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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

1日5分の仕事で1ヶ月100万円稼ごうとしたら電子辞書ができちゃった

経営者

携帯電話やインターネット事業を手掛けるソフトバンクは、我が国を代表する巨大IT企業です。

そのソフトバンクを率いているのは孫正義さん。

孫さんは、メディアにもたびたび出演しているので、ご存知の方も多いことでしょう。また、ソフトバンクの携帯電話のCMは、ドラマ仕立てとなっていて、真っ白な犬がお父さん役という今までにないインパクトがあります。なので、テレビを見ないという人以外は、あのCMを知らないという人は、ほとんどいないでしょう。

孫さんが、ITの世界に入ったのは、学生時代にマイクロコンピューターのチップを見たことがきっかけでした。

学生時代は勉強の鬼

テレビ東京系列で放送されているカンブリア宮殿という、作家の村上龍さんとゲストの経営者の方が対談する番組を僕は好きで、毎回見ています。孫さんが出演された時の内容は、「カンブリア宮殿[特別版] 村上龍×孫正義」という書籍になっています。

そのカンブリア宮殿孫正義さんが出演された時、学生時代は、とにかく勉強したと語っていました。日本の学校ではなく、アメリカの学校で。その留学先のアメリカで、ふと雑誌を見た時、マイクロコンピューターのチップの写真が掲載されており、とても感動したそうです。

コンピューターというと「鉄腕アトム」のお茶の水博士に出てくるような、ピコピコ光っている大型のものしか僕のイメージの中にはありませんでした。
ところがマイクロコンピューターというのは一チップで、指先に乗っかるくらいのものです。それが一台のコンピューターそのものなのですから、大変なものを人類は発明してしまったと思いました。(中略)
その人間より能力が上になるものを、人間は初めて発明してしまった。こう考えた時に、あまりの感動で、立ったまま両手両足の指がジーンとしびれてきて、涙がボロボロ出て止まらなくなったんです。(49ページ)

本能的にマイクロコンピューターが、今後の人間社会に大きな影響を与えると感じ取った孫さんは、勉強の虫ならぬ勉強の鬼になって、コンピューターの勉強をしたとのこと。

イデアタンクで5分間に5個から10個の発明が可能に

誰もが、学生時代にお金がなくて困ったという経験を持っていることでしょう。その時にすぐに思いつくのがアルバイトをして稼ぐこと。

でも、孫さんは、勉強が忙しいので、そのような方法でお金を得る手段を選択できません。そこで、1日5分だけ仕事をして1ヶ月に100万円稼げないかと言うことを真剣に考えたそうです。そして、思いついたのが発明です。そこで、まず、発明を支援するアイデアタンクというソフトを作りました。

村上 学生ですから、お金はそうないわけですよね。(中略)
孫さんは考えて、発明がいいんじゃないかと思ったそうですね。
しかもその方法というのが面白くて、いろいろな単語を、例えばリンゴとかクギとか、いろいろ書き出して、それをその当時、使わせてもらっていたコンピューターを利用して、一番有用性が高いものから点数を付けて、それを組み合わせて何かを作ろうと思ったらしいんですよ。(55ページ)

例えば、リンゴ、音声を出す機械、時計という単語を組み合わせると、アイデアタンクが、「のどかな田舎の風景を演出するような音声付き目覚まし時計」というアイデアを出してくれるのです。

このアイデアタンクを作ったことで、孫さんは1日5分の仕事で5個から10個の発明ができるようになったそうです。そして、音声を出す機械、液晶ディスプレイ、キーボードの3つを組み合わせて発明したのが、現在の電子辞書の原型です。そう、世界で初めて電子辞書を作ったのは、孫さんだったのです。

大学の教授や研究者を協力者に

発明をして特許を取得しても、まだ実物はできません。

次にとる行動は、試作品を作ってくれる協力者を探すことです。そこで、孫さんはマイクロコンピューターに詳しい教授や研究者が誰かをあちこちに電話で聞きまわり、売り込みに出かけます。

そして、学生なのに教授に対して「先生、時給はいくらですか」と聞いて、力を貸してくれれば、その時給を支払うと言ったそうです。相手の言い値で報酬を支払うと約束したわけですね。でも、手元にお金はありません。実際の報酬を支払うのは、試作機が完成して、それが売れた時です。

 「うまくいったら先生の言い値どおり」「うまくいかなかったら、みんなタダ働きです」と。「でもね、世界初の電子辞書を作るわけです」「しかも、スピーチシンセサイザーで、発音までしてくれる」「これを作っただけでも人類のために意義があると思いませんか」と。(中略)
 「それは先生にとっても、ああ、面白いプロジェクトを一つやったな、と思えるんじゃないですか」と。(中略)
 そうしたら笑い出して、「お前も面白いやっちゃな」「じゃあ、まあ、やってみるか」となったのです。(60ページ)

こうして、世界初の電子辞書の試作機ができたわけですが、これだけを聞くと、1個のアイデアがうまく行っただけのように思えますよね。

でも、実際には、そうではありません。孫さんは、毎日1個発明し、それを1年間続け、200個から300個のアイデアの中から、最強の1個を選んで教授に会いに行ってるのです。それを具体的な形にするための執念がまったく違ったんですね。だから、教授に孫さんの熱意が伝わったのでしょう。

他人の力にばかり頼るソフトバンクという批判

ソフトバンク事業発展の歴史を見ると、M&A(買収と合併)や他社との提携で、グループ全体が大きくなっていることがわかります。

それに対して、ソフトバンクは自分たちの力では何もできない会社だという批判をする人たちがいます。僕も以前は、そのような印象を持っていました。孫さん自身も他人のふんどしを借りて仕事をしていることを認めています。

他人のふんどしも、借り慣れてくれば借りるのが上手になる。それも一つのお家芸、才能のうちだ、とね。確かに自分は何も誇れるようなものを持っていない。でも、すごい情熱があって、人類に貢献したいという思いがある。そして何となく、ちょっと勢いのようなものが出てきている、と。「もしかしたらあいつらと組むと面白いんじゃないか」と、相手も何とは無しに思ってくれる。(78ページ)

このように言えるのは、学生時代に鬼のように勉強をして、たくさんの発明をしてきたからではないでしょうか?

そういった経験があるからこそ、新しい何かを生み出す難しさを知っており、自社でできないことは、他社と協力したり、グループに引き込んだりして、社会に新たな価値を提供しようとしているように思います。

また、技術はあるけど、資金がないという企業や個人は多いはずです。そういった企業や個人が、技術を活かして新しい価値を生み出すには、ソフトバンクのような借り上手の会社が必要でしょう。

新規参入を阻む壁

少し前まで、ソフトバンクの携帯電話はつながりにくく評判が良くありませんでした。

これは、国がソフトバンクに割り当てている電波の周波数が原因です。つまり、他社は良質な電波を割り当てられていたのにソフトバンクは質の悪い電波を割り当てられていたのです。

ソフトバンクの携帯電話事業は、ボーダフォンジャパンを買収したもので、当時から質の悪い電波を使用していました。国が質の良い電波を割り当ててくれなかったことが、つながりにくい原因であり、ソフトバンクの技術的な問題ではなかったんですね。


安全な社会を維持するためには、国による規制が必要なことがあります。でも、日本の場合、規制の仕方が新規参入組に厳しくするもので、アメリカのように大きくなりすぎて独占状態になることを規制するといったものではないようです。

アメリカの場合、規制というのは、成功しすぎた会社に対してするものなんです。(中略)要するに成功しすぎて、独占しすぎて、新規参入を阻むという状態は国の成長を妨げるというのが根本的思想です。(中略)
日本の場合は逆なんです。新参者というのは何をしでかすかわからない。怪しげなことをするに違いない。新参者はすぐつぶれるとか、すぐ悪いことをするとか、騙すとか、そういったことがあるから、新参者を規制して消費者を守らなくてはいけないというのが根本的思想なんです。(94~95ページ)

もちろん、医療のように参入障壁を高くしなければ、患者の安全を確保できないという分野はあるでしょう。

でも、ビジネスの世界では、むしろ、新規参入を難しくする方が、消費者にとって不利になることがあるはずです。

孫さんが言うように新参者は悪いことをするとか騙すとかいう先入観が規制する側にはあるのでしょう。でも、数年おきに発生する食品偽装事件は、どれも歴史のある企業やお店が起こしていることを考えると、大きくなった事業者や歴史のある事業者ばかりの業種の方が、消費者にとって不都合が多いと思いますね。


健全な業種や業界を作るためには、風通しを良くして新規参入しやすくすることであり、特定の事業者が大きくなって独占しないようにすることなのではないでしょうか。

いずれは、ソフトバンクも大きくなりすぎて、規制される側になると思いますが、その時は今よりも健全な社会になっていることでしょう。

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