ウェブ1丁目図書館

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ライフスタイルの変化に合わせて生命保険の保障を見直す

日本人の生命保険好きは有名な話で、就職すればとりあえず生命保険を買うという人が結構多いです。

同期入社の誰かが生命保険を買ったと聞くと、「それなら自分も保険を買っておくか」という軽い気持ちで生命保険に加入する人もいると思います。また、職場に保険会社の人がよくやって来るので、話の流れで生命保険を買った経験がある人もいるのではないでしょうか。

生命保険は、万が一の備えですから、無いよりもあった方が良いです。しかし、人によって家族構成や収入に差がありますから、「この生命保険を買っておけば、いかなる場合にも対応できる」ということはないはずです。

真っ先に検討すべきは就業不能保険

生命保険と聞いてすぐに思い浮かべるのは、死亡保障ではないでしょうか。

死亡保障は被保険者が亡くなった時に受取人に保険金が支払われる保険です。独身者なら、自分の死後に財産を残す必要はないから死亡保障は必要ないと考え生命保険を買わないという選択もありです。

ライフネット生命保険株式会社の代表取締役会長兼CEOの出口治明さんは、著書の「生命保険との付き合い方」の中で、一人暮らしの人は「就業不能保険」を真っ先に検討する必要があると述べています。

次に一人暮らしの人にとって最大のリスクは何か、ということを考えてみましょう。
それは難病や事故などにあって、長期にわたって働けなくなることです。主治医から「働いたら体を壊すから、しばらく働くのを止めて養生しないとダメだよ」といわれた場合が、実は一人暮らしの人の最大のリスクであって、本人も一番辛いのです。
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一人暮らしの人が仕事をできなくなると、収入が断たれます。療養中に一定額の給料が支給される会社もありますが、個人事業主だと働けない期間は無収入となってしまいます。そのリスクに備えるのが、就業不能保険で、再び働けるようになるまで毎月一定の金額が支払われます。療養中に必要な金額がいくらかは、その人によって異なりますが、衣食住が賄える程度の就業不能保険を買えば働けない期間の生活費を捻出できるでしょう。

単身者に医療保険は必要か

一人暮らしの人が病気や怪我で仕事を一定期間休まなければならなくなった場合に備えて、就業不能保険の他に医療保険も買っておく必要があるでしょうか。

医療保険については、人によって捉え方が異なってきます。不要だという考え方のファイナンシャル・プランナーは、支払った保険料と比較して受け取れる保険金が少ないので大したメリットがないと言います。確かにその通りで、入院日額5千円を受け取れる特約を付けた場合の保険料が年額で2万円や3万円もするのなら、その保険料を貯蓄に回しておく方がメリットがあります。保険料は払うと入院するまで返ってきませんし、入院しても数日だけの入院なら2万円や3万円の保険金しか受け取れませんからね。

ただ出口さんは、医療保険も買っておくのが無難だと考えています。

入院給付金は差額ベッド代のように、公的医療保険ではカバーされない支出に充当するものです。日本の差額ベッド代の平均は約六〇〇〇円ですから、入院日額は五〇〇〇円から一万円の間に設定しておけば、通常の入院に備えるには十分でしょう。手術給付金は入院日額の一〇~四〇倍程度と入院給付金と連動している商品がほとんどです。ですから、手術給付金の必要目安額については特に考慮しなくてもいいでしょう。
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入院経験がある方ならご存知かもしれませんが、公的医療保険でカバーできる病室に入院できるとは限りません。部屋が空いていないので、やむを得ず差額ベッド代を負担しなければならない病室を利用せざるを得ないこともあります。

結婚している場合の生命保険を考える

次に結婚している人の生命保険を考えてみましょう。

出口さんによると、まず、共働きで子供がいない夫婦であれば、一人暮らしの場合と同じように2人ともに就業不能保険と医療保険をベースに生命保険を考えるのがおすすめとのこと。片方が働けなくなり、相方がケアをしなければならなくなった場合、ダブルインカムが一瞬にして無収入になるリスクがありますから、それに備える必要があります。

次に夫婦のどちらかだけが働いている場合です。この場合は、働き手が亡くなった場合に備えて死亡保険を買っておきます。保障額は手取り年収の2年分から3年分の金額で事足りるとのこと。しかし、子供がいる場合には、これだけでは足りません。子供の教育費を担保するためには2千万円から3千万円の保障が必要となります。

死亡保障に関しては、残されたパートナーが一生働く意思がないのなら、5千万円から1億円は掛けておかなければなりません。でも、パートナーに働く意思があれば、そんなに保障額を高く設定する必要はなく、必要保障額を試算すると1,800万円になるようです。

最後に一人で子供を育てている家庭での生命保険ですが、この場合は、就業不能保険と死亡保険の組み合わせが何よりも優先されます。仕事ができなくなった時の収入を担保するのはもちろんの事、万が一、自分が死亡した時の子供の教育費を確保することを考えなければなりません。


このように生命保険は、保険会社が用意したパッケージ商品を買うのではなく、ライフスタイルの変化に合わせて保障を変えていく買い方の方が合理的です。働き始めた時は、就業不能保障、結婚したら死亡保障、子供ができたら教育費の確保のために死亡保障を上乗せするといったようにその都度保障内容を見直さなければなりませんね。

生命保険とのつき合い方 (岩波新書)

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