ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

生命の持続と生物の多様性

生命の誕生は、今から約40億年前とされています。この40億年の間に生命は多種多様な進化を遂げ、現在では数えられないほど多くの種数となっています。

40億年という気の遠くなりそうな時間の中で、生物は順調に増加していった時期もあれば、絶滅の危機にさらされたこともありました。途絶えることなく、生命が次世代に受け継がれていく仕組みは、実によくできています。

性別の役割

生物学者のマイケル・J・ベントンさんの著書『生命の誕生』は、やや難しい言葉が出てくるものの、40億年の生命の歴史について全体像をつかむのに良い書籍です。

生命を次世代に引き継ぐ方法には、無性生殖と有性生殖があります。

無性生殖は、分裂や出芽によって個体数を急速に増加させることができます。そのような生物の個体は、すべて自分の子を産むことができるからです。一方、有性生殖は、オスとメスがいなければ子を産むことができません。雌雄が出会わなければ子孫を残せないのですから、個体数を増加させるという点では、有性生殖は無性生殖より劣っています。

では、生物は、なぜ、無性生殖より不利な有性生殖を獲得したのでしょうか。

その理由は、遺伝子を効率的に混合できるからです。無性生殖の場合、誕生する子は、すべて親のコピーです。もしも、親が苦手な病気や寄生虫がまん延した場合、子も死んでしまうという欠点が無性生殖にはあります。ところが、有性生殖の場合、子は、父親と母親の両方から遺伝子を受け継ぐので、仮に父親の弱点である病気がまん延しても、子はその影響を受けにくくなります。

つまり、性別には、種の絶滅を防ぐという役割があるのです。

骨格の役割

生命は、海で誕生しましたが、やがて陸に上がる生物が登場します。

海で生活していた時には、自分の体を支える力はほとんど必要ありませんでした。しかし、陸上で生活するためには、自分の体を支えられるだけの力が必要になります。そこで、陸に上がるために生物は、骨格を獲得します。骨格は物理的な支えになると同時に骨の両端に付着した筋肉を使って、手足を動かしたり、あごを上下に動かして食事をするといった動作に貢献します。

また、カルシウムやリンといった無機要素の貯蔵庫としての役割も担っています。もしも、成長期にカルシウムやリンを食べ物から補給できなければ、発育が止まってしまいます。年を重ねてからは、カルシウムとリンが必要になった時に骨から取り出されて利用されます。

カンブリア紀爆発という急激に生命の多様化現象が起こりましたが、現在では、水の中で生活する生物よりも陸上で生活する生物の方が種数が多くなっています。骨格の獲得は、生物が多種多様に進化していくのを助けたと言えそうです。

繁栄と絶滅

3億9500万年前の石炭紀から、地球の酸素濃度が急激に上昇しました。

現在の酸素濃度は21%ですが、石炭紀には35%もあったというのですから、どこにいてもきれいな空気を吸えたことでしょう。この時代に酸素を多く作り出していたのは植物ですが、その恩恵を他の生物が受けることができました。

石炭紀には、巨大な昆虫が進化しました。昆虫は、気体の自然な拡散によって呼吸しています。そのため、酸素濃度が高いほど、昆虫は、多くの酸素を体内に取り込むことができます。それが、昆虫の巨大化に貢献したのではないかと考えられています。昆虫たちにとって石炭紀は、生活しやすい時代だったのではないでしょうか。

一方で、地球は、生物の生息に不利な環境をもたらすこともありました。5度におよぶ大量絶滅が、それを物語っています。

今から2億5100万年前のペルム紀末には、腕足動物の55あった科のうち50科がいなくなったというのですから、壊滅的と言っても良いでしょう。大量絶滅の原因となったのは、世界中の海洋が酸素不足に陥ったためと考えられています。

それでも、生物は長い年月をかけ回復していきます。恐竜の大絶滅をもたらした6550万年前のKT事変の後も、死に絶えなかった生物たちが、徐々に数を増やし、種数も多様となっていきました。我々ヒトも含めた哺乳類も絶滅することなく、今につながっています。


地球は、時に生物に大きな試練を与えます。そのたびに絶滅する種はありましたが、生物は死に絶えることなく進化を続けています。今も生物の進化は続いています。それは、ヒトも同じです。

進化は進歩ではありません。

でも、環境の変化に偶然適応できた個体が、過酷な時代を乗り越え、次の繁栄の礎を築いていきます。生物の多様性が保たれることは、生命の絶滅を防ぐために大切なことなのです。