ウェブ1丁目図書館

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会社員は社畜ではなく社員稼業だ

最近、社畜という言葉を聞いたり見たりすることが多いですね。おそらく、会社の奴隷のように働いている従業員といった意味なのでしょうが、あまり感心しない言葉です。

僕が思うには、こういった言葉を使う人は、会社員というのは、会社から言われたことをただひたすらこなすだけという考え方があるのではないでしょうか?そして、会社から言われたことに対して、自分の意見を言ってはいけない、とにかく自分を押し殺して、何事もなく日々を送るのだという気持ちもあるように思います。

しかし、このような考え方については、40年ほど前に松下幸之助さんが否定しています。松下さんは、会社員のことを社員稼業の主役だとおっしゃっています。

自分の店を切り盛りするように社員として働く

松下さんは、著書の「社員稼業」の中で、こう述べています。

自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である、というように考えてみてはどうか(3ページ)

このような考え方に立てば、会社員だって、自分の店をどうやって発展させていくのかという視点で、毎日の仕事に取り組めるはずです。単に給料をもらってるから、仕方なく働いているんだという気持ちも無くなるのではないでしょうか?

社員稼業という意識があれば、上司も同僚も後輩も、自分の大切なお客さんという気持ちになるはずです。でも、社畜という意識を持って毎日の仕事をしているとどうでしょうか?上司も同僚も後輩も、会社から与えられるエサに群がってくる邪魔者としか思わなくなりませんか?そんな気持ちで毎日仕事をしていても楽しくないですよね。

自分のことを社畜と言うのは、自分自身で人生をつまらないものにしていると思うのですが。

社員稼業に徹すれば言われた仕事だけで終わらせなくなる

自分は、社員稼業の経営者だという意識を持つだけで、仕事に対する姿勢は変わってきます。経営者は言われたことだけをやれば済むというわけにはいきませんよね。人に命じられなくても、進んで仕事をしなければ会社をつぶしてしまいます。

みずからの稼業が夜なきうどん屋の主人であったとしたならば、みずから進んでうどんを売るというような心がけで仕事をしなければならないでしょうし、川べりに屋台店を出して、お客さんに呼びかける必要があるでしょう。また、きょうのおつゆの味わいはどうであるかと、みずから食べてみて、少しからいとか、からくないとか、自分で味わい、考えるということもやるでしょう。(17ページ)

自分でお店をもてば、日々、こういった試行錯誤をするはずです。でも、社畜という意識の中では、こういったことはしないでしょう。それより、いかに楽をするかということばかりを考えるのではないでしょうか?

それでは、会社にいる時間が、とてももったいないと思うんですよね。自分を社員稼業の主役なんだと意識を変えるだけで、毎日の充実感は変わってくるはずです。

素直な心が社畜意識を変える

松下さんは、素直な心を持つことが大切とも述べています。素直というと、従順という意味で使われますが、松下さんは、そんな消極的なものではなく、もっと力強い積極的なものだと主張しています。

素直な心とは、私心なくくもりのない心というか、一つのことにとらわれずに物事をあるがままに見ようとする心なのです。(中略)
素直な心の中には、愛というか、憎むべき相手をも愛するといった心、また誤りをただし、正しい方向に導くといった心、そういうものも含まれると思います。また、高い見識というものも、こういった素直な心によって養われるのです。一言でいえば、素直な心は、人間を正しく強く聡明にするものです。(57~58ページ)

松下さんが言う「素直な心」は、ただ、言われたことをするだけといった態度ではないですね。会社がおかしな方向に向かっている時には、部下から上司に向かって、「もっとしっかりしてください」ということもあっていいわけです。もしも、社畜意識を持って仕事をしているなら、こういった言葉は出てこないでしょう。

また、自分は社員稼業の主役なのだという意識があるからこそ、会社の社長と同じ視点で物事を見れるようになるのではないでしょうか?自分がそういった視点を持って仕事をしていく過程で、会社が発展していけば、きっと仕事にやりがいを感じるはずです。

でも、自分を社畜だと思っている限りは、仕事にやりがいを感じることはないでしょう。だから、働けば働くほど社畜意識が強まり、仕事が嫌になっていくのではないでしょうか?

松下電器(現パナソニック)も、素直な心を持って社員稼業に取り組んだ従業員がいたからこそ今のような大きな会社になったはずです。

私が今日ここまでやってまいりました発展の過程をかえりみますと、私自身は個人としてはまことに頼りなく、また知識も非常に乏しいのです。しかし、社長としての職責にあることを多数の社員の方が認めてくださって、そして社長を助けようという気分が社内に相当強く働いていたことが、会社の発展ともなり、今日を築く要因になったのです。(132ページ)

もしも、社畜意識を持った人ばかりだったら、今頃、パナソニックは倒産していたかもしれませんね。