ウェブ1丁目図書館

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生命保険は死亡保障だけで良い

自分が万が一死亡した時、家族が生活できるようにいくらかのお金を残しておきたい。

このような理由から貯蓄に励む人は多いことでしょう。しかし、十分な貯蓄ができる前に死亡することだってあり得ますから、貯蓄だけで家族の生活費を担保するのは難しいです。そこで、生命保険への加入を検討することになります。

自分が突然死亡しても、家族が3,000万円の保険金を受け取れる死亡保障を買っておけば、1年後に死亡した場合も10年後に死亡した場合も、3,000万円の保険金が家族に支払われます。きっと、多くの人は、このような死亡保障があれば十分でしょう。

しかし、生命保険に加入している人は、上のような死亡保障だけでなく、複数の特約も付けているので保険料が非常に高くなっているはずです。生命保険で必要なのは、死亡保障だけ、それ以外の特約は無視でよろしい。

特約は保険会社の都合で加入させられている

死亡保障だけであれば、毎月の保険料は大した金額になりません。しかし、生命保険に加入している人のほとんどが、様々な特約を付けているので、毎月の保険料が1万円を超えているのではないでしょうか。

特約がいっぱいある方が安心なのはわかりますが、ほとんどの特約はなくても問題ありません。特に医療関係の特約は、健康保険の高額療養費制度があるので不要です。高額療養費制度だけでは不安だという人は、医療関係の特約を付けたくなりますが、ほとんどの場合、その特約のために負担した保険料の元を取ることはできません。

もちろん、どの保険も、保険金が支払われる事由が発生しなければ、保険料は掛け捨てで戻って来ません。しかし、死亡保障であれば、不幸にして被保険者の死亡という事由が発生すれば、支払ってきた保険料をはるかに超える保険金を受け取れます、自動車保険や火災保険などの損害保険も、事故が起これば、保険料を超える保険金を受け取れる可能性が高いです。

しかし、医療保険は、入院するような病気やケガをしたところで、日額5千円程度の保険金の支給です。その入院給付金を受け取るために年間2万円ほどの保険料がかかりますから、1年に4日以上の入院をしなければ元を取れません。だから、入院日額いくらという保障を付けるくらいなら、毎年2万円をタンス預金にしておいた方がましです。

終身保険も無意味です。これは、死ぬまで引き出せない定期預金のようなものです。生前に受け取ることもできますが、その場合は、契約した金額以下の受け取りになります。300万円の終身保険であれば、250万円を受け取れるといった具合に。

生命保険の特約は、このように顧客に大したメリットがないものがほとんどです。だから、死亡保障だけを買えば問題ありませんし、生保も死亡保障だけを売れば良いのです。

しかし、朝日新聞社の保険、銀行、金融庁の担当を経験したことがある柴田秀並さんの著書「生命保険の不都合な真実」では、死亡保障に重点を置いた保険商品の市場は1980年代にすでに飽和状態になっていたとのこと。そんな中、注目されるようになったのが、一時払い養老保険個人年金保険、貯蓄性商品といった財テク商品でした。

高い利回りを約束したツケ

80年代から90年代初めまでの財テク商品は、5%や6%といった高い利回りを保証するものでした。しかし、バブルが崩壊すると、生保の運用益が悪化し、やがて、顧客に保証した5%や6%を超える運用益を出すことができなくなります。この状況を逆ザヤといいます。

逆ザヤになれば生保の利益が圧迫されるのは、誰でもわかります。そして、利子率がいつまでも高水準であるわけがないことも、多くの現代日本人は知っています。しかし、バブル以前は、金融のプロでさえ、気づいていなかったのです。

長期の契約となる貯蓄性の保険商品で、利回りを保証するのはリスクが高いです。それを悟ったのか、2008年のリーマンショックまでは、円建ての変額年金保険が積極的に売られました。変額年金保険は、顧客から一括で支払いを受けた保険料を運用し、満期時に顧客が保険金を受け取る保険です。顧客が受け取れる保険金は、生保の運用次第で変わります。

保険料以上の保険金を受け取れるのか、保険料未満の保険金しか受け取れないのか、どちらになるかは満期までわかりません。つまり、資産運用のリスクは顧客が負担しているのです。中には、元本保証型や最低受取額保証といった変額年金保険もあり、顧客は一定額の年金の受け取りを保証されている商品もあります。

しかし、最低受取額を保証する変額年金保険は、リーマンショック後に販売が下火になります。受取額を保証する商品は、逆ザヤの危険がつきまとうことを考えれば当然と言えます。

外貨建て生命保険は顧客がリスクを負担する

死亡保障の保険商品が飽和し、最低受取額を保証する財テク商品は逆ザヤのリスクがあるとなると、次はどのような保険商品を出してくるのか。

高利回りをうたって、新規契約を獲得するために効果的だったのは、外貨建て生命保険です。

外貨建て生命保険は、顧客が一括で保険料を支払い、その保険料を生保が外貨で運用します。そして、満期時や死亡時に顧客に保険金が支払われますが、その時の為替相場によっては元本割れを起こします。そう、為替リスクは顧客が負担しなければならないのです。

外貨建て生命保険は、保険商品となっていますが、実質的には外貨預金と同じ投資商品でしかありません。

このような保険と呼んでよいのか疑問がある商品が多く販売されているのは、銀行での窓口販売にも理由があります。銀行は、外貨建て生命保険を販売すると、生保から3%~8%の手数料を受け取れる仕組みになっています。1千万円の保険料支払いであれば、30万円~80万円の手数料収入です。実質的に外貨預金と変わらない保険を紹介して、これだけの利ザヤを稼げるのですから、銀行にとってもうまみのある商品であることは言うまでもありません。

しかも、為替リスクは顧客が負担するのですから、生保も銀行も怖いものなしです。クーリングオフをしても、為替変動のリスクは顧客が負担することになっていますから、ひどい商品です。どこが保険なのか。

節税保険は全く節税にならない

さらにひどい保険が節税保険です。

節税保険は、支払保険料の全額を経費とできるので、それだけ法人税が安くなります。例えば、実効税率を30%とした場合、1千万円の保険料を支払えば300万円の節税になります。したがって、実質的な保険料の支払額は700万円になります。

その後、数年で保険を解約すれば、解約返戻金として800万円が戻ってくる条件であれば、顧客企業は差引100万円の現金が手元に残ります。

このような説明を受けた中小企業の社長が、次々に節税保険を買いました。

しかし、節税保険は、実は顧客企業が損する仕組みになっているのですが、節税保険を買った社長は自分が騙されたことに気づいていません。

解約返戻金の800万円は税法上益金となるので、これに30%の税率を乗じた240万円を納税しなければなりません。したがって、解約時に戻ってくるのは560万円になります。だから、700万円の保険料支払いに対して560万円しか戻ってこないので、差引140万円の損となるのです。

このような詐欺と言える商品を買った方が悪いのか、売った方が悪いのか。

生保は、顧客の利益を第一とのたまっておきながら、全く顧客の利益にならない保険商品を売っていることにならないか。


冒頭で述べたように生命保険で必要なのは死亡保障だけです。貯蓄性のある保険商品を買うなら、自分で、定期預金、外貨預金、投資信託、株式、債券などで資産運用すれば良いのです。

生保は、様々な保険商品を開発しますが、その多くは生保にとってメリットがあるだけで顧客にはメリットがありません。就業不能保険は評価できますが、それ以外の保障は全て切っても問題なし。

保険に入っていないで病気になっても、「あの時、医療保険に入っておけば」と後悔することはないでしょう。

生命保険の不都合な真実 (光文社新書)

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  • 作者:柴田秀並
  • 発売日: 2019/11/19
  • メディア: 新書