ウェブ1丁目図書館

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データを支配した巨大企業に飲み込まれないようにするには

インターネットの発達により、データの重要性が、これまでとは比べ物にならないくらい大きなものとなっています。

より多くのデータを瞬時に集められた企業が巨大化し、これまでのビジネス環境を次々に破壊しています。そして、それらの企業は、さらに巨大化し、短期間に伝統的企業よりも社会に大きな影響を与える存在に成長しています。

グーグル、アップル、テスラなど、巨大IT企業が、これから、もっと社会に大きな影響を与えていくかもしれません。

2025年は巨大IT企業が支配する世界になっている

ベンチャーキャピタリストの山本康正さんの著書『2025年を制覇する破壊的企業』は、そのタイトル通り、これまでのビジネス慣習を破壊する巨大企業が、2025年の経済を支配するとの予測を示しています。

本書が出版されたのは2020年なので、5年後の未来を予測した内容となっています。未来のことを予測するのは、非常に難しいことです。本書は、それに大胆に挑戦した内容と言えますが、現在のITの発達を見ると、山本さんの予測は当たりそうに思えてきます。

毎日、ランチで何を食べようかと悩み、インターネットを使って検索している人もいるかと思います。インターネットがなかった時代と比較すると、随分と便利になりましたが、2025年には、この検索するという行為の重要性が薄まっているかもしれません。それは、検索最大手のグーグルが、自ら検索不要の世界を作り出そうとしているからです。

グーグルは、検索したユーザーのデータを容易に取得することができます。それも、数えきれないほど膨大なデータを。その膨大なデータを解析して、ある人には、今日のランチにカレーライスを提案したり、またある人には、フレンチのコースを提案したりすることが可能になります。わざわざ、ユーザーが検索しなくても、昼食時になれば、自動的におすすめのお店をスマホに知らせてくれるようになっているかもしれません。

同じようなことをアマゾンもできる可能性があります。アマゾンエコーに話しかけた言葉から、その人の趣味趣向を解析し、今必要な商品を自動で提示してくれるようになっているかもしれません。それどころか、ユーザーが何もしなくても、必要な商品が家に送られてきて、自動的に決済も完了していることだって考えられます。

クラウドサブスクリプションが端末の性能に依存しないサービスを提供する

ユーザーが、インターネットで様々なサービスを利用する場合、これまではパソコンやスマホの性能に依存していました。

ところが、クラウドの登場により、端末(ハードウェア)の性能は、それほど重要でなくなっています。従来は、端末にソフトウェアをインストールして使う必要がありました。ところが、近年は、クラウドを利用すれば、端末にソフトウェアをインストールせずともサービスを利用できるようになっています。

ソフトウェアは、クラウド上で動くので、ユーザーは、端末からクラウドにデータを送れば、そのソフトウェアを利用できます。必要なのはインターネットに接続できる環境だけです。

ソフトウェアを開発している企業も、クラウド上のソフトウェアに変更を加えることで、最新の機能をユーザーに提供することができます。わざわざ、ソフトウェアが入ったCDやDVDを販売する必要はありません。

このクラウドを利用したソフトウェアの提供は、サブスクリプションサービスの台頭によって、より利便性が向上しました。サブスクリプションは、ユーザーが、毎月一定の手数料を支払うことで、物やサービスを何度でも好きな時に利用できるものです。

ソフトウェアを開発している企業は、ユーザーとサブスクリプションの契約を結び、毎月、安定した収入を得ながら、ソフトウェアの改良や新商品の開発を行うことができます。そして、ユーザーも、契約し続けている限り、すぐに新機能や新製品を利用できます。

サブスクリプションは、単に月極で製品やサービスをユーザーに提供するものではありません。ユーザーが、サブスクリプションを利用している期間は、企業に自分の利用履歴を提供することになります。この利用履歴をもとに企業は、不必要な機能は排除することができますし、ユーザーが望んでいるであろう機能を知ることもできます。

クラウドサブスクリプションは、ユーザーが求めるデータを集めるのに適した組み合わせと言えます。

破壊される業界と必要な技術

山本さんは、2025年に破壊される危険がある業界を8つ示しています。小売り、エネルギー、金融、ゲーム、システム、家電、モビリティ(自動車)、対面の教育がそれです。

小売りがインターネット通販によって打撃を受けるのは理解できますが、金融まで破壊されるというのは意外でした。ロビンフットのような店舗を持たず利用者から手数料も取らない金融機関が出現したことで、株の売買手数料を収益源としている証券会社は店舗の維持が難しくなるかもしれません。

また、山本さんは、2025年に必要なスキルとして、英語、ファイナンス、データサイエンス、プログラミング、ビジネスモデルが読めるという5つを挙げています。

英語は昔からその重要性が知られていましたが、ITの発達により、データサイエンスとプログラミングの重要性も増しています。

ファイナンスは金融や財務の知識ですが、僕は、それよりも会計の方が重要だと思います。会計を知れば、企業の業績が良いのか悪いのかを財務諸表から読み解くことができます。何より、会計を勉強すれば、金融や財務の知識も身につきます。しかし、金融や財務を勉強しても、会計の知識は身につきません。

競馬に例えると、金融は、単勝複勝といった馬券の種類、券売機で馬券を購入する方法を知るものです。しかし、馬券の種類や買う方法を知ったところで、どの馬が勝つかを予想できなければ、お金を捨てるようなものです。一方、会計は、データを用いて、レースに出走する馬の実力を見極め、どの馬が勝つかを予想するのと同じような知識です。会計を知らずに株を買うのは、競馬新聞を読めない人が馬券を買うのと同じです。

上の5つのスキルの中で、ビジネスモデルを読むというのも重要だと思います。

山本さんは、仕事やビジネスの成功は、好きなこと、得意なこと、社会からの報酬が高いことの3つが重なる必要があると述べています。これら3つのうち2つを満たしていても、残り1つが欠けていれば、その仕事やビジネスはうまくいきません。

そして、「そのビジネスやテクノロジーは、本当に人々に浸透するか(儲かるか)?」を考えることも大切です。どんなに革新的な製品やサービスも、儲からなければ社会に浸透しません。

破壊される8つの業界でも、5つのスキルを身につけ、自社の製品やサービスを社会にどう浸透させるかを考え続ければ、巨大ITに飲み込まれずに2025年を迎えられるのではないでしょうか。