ウェブ1丁目図書館

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シンギュラリティがもたらす無料化

科学技術は、いったいどこまで進歩するのか、そして、それに終わりはあるのか。

万物には、必ず終わりがあるので、科学技術の進歩も、どこかに終わりがあるのかもしれません。しかし、一方で、科学技術の進歩に限界はないという考えもあります。それどころか、科学技術は、ある時点で飛躍的に発展しはじめると期待されています。

そのある時点をシンギュラリティといいます。

技術が発展する加速度が無限大に

シンギュラリティは、特異点を意味します。

例えば、ブラックホールの中には、重力の大きさが無限大になる特異点があると考えられています。その特異点が、科学技術にもあり、技術的特異点(テクノロジカル・シンギュラリティ)と呼ばれています。現在、シンギュラリティというと、この技術的特異点を意味するようになっています。

昨今、人工知能(AI)などの進歩により、シンギュラリティがいつ訪れるのかに注目が集まっています。

エクスポネンシャルジャパン共同代表の齋藤和紀さんの著書『シンギュラリティ・ビジネス』は、シンギュラリティが、これからの我々の生活にどう関わるのかを一般向けに分かりやすく解説しています。

シンギュラリティは、「テクノロジーが無限大の加速度で進化する」ことです。そんなことが起こるのかと思うでしょうが、これまでも技術が倍々で進歩してきている事実を見れば、今の技術が新しい技術に取って代わられるまでの時間が短くなっていることに気づくはずです。

倍々で進歩している技術として、すぐに思いつくのが、パソコンや携帯電話などに内蔵されている記憶媒体です。2000年頃のパソコンに内蔵されていたハードディスクは、4GB程度の記憶容量しかありませんでした。それが、8GB、16GB、32GB、64GB、128GBと倍々に増えていき、2010年頃には512GBから1024GB程度まで増加しました。さらにその後も記憶容量は増加していき、今では、処理速度が速く耐久性にも優れたSSDがハードディスクに取って代わっています。

倍々に増えていくことを指数関数的に増えると言ったりしますが、最近は、指数関数をエクスポネンシャルというようになっています。

生命進化もエクスポネンシャルに進んだ

誕生したばかりの技術はちっぽけなものです。だから、多くの人は、その価値に気づきません。

しかし、技術はエクスポネンシャルに進歩するので、つい最近まで見向きもされなかった技術が、特異点に達した時に一気に注目を集めるようになります。AIがまさにそうです。AIの研究は20世紀には行われていました。でも、その頃は、多くの人が、アニメの世界のことのようにAIを現実味があるものとは思っていませんでした。

ところが、21世紀となり、2010年頃からは、やたらとAIという言葉を耳にするようになっています。AIの研究が始まった頃は、ちっぽけな技術にすぎず、それが倍に進歩したところで、ゴマ粒が2個になった程度のものとしか捉えられていませんでした。

二次関数のグラフを思い浮かべると、最初の頃はX軸(横軸)に張り付くように横方向にグラフが伸びていきます。しかし、ある所から一気にY軸(縦軸)方向に垂直に近い角度でグラフが伸び始めます。2個や4個のゴマ粒は見向きもされません。でも、4,096粒や8,192粒まで増えたら、なんかすごいことが起こっているように思えてきます。16,384粒まで増えると、ゴマ粒とはいえ無視できなくなるでしょう。

多くの人は、エクスポネンシャルに進歩することを想像できません。どんなことでも、一段一段、階段を上っていくようにしか進歩しないと考えがちです。しかし、生物もエクスポネンシャルに進化してきた事実を知れば、むしろ、進化も退化も直線的に起こるのではなく、エクスポネンシャルに起こることに気づくはずです。

人類は700万年前に誕生し、その大部分の期間、原始的な生活をしてきました。18世紀に産業革命が起こってから現代にいたるまでの技術の進歩は、人類の歴史の中ではほんの一瞬の時間でしかありません。それなのに人類誕生時と比較すると、想像できないほど速いスピードで技術が発展しています。技術が倍々に進歩することは絵空事ではないのです。

技術の進歩は無料をもたらす

さて、技術が進歩すると我々の生活はどう変わるのでしょうか。

便利になる、楽になるといったことはすぐに思いつくでしょう。でも、それ以上に無料になることの方が驚くはずです。

例えば、カメラ。

フィルムを使っていた時代には、写真を撮影し現像するのにお金がかかていました。たくさんの写真を撮影しようと思うとフィルム代がいくらかかるかわかりませんでした。ところが、カメラがデジタル化されたことで、写真撮影は無料でできるようになりました。100枚写そうが200枚写そうが無料。カメラ本体とメモリーカードにはお金がかかりますが、写真を撮影することにお金がかかることはありません。

また、カメラ本体やメモリーカードも、大衆化することで安く購入できるようになっています。

エクスポネンシャルに技術が進歩すると無料化が進むのです。

いずれ太陽光発電の進歩で、電気代も無料になる時代が来るはずです。太陽光発電なんて、大した電力を生み出せないと思うでしょうが、その考え方は技術が階段状にしか進歩しないと言っているようなものです。これまで見てきたように技術は倍々に進歩します。ある技術が誕生して間もない頃は、X軸に並行するようにしか進歩しませんが、ある時から垂直に近い角度で加速的に進歩し始めます。すでに太陽光発電という技術が誕生しているので、どこかで加速的に進歩し、火力発電以上の電力供給ができる時が来るはずです。

太陽光発電がシンギュラリティに到達すれば、もはや発電所は必要なくなるかもしれません。あらゆる電化製品に太陽光発電の技術が搭載され、コンセントにプラグを挿さなくても、バッテリーを充電しなくても、洗濯機や冷蔵庫を使えるようになるでしょう。

電力不足に備えて原発を再稼働する必要もありません。太陽光発電がシンギュラリティに到達するのを待てば、エネルギー問題は解決します。その時には、二酸化炭素の排出量も激減します。

ベーシック・インカムの導入

シンギュラリティは、2045年に起こると予言されています。

予言通りになるのか、ノストラダムスの大予言のように外れるのかはわかりません。ただ確実に言えるのは、技術はエクスポネンシャルに進歩し続けることです。

エクスポネンシャルに技術が進歩することは良いことばかりではありません。エクスポネンシャルな技術の進歩によって、製品やサービスの寿命は短くなり、開業と倒産、就職と失業が短期間に繰り返される社会になります。

そのような時代になった時、人々の収入はとても不安定なものとなります。だから、すべての国民に一律でお金を配るベーシック・インカムの導入を考えなければなりません。最先端の技術に関わっている人たちの中にベーシック・インカムに賛成する人が多いのは、エクスポネンシャルに技術が進歩することで、生活が破綻する人が出てくる危険性があると考えているからでしょう。

AI(人工知能)とBI(ベーシック・インカム)は、セットで議論され、そして、発展させていく必要があります。