整えておかなければなりません。

例えば、会議室の席を円形に並べれば、参加者全員が同じ立場となり、自由に意見交換しやすくなります。また、全ての席を同じ方向に並べれば、前で誰かが講義するのを聴く形になります。このように会議室という空間をどのように整えるかで、参加者に与える印象が変わります。

会議は、いつ、どのくらいの時間行うのかを決める必要もあります。参加者が同じ時間に集まらなければ、会議も講義もできません。そして、会議は、いつ終わるかも決めておく必要があります。時間の経過により参加者の関係性が構築されていくことで、会議でのコミュニケーションのルールが変化していきます。そのため、進行役は、時間のマネジメントを考えながら議事を進行していかなければなりません。

情報についてもマネジメントが必要です。会議が冗長になると、参加者は飽きてきます。前提知識として共有されていることを話されると、参加者はいらいらしてきますから、このような内容を長々と話すのは避けた方が良いでしょう。参加者にインパクトを与える情報は、新しい情報や意外性がある情報です。また、情報は多ければ良いというものではありません。情報が多様だと、参加者にとってはノイズも多くなるので、どの情報を受け取れば良いのか迷ってしまい、不安や不満へとつながります。

発表資料と配布資料

講義や会議などでは、進行役が資料をもとに話を進める場合があります。

最近では、スライドに資料を映し出すことが多いですね。

スライドに表示する文字は、小さすぎると参加者が読めなくなるので、どうしても大きくなります。しかし、文字を大きくすると、スライド1枚当たりの情報量は乏しくなります。講義や会議では、このスライドを印刷したものを配布資料として、参加者に配ることがありますが、あまり好ましいことではありません。

進行役が話す内容と配布資料の内容が同じであれば、わざわざ講義や会議の場を設ける意味がありません。加藤さんは、配布資料と発表資料を補完的に扱うことを意識しているとのこと。発表資料は、発表者がそれを操りながら、何かを語ることで価値を発揮するのだと。

資料を配るのであれば、発表資料とは別のものにした方が、参加者の理解が増し、コミュニケーションもしやすくなるでしょう。


「決めないといけないことがあるから、とりあえず、いつどこに来て」と参加者に連絡するだけでは、良い会議を行うことはできません。会議の進行役には、空間、時間、情報を整えることが期待されます。それは、参加者とのコミュニケーションを潤滑にすることでもあります。

我々にとって当たり前となったコミュニケーションを見直すことで、良い会議を行えるのではないでしょうか。