「水平リーベ僕の船・・・」
その昔、理科の授業で覚えましたよね。もう、これが何だったのか忘れている人もいらっしゃるのではないでしょうか?
これは、元素周期表の覚え方で、水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)と順番に並んだ表を暗記していたわけですね。こんなもの実生活に何の役にも立たないと、暗記を放棄してしまうわけですが、自分の体も元素で構成されていることを知ると、なんとなく興味がわいてきます。
もちろん地球も元素でできているので、我々人間は、元素と密接に関係しながら日常生活を送っていると言えます。
手始めに一番左の7個の元素を勉強してみよう
以前、吸うと声が甲高くなるヘリウムガスが流行したことがあります。このヘリウムガスを吸い過ぎて窒息死しそうになったことがあるイラストレーターの寄藤文平さんの著書「元素生活」が、118個の元素を独特のイラストを使って解説してくれています。
寄藤さんの元素のイラストは、それぞれの元素の特徴をよく表しており、一目でどういった特徴をもった元素なのか理解できますね。
元素周期表は、左から軽いものを順番に並べていったものです。そうやって順番に元素を並べていくと、周期的に似たような元素が現れることに気づいた科学者がいました。似た性質の元素が現れところで折り返していって元素周期表を完成させると、縦に似た性質の元素が並びます。
例えば、一番左側の縦の列には、上から水素(H)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)と並んでいます。一番上の水素は別格で、残り6個の元素はアルカリ金属に分類されます。
アルカリ金属は、柔らかい性質を持っており、密度が小さいので水に浮くものもあります。しかし、酸化しやすいといった弱点を持っており、表面はすぐに光沢を失ってしまいます。
それでは、元素周期表の一番左側の7個の元素を簡単に見ていきましょう。
元素番号1番 水素(H)
水素は、全ての元素の中で最も小さくて軽いです。ビッグバンの3分後に水素のもととなる水素元素が誕生し、やがて水素とヘリウムが集まって星ができました。つまり、宇宙で最初に誕生した元素が水素なのです。
人間の体の6割は水でできていますが、それは水素と酸素が集まったものなので、水素は人間を構成する元素の中でも大切な存在です。しかし、水素は火をつけると大爆発を起こす元素なので、取り扱いには十分に注意しなければなりません。
元素生活でのイラストは、ヒョロヒョロのおじいさんとして描かれています。
元素番号3番 リチウム(Li)
アルカリ金属の中で最も軽いのがリチウムで、水素と同じくビッグバンで誕生した元素です。
現代生活では、携帯電話などのバッテリーとして使われるリチウム電池が身近な存在ですね。リチウムは海水に含まれているので、今のところ枯渇の心配はないとのこと。当分の間は、リチウムが小型電化製品のバッテリーとして活躍し続けるでしょう。
元素生活でのイラストは、ヒョロヒョロのサラリーマンのような姿で描かれています。
元素番号11番 ナトリウム(Na)
食塩(塩化ナトリウム)、味の素(グルタミン酸ナトリウム)など、普段の食事でお世話になることが多い元素がナトリウムです。石鹸の製造にも欠かせません。また、人体ではナトリウムイオンが細胞外液の中に多く含まれており、体液の調節に大切な役割を果たしています。
そんな馴染み深いナトリウムですが、水と反応すると爆発する凶暴な一面も併せ持っています。
元素生活でのイラストは、パンツ一丁の細めの体型で描かれています。
元素番号19番 カリウム(K)
農作物を育てる三大肥料のひとつがカリウムです。人体では、細胞内駅にカリウムイオンが多く含まれており、ナトリウムイオンとともに体液の調節に欠かせない存在です。
工業製品では、マッチに使われている硝酸カリウムが代表的です。2時間サスペンスでおなじみの青酸カリも、実はカリウムです。
元素生活でのイラストは、パンツ一丁の中肉中背の体型で描かれています。
元素番号37番 ルビジウム(Rb)
放射性のルビジウムの寿命は、なんと488億年。原子時計に使われている元素で、誤差は10年に1秒とのこと。水に入れると大爆発するので、取り扱いには要注意。
元素生活のイラストは、ややお腹が気になる専門職として描かれています。
人間を構成する元素はポケットマネーで買える
このように元素生活では、118個の元素をイラスト付きでわかりやすく解説しています。
でも、118個の元素を知って何になるの?
そんな言葉が聞こえてきそうです。中学校の理科の時間で感じた「こんなものを覚えて実生活に何の役に立つのか」と同じ感情が読後に襲ってくるかもしれません。満たしてくれるものは、読者の知的好奇心だけでしょうね。
さて、どうでも良いついでに紹介しておくと、元素から計算した人間の原価は、たったの1万3千円だそうです。もしも自分が死んだ時に体から元素を取り出して葬儀代に充ててくれと言っても、これだけでは花くらいしか用意できませんね。
でも、原価1万3千円なのに日本人の生涯収入が2億円や3億円なわけですから、こんなに費用対効果の高い労働力は他にないでしょう。
ちなみに高級車のランプに使われているスカンジウム(Sc)は、1グラムで10万円以上もします。たった1グラムが人間9人分の値段に匹敵することを知ると、何とも言えない悔しい感情が湧き上がってくるのでした。