ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

マイホームは売却することを前提に買うこと

多くの日本人が憧れるマイホーム。最近では、若い人はそれほど興味を持っていないようですが、それでも持家に憧れる日本人はまだまだたくさんいます。

「一国一城の主」になりたいという願望で、30年もローンを組んでマイホームを購入する人がいますが、真似しない方が賢明です。30年先がどうなっているのかなんて誰にもわかりませんからね。ただ、どうしても今すぐにマイホームが欲しいと思っている方は、それを自分や家族が住み続けることを前提に買うのではなく、投資目的で購入するべきです。

買ってすぐに売れない不動産には手を出さない

不動産市況アナリストの幸田昌則さんは、マイホームは売る前提で考えなければならないと、著書の「失敗から学ぶ不動産の鉄則」で述べています。

ずっと住み続けることを目的にマイホームを買うのに売ることなんて考える必要はないと思うでしょうが、人生なんてどうなるかわかりません。何かの事情ですぐに手放さなければならないことだってあります。

6,000万円で購入した分譲マンションが4,000万円まで値下がりした場合、住むことを目的に買ったのだから気にしないといえる人はほとんどいないでしょう。2,000万円も損をするのですから。

「投資」という考え方でマイホームを取得しようとすれば、おのずと視点が変わってくるはずです。
将来、値下がりをしない、もしくは値下がり幅の小さいものを選択することになります。さらに、できるだけ値上がりが期待できる物件を取得しようと考えます。
そうすれば、将来に価値の高くなる物件とは、どんな条件が揃っているかを考えるようになるでしょう。
同時に、投資という視点で考えれば、いざというときに「換金しやすい」ことも重要な要素となります。何らかの事情で「売りたい」と決断をしても、買い手がつかなければ困るからです。
(149~150ページ)

自分自身の可能性を失わせる持家への執着心

上記のようなことを言われても、マイホームが欲しいという気持ちがすぐに収まることはなく、30年ローンで一軒家や分譲マンションを購入する人がほとんどです。

その欲求が将来の自分の可能性を失わせていることに全く気付いていないのでしょうね。

長期のローンを組んでマイホームを購入することは、今働いている会社の信用があるからできたことであって、あなた自身の実力を評価して銀行がお金を貸しているわけではありません。会社から転勤を命じられたときにそれを拒否できますか?住宅ローンが残っているのに転勤を拒んで会社を辞めることなんてできないでしょう。

しかも、会社の信用力のおかげでローンを組むことができ、念願のマイホームを手に入れたのですから、会社を辞めるというのは、恩を仇で返す行為に他なりません。また、自分がやりたい仕事が見つかったり、今の職場より条件が良い会社が見つかっても、住宅ローンを抱えていたのでは、転職の機会を逃してしまうことだってあります。

賃貸住宅であれば、契約を解除してしまえば、その後はまったくのフリーとなって、問題が残りません。
ところが家を買ってしまうと、「せっかく転職に成功しても自宅から通えずに二重生活を余儀なくされる」「希望する転職先が見つかったり、スカウトされたのに、自宅と職場とが遠く、せっかくの機会を断念する」というケースも起こりうることです。
(中略)
ともかく、持ち家のリスクは、金銭面だけには限りません。身の振り方に制約条件が与えられると考えなければならないのです。
終身雇用制度をとる企業が少なくなるという変化は、私たちの住宅の持ち方にも少なからず影響を与えるようになったのです。
(46ページ)

借金にはテコの原理が働く

長期のローンを組んでマイホームを手にすることにもメリットはあります。30年ローンであれば、30年後にしか手にできないマイホームにすぐに住むことができます。

仮に5,000万円の分譲マンションを購入するのに頭金500万円を用意し、残りの4,500万円を銀行からのローンで賄った場合、所持金の10倍の取引をすることができます。このように借金をすることは少ない資金で大きな取引を可能にすることから、テコの原理と同様の効果があると言われます。

このような効果を負債のレバレッジ効果と言います。

しかし、負債のレバレッジ効果は、大きな利点をもたらす半面、大きな損失をもたらす危険もあります。

例えば、子会社への出向を命じられ、現在よりも給料が10%下がったとしましょう。もしも、無借金で賃貸マンションに住んでいたのなら、今よりも家賃の安いマンションに引っ越すことで支出を減らし給料の減少分と相殺することが可能です。

ところが、マイホームをローンを組んで購入した場合、そのような引っ越しはできません。ローンの返済額は変わらないので、他の支出を減らしたり、預貯金からの持ち出しを強いられることもあります。もしも、子会社がマイホームから通えないところにあれば、新たに賃貸マンションやアパートを借りて単身赴任しなければならくなります。

ローンの額が多ければ多いほど、ちょっとした変化に対して大きな痛手を被るのです。まさに借金がテコになって、苦痛を増大させていると言えるでしょう。

高度成長期の常識は通用しない

昭和の高度成長期を生きてきた人たちは、土地の価格は上昇し続けるという土地神話を信じ続けてきました。

異常なインフレを体験した世代ですから、このような考え方を持ち続けるのは仕方のないことかもしれません。この時代を生きてきた人たちは、すでに住宅ローンを完済し、今は家賃を払うことのない持ち家で悠々自適の生活を送っていることでしょう。

しかし、それを見て若い世代の人たちが真似をしてはいけません。おそらく、今の若い世代は、そのようなことをしないでしょう。最も危険な世代は高度成長期を経験した人達の子供の世代です。彼らは、自分の親が長期の住宅ローンを組んでマイホームを購入し、最終的に借金を完済している姿を見ています。どの家も、そうやって家を買いローンを返済しているのを見ていると、それが当たり前のように思えてきます。

そして、自分たちも長期のローンを組んでマイホームを購入しようするわけです。

彼らの親の世代が長期の住宅ローンを完済できたのは、異常なインフレが続いたことが理由なのです。決して、計画性があったわけではありません。周りがマイホームを買っているから自分も欲しい、ただそれだけの理由で高額な買い物をし、好景気の追い風が吹いていたから借金を返済できただけです。


マイホームを持つことは、自分の体を縄で縛り身動きができないようにする行為です。特に長期の住宅ローンは、自分の首にロープを巻いた状態で24時間過ごしているのと同じです。

通勤電車のドアにロープが挟まれば大けがをすることは誰だってわかります。でも、多くの人が首にロープを巻いて歩いているのを見ると、それが異常なことと思えなくなり、自分も彼らと同じことをしてしまいます。


マイホームを持つことは、危険と隣り合わせなのだという意識を持たなければなりません。その意識を持てば、マイホームは投資と同じだと理解でき、購入するときも、すぐに売却が可能な物件、値上がりが見込める物件、少なくとも値下がりしない物件を選ぶようになります。

周りが買うから自分も買う。

そうやってマイホームを手にすると、集団首つり自殺に追い込まれるかもしれませんよ。

失敗に学ぶ不動産の鉄則 (日経プレミアシリーズ)

失敗に学ぶ不動産の鉄則 (日経プレミアシリーズ)