突然ですが、あなたは生命保険に入っていますか?
日本人は保険が大好きですから、多くの人が生命保険に入っていると思います。生命保険に加入するとき、保険会社が提示するいくつかのパッケージ商品の中から選んだという方は多いはず。僕も、生命保険に加入していますが、そのような保険の選び方をしました。
しかし、この生命保険の加入の仕方は、多くの場合、損するだけなのでやめた方がいいですね。特に終身保険を買うメリットは、大多数の人にとってないと言ってもいいでしょう。
終身保険は110歳以上生きる自信がある人が入るもの
(株)メディカル保険サービスの取締役の後田亨さんは、終身保険を売る保険会社の実態を著書の「生命保険の『罠』」で明らかにしています。
保険料の支払いは60歳までで保障は一生涯にわたって継続するという生命保険のCMをご覧になったことはないですか?生命保険のCMは頻繁に流れているので、テレビを見る習慣がある人なら、おそらく見たことがあるはずです。
保険料の支払いが60歳までなので、定年退職するまでは保険料の支払いが必要だけど、年金暮らしになれば1円も保険料を払わなくて死ぬまで保障されるのだから、こんなに加入者にとってありがたい保険はないと思った方。それは、完全な誤りです。むしろ、60歳までに保険料の払い込みが完了する終身保険に加入して得する人は、ほとんどいません。
「60歳から、保障はそのままで保険料がゼロになります」というコピーにいたっては、もはや悪い冗談かという域に達しています。
買い物をして、支払をカートで1回払いにしたら、「このお買い物の2回目からの引き落としはゼロになります」と言われているようなものです。(32ページ)
終身保険の場合、加入者が死ぬまで保障するわけですから、加入者が亡くなるまで保険料を払い続けることになります。すなわち、60歳までしか保険料を払わなくていい終身保険は、60歳以降加入者が亡くなるまでの期間に発生する保険料も60歳までに前払いで保険会社がもらっているということなのです。
では、60歳以降の保障期間は何年と予測して保険料を決定しているのでしょうか?
なんと、男性なら106歳、女性なら109歳まで生きることを前提に保険料を前払いさせている保険会社があるというのですから驚きです。日本人の平均寿命は2014年現在でも90歳に達していないのにそれをはるかに超える109歳まで生きることを前提に保険料を試算していたんですね。
60歳までにそれ以降の約50年分の保険料を前払いしておく。
これが終身保険の実態です。
死亡保障は定期保険で十分
そもそも生命保険の死亡保障が一生涯続かなければならないのでしょうか?
死亡保障は、加入者が亡くなった時に遺族に保険金が支払われます。加入者は、きっと自分が不慮の事故などで亡くなった後、残された家族の収入が断たれると困るから死亡時に数千万円の保険金が家族に支払われるようにしたいと思って契約をしているはずです。
特に幼い子供がいる家庭では、子供が成人して自立するまでの生活費を確保することを目的として死亡保障を付けるでしょうから、子供が大学、長くても大学院を出るまでの生活費を保険金で補えれば十分です。そう考えると、死亡保障は、子供が自立するまでの期間限定で加入すれば問題ないわけです。
「生命保険の『罠』」では、33歳から60歳までの定期保険の例が紹介されています。その間に加入者が亡くなった場合、4,860万円の保険金が支払われます。保険期間が27年なので1年につき180万円の保険金ということになりますね。
60歳になれば、子供も自立しているでしょうから、それ以降の死亡保障は必要ありません。だから60歳を過ぎたら1円も払い込んだ保険料は返ってきません。つまり、33歳から60歳までの定期保険は掛け捨てということですね。
掛け捨てなんてもったいないと思うかもしれませんが、その分毎月の保険料が安くなりますし、また、子供が自立するまでの保障という目的も達成しているので、今まで払い込んだ保険料がもったいないということはありません。むしろ、この定期保険でも死亡保障が多すぎるくらいです。
子供の成長とともにもらえる保険金が減る収入保障保険
子どもが自立するまでの保障という目的なら、死亡保障は子供の成長とともにもらえる保険金が減っていく収入保障保険にした方が、毎月の保険料が安くなります。
上の例でいうと、収入保障保険は、加入者が亡くなった場合、毎年180万円の保険金が支払われます。33歳で亡くなれば27年間、毎年180万円の保険金が支払われるので、合計4,860万円の保険金を遺族は受け取れます。しかし、50歳で亡くなった場合には、残り10年分の1,800万円しか保険金を受け取れません。
でも、ほとんどの人の場合、この収入保障保険で十分です。「生命保険の『罠』」で、この収入保障保険に加入した方の話が載っていますので紹介しておきます。
「公的遺族年金」ももらえるから、生命保険で年収180万が確保されれば、飢え死にはないですよ(笑)。カミさんだってパートくらいはできるでしょ?子供にかかりっきりでもなくなるわけで、心配したらきりがないですよ
(中略)
『必要保障額』の計算?だから、今言ったことが私の計算ですよ。元々、60までに死ぬ確率は10%よりずっと低いと思っていますからね。一般的なデータでは10%かもしれないけど、それは保険に入れる健康な人だけ選んで出した数字じゃないでしょ?
(173ページ)
このように保険に加入する目的がはっきりとしていれば、無駄な特約はバッサバッサと切り捨てることができます。
「自分が死んでも家族が路頭に迷わないように準備する」
生命保険に加入する人の目的は、多くの場合、これでしょう。だったら、保障額が変わらない定期保険に入る必要はないでしょうし、終身保険なんて選択肢にさえ入れる必要はありません。
ちなみに上で紹介した方の月々の保険料は、他の保障も加えてわずか6,872円だそうです。目的を絞り込めば、月々の保険料はここまで下げることができ、しかも不安になることはないのです。
- 作者:後田 亨
- 発売日: 2007/11/21
- メディア: 新書