ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

仕事は自分で決められない

世の中には、偉大な功績を残す人がいます。

不思議と、そのような方が発する言葉には重みがあり、素直に聞こうという気持ちになりますね。商売の世界なら、パナソニックの創業者の松下幸之助さんの言葉に感銘を受ける人も多いはず。同じ言葉でも、松下さんの言葉ならすんなりと聞く気になるのは、やはり日本を代表する大経営者だからなのでしょう。

変えられないもの

松下幸之助さんの言葉が掲載されている書籍は、これまでに数多く出版されています。その中の「道をひらく」では、とても短い文章で松下さんの考え方がつづられています。

松下さんは、努力したからこそパナソニックのような大きな会社を作ることができたのですが、世の中には運命的に変えられないものがあることを説いています。

この大自然は、山あり川あり海ありだが、すべてはチャンと何ものかの力によって設営されている。そして、その中に住む生物は、鳥は鳥、犬は犬、人間は人間と、これまたいわば運命的に設定されてしまっている。
これは是非善悪以前の問題で、よいわるいを超えて、そのように運命づけられているのである。(中略)いってみれば、その人の人生九〇パーセントまでが、いわゆる人知を越えた運命の力によって、すでに設定されているのであって、残りの一〇パーセントぐらいが、人間の知恵、才覚によって左右されるといえるのではなかろうか。
(26~27ページ)

とかく人は善悪を意識しがちですが、人間として生まれてきたことを変えることはできません。空を飛ぶ鳥と飛べない自分を比べてもどうしようもないことです。運命に落胆するのではなく、運命を受け入れるからこそ前に進めるのでしょう。

根気よく時を待つ

人生の残り10%は、知恵や才覚で変えれると思えるだけでも気が楽になるものです。努力でどうにかなる部分があるのですから。

ただ、努力するといっても短期間だけの努力では、思い描いた結果をなしとげることは難しいです。

どんなによいことでも、一挙に事が成るということはまずあり得ない。また一挙に事を決するということを行えば、必ずどこかにムリを生じてくる。すべて事は、一歩一歩成就するということが望ましいのである。
だから、それがよいことであればあるほど、そしてそれが正しいと思えば思うほど、まず何よりも辛抱強く、根気よく事をつづけてゆく心がまえが必要であろう。
(100ページ)

濡れ手で粟のような商売には憧れますが、短期で大きく儲けようと思うとどこかに無理がでてくるもの。テコの原理を使って、小さな力で大きな物を動かすような取引は、大きな利益を生む可能性がありますが巨額の損失を出す危険性もあります。テコを使って失敗すると、10%の努力では取り返しようのない犠牲を払うことになります。

進む道は一歩一歩着実に。

しかし、どんなにコツコツと努力しても成果が出るまで時を待たなければ、何事も達成できません。

何ごとをなすにも時というものがある。時―それは人間の力を超えた、目に見えない大自然の力である。いかに望もうと、春が来なければ桜は咲かぬ。いかにあせろうと、時期が来なければ事は成就せぬ。
(中略)
わるい時がすぎれば、よい時は必ず来る。おしなべて、事を成す人は、必ず時の来るを待つ。あせらずあわてず、静かに時の来るを待つ。時を待つ心は、春を待つ桜の姿といえよう。だが何もせずに待つことは僥倖を待つに等しい。静かに春を待つ桜は、一瞬の休みもなく力をたくわえている。たくわえられた力がなければ、時が来ても事は成就しないであろう。
(108~109ページ)

現代は、何事にもスピードが求められます。しかし、どんなに頑張っても、春まで待たなければ桜は花を咲かせません。見える結果は、見えないところで貯めてきた力の現れなのでしょう。他人の成功もまた同じです。

自分の仕事は世の中が決める

仕事は、世間が必要としているから成り立つのであり、自分の都合だけで上手くいくものではありません。

自分の仕事は、自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで、ほんとうは世の中にやらせてもらっている世の中の仕事なのである。ここに仕事の意義がある。
(144ページ)

世の中が求めていない仕事は、どんなに頑張ってものびないもの。仕事は世の中が自分に与えてくれているものだという謙虚な姿勢が大切です。

働き方にも工夫が必要です。丁寧に仕事をすることは大切なことですが、時間がかかり過ぎるのは問題です。だからと言って、早い時間で仕事を終えて不良品をお客さんに提供することも良くありません。丁寧に早く仕事をするにはどうすべきか、工夫する気持ちを持たなければ、世の中が求める仕事はできないでしょう。


松下さんの言葉には厳しいものがあります。世間が求めているから自分の仕事があると考えられるようになるには、それなりの人生経験が必要になりそうです。

道をひらく

道をひらく