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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

小売業は購買代理業務。天動説原理から地動説原理へ。

仕事とビジネス

現代の我が国の市場が、売り手市場から買い手市場に移行したと言われるようになって久しいですよね。

これからは、顧客第一主義だとか、お客様目線での商売をしなければ生き残れないとか、とにかく、お客さんの立場に立った営業をしなければならないと言われます。これらの言葉の意味を誰もがわかっているのですが、実際に行動に移して結果に結びつけている企業やお店となると、どの程度あるでしょうか?

頻繁に閉店するお店が多い現代では、顧客目線は言うは易し行うは難しと言えそうです。

小売業にとって大事なのは発注力だと語るのは、セブンイレブンを長年取材し続けてきた緒方知行さんです。緒方さんは、著書の「セブン-イレブンの発注力」の中で、小売業は購買代理業務だと語っています。

顧客に代わって商品を仕入れるのが小売業にとっては重要

前掲書で緒方さんは、このように述べています。

お客にかわって、お客の要望・ニーズをしっかりと受け止めながら、プロとして、声なき客のそのご託宣に合致したものを、最適なソースから、最適なタイミングと方法で調達してきて、提供するというのが、「顧客の購買代理」の任なのである。(3~4ページ)

商品を仕入れるに際しては、自分のお店を利用するお客さんの顔が思い浮かぶことが大切だそうです。「この商品なら、きっと××さんが喜ぶに違いない」とか「これは○○さんの好みに合いそう」とか、そういった目線で、仕入れる商品を選ぶのが、小売業の基本であり、購買代理ということになります。


しかし、多くの小売業では、このような視点が失われていると、緒方さんは指摘します。

「それ、よそで売れているの?」とか、「テレビCMはどのくらいの投入をするの?」とか「販促費やリベートは出るの?」とか「仕入れ原価はどれだけ下げられるの?」といった会話が、取引先の営業マンと商品部のバイヤーとの間で交わされるのが、一般的なのである。(4ページ)

この会話の中には、お客さんの顔を想像しながら、購買活動を行っているという視点が見られません。

天動説原理が成り立つのは売り手市場の場合

上記の会話を見ると分かると思いますが、購買担当者の言葉は、全て、売る側の都合を考えた発言となっています。

「他の店で売れているなら自分の店でも売れば儲かるに違いない」とか、「多額の広告宣伝費を使っているのなら何もしなくても売れるに違いない」とか、「たくさん仕入れるんだから安くしてよ」とか、売る側が手間をかけずに儲けることしか考えていないように思います。


そもそもこういった考え方になるのは、まだ売り手市場が継続しているという錯覚があるからなのではないでしょうか?

売り手市場というのは、一言で言うと物不足の時代ということです。これまでの日本経済は、圧倒的に物不足の時代が長く、常に売る側が買う側よりも優位な立場にありました。

しかし、高度成長期を過ぎると、生活に必要な物は、どの家庭でも、ほとんど揃うようになり、買い替え以外に需要はなくなっていると言っても過言ではありません。食べ物にしても、スーパーやコンビニに行けば、弁当だけでなく、様々な惣菜が陳列されています。食材に関しても、野菜でも果物でも魚でも、季節を問わず、欲しい物が手に入る状況となっています。


このような状況では、売り手が上からお客さんに一方的に売りつける天動説原理は通用しません。

物余りの時代になったということは、経済が、売り手市場から買い手市場に移行したことを意味します。だから、売り手も天動説原理から地動説原理に意識を変えていかなければなりません。

買い手市場では発注精度を上げる必要がある

天動説原理は、売り手を中心に世の中は動いているという考え方です。すなわち、売り手の都合の良いように商品を仕入れて陳列しておけば、後はお客さんが勝手にお店に来て必要なものを探して買ってくれるに違いないという考え方です。

ところが買い手市場に移行した現代では、どのお店で何を買うかは、消費者が自由に決めることになります。お客さんに自分の店を選んでもらうためには、商品を押し付けるような陳列では売ることができません。当然、高くて利幅のある商品だけを仕入れるといった売り手の都合を優先した仕入も通用しません。


買い手市場では、消費者から選んでもらうには、どうすれば良いのかといった地動説原理で仕入を考える必要があります。地動説原理での仕入とは、一言で言うと発注精度を上げるということです。

発注精度が低い、つまり発注がいい加減な場合だと、多すぎるか少なすぎるかのどちらかになる。多すぎれば当然のこととして、売れ残りが出る。(中略)
当然値下げしてでも売りさばかなければならないということになるわけで、そこには見切りロスや値下げロスが発生してくることとなる。
生ものは、もっとシビアである、見切って売っても売れ残れば、これはもう廃棄するしかないということで出てくるのが、廃棄ロスである。(142~143ページ)

売り手市場の時代なら、大量仕入で原価を抑え、安売りすれば、誰もが買っていきました。でも、買い手市場の時代では、安いからといって商品を買うとは限りません。今買わなければならないといった差し迫った事情が消費者にないのですから。

だから、売る側は、どれだけのお客さんが商品を買ってくれるのかを予測して仕入れなければなりません。多ければ廃棄ロスがでますし、少なければ、もっと仕入れておけば売れたのにという機会損失が発生します。

こういった損失の発生を少なくするためには、お客さんの顔を思い浮かべながら仕入れることが大事なのでしょう。それが、発注精度を高めることにつながるはずです。

POSデータの利用

しかし、スーパーのように1日にたくさんのお客さんが来店するような小売店の場合、一人一人のお客さんの趣味趣向を理解するのは困難でしょう。

だから、スーパーやコンビニでは、どの商品がどれだけ売れたのかのデータをチェックして購買活動に役立てることになります。その際に活用するのが、POSデータです、POSとは、販売時点管理のことで、商品をレジに通した時点で、商品名や価格が瞬時に記録集計される仕組みのことで、今では、多くの小売店で採用されています。

ただ、POSデータは、売れ筋商品を見極めるために利用するわけではありません。店内の死に筋商品を見つけ出し棚から撤去するために利用するのです。

このようにPOSデータを活用し、地道に死筋商品を排除しながら店内に陳列していない商品を新たに仕入れることを繰り返していくことが、買い手市場の時代で小売業が生き残っていく手段となるはずです。


誰もが、うまく行かなくなってくると、一発逆転を狙うものですが、それはなかなか難しいでしょう。それよりも、毎日の仕事の中で、少しずつ改善を繰り返していく癖をつけておく方が、長い目で見れば、うまく行くのではないでしょうか?

セブン‐イレブンに学ぶ発注力―顧客心理を読む「個店経営」

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