家計の見直しをする時、真っ先に取り組むのが支出を減らすことではないでしょうか?
会社勤めの場合、給料は固定の場合が多いですから、いますぐ収入を増やすというのは難しいでしょう。自営業の場合でも、売上を増やしたいと思ったその時から収入を増やすということは、そうそうできることではありません。
だから、多くの人が、収入を増やすことより支出を減らすことを優先的に行うのです。これは間違った選択ではありません。むしろ、今すぐできることから手をつけるのは当たり前のことです。
でも、行き当たりばったりで支出を減らしても、大きな節約の効果を得られないでしょう。何らかの指針になるものがなければ、ちょっとした節約もうまくできないものです。
株式会社は節約の見本
節約を行う際、他の家庭を参考にする方も多いでしょうが、それよりも株式会社を見本にした方が良いでしょう。
株式会社は、毎日のようにコストダウンのための努力をしています。いわば、節約のプロ集団なわけです。なのに多くの人が家計の節約に株式会社を参考にしようとしません。
ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは、「家計株式会社のススメ」という本を書いています。その名の通り、家計を株式会社に見たててライフプランを構築していくといった内容になっています。
株式会社では当たり前のように行っていることを一般家庭では行っていないことが多く、それが家計の無駄につながっています。その代表が家計簿です。
家計簿をつけている人はたくさんいます。でも、ただつけているだけでは、日記やメモと同じです。家計経営の変化や改善にはつながりません。
一方、企業には経理というセクションがあり、日々のお金の動きを記録しています。数字の重みは、家計とは全然違います。
企業の場合、月次決算、四半期決算、半期決算、通期決算と、細かい期間で決算を行います。経営計画を実現するために予算がつくられ、その予算が実際に実行できているかどうか確認するための作業が「決算」です。
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ここで重要なのは決算という言葉です。
会社と家計で異なっているのは、この決算の部分でしょう。多くの家庭では、家計簿をつけても実際の支出と予算との比較が行われることはほとんどありません。予算通りの行動をできたか、できなかったのなら、なぜできなかったのかを分析しなければ、家計簿をつけても無駄に時間を使うだけです。
それなら、まったく家計簿はつけず冷蔵庫を家計簿代わりに使った方が良いでしょう。
家計経営の5つのポイント
藤川さんは、家計を株式会社に見たてる家計経営において、以下の5つのポイントが重要だと述べています。
- 家計経営者同士の努力
- 経営計画を持つ
- 相見積もりを取る
- 決断と実行
- 節約より固定費から
1.家計経営者同士の努力
家計の管理は奥さんに一任しているという男性は多いはず。しかし、家計経営をうまく行うためには、自分も経営者の一人だという自覚が必要です。
独身なら、どんぶり勘定でも問題ないでしょう。でも、結婚すれば夫婦で財産を管理していかなければなりません。共同経営者が、家計のことを何もわかっていなければ、破たんは時間の問題です。夫婦どちらに家計の運営方針を質問されても回答できるようにすることで、財務基盤の安定した家計経営を実現できるのです。
2.経営計画を持つ
株式会社であれば、短期の経営計画、中期の経営計画、長期の経営計画を持っています。家計経営でも同じように経営計画を作成することが大切です。
経営計画と言っても、それほど難しいことではありません。子供が小学校や中学校に入学するときにいくらのお金が必要になるか、10年後に住宅を購入するのなら頭金をどれだけ用意しておくか、3年に1回の頻度で家族旅行に行くのなら、それに向けてお金を積み立てておく必要もあるでしょう。
そういった将来の支出をイベントごとに時系列でチラシの裏などの紙に書きだすだけで、家計経営の立派な経営計画ができあがります。
3.相見積もりを取る
株式会社であれば、設備投資の際に1ヶ所の取引先しか検討しないということはありません。複数の取引先に見積もりをとり、その中から最も有利な条件を提示したところと契約をします。
家計経営でも同じです。例えば、自動車を購入するなら、複数のディーラーに条件を出してもらい、最も条件の良いところで購入するのです。
高額な買い物になればなるほど相見積もりを取ることが重要となります。スーパーで3割引きの食品を買うよりも、1割安く自動車を購入した方が、大きな節約になることを理解しましょう。
4.決断と実行
企業経営は躊躇しているとチャンスを逃し大きな損失となることがあります。
家計経営でも同じように決断すべき時は決断し、実行すべき時は実行すべきです。完璧を目指さす80%の精度でいいから、素早く決断しましょう。そうやって何度も決断と実行を繰り返していけば、やがて良い決断ができるようになっていきます。
5.節約より固定費から
僕が、家計経営で最も重要だと思うのが固定費の削減です。
固定費は毎月必ず発生する費用なので、これを無くすか減らすかできれば、家計は大いに改善します。しかも、固定費の多くは、それを削減したからと言って、生活レベルに大きな影響を及ぼすことが少ないです。
例えば、住宅ローンを借り替えて今よりも金利を安くする、保険を見直して特約を削るといった行為は、現在の生活レベルを一切落とすことなく実行できます。ただ手続きが面倒なだけです。でも、面倒だからと言って、固定費の見直しを後回しにし、小遣いを減らすことを優先すると毎日の生活が息苦しくなります。
企業の場合、固定費を削れば損益分岐点を下げることができます。損益分岐点が下がるということは、今よりも売上が減っても、変動費率を変えずに利益を出せる体質になるということです。
家計簿から無駄な固定費を見つけ出す。そして、すぐに削減の決断をし実行する。
最初にそれをやってしまえば、家計経営が早い時期に軌道に乗り始めるはずです。
- 作者:藤川 太
- 発売日: 2011/05/20
- メディア: 新書