ウェブ1丁目図書館

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消費者ニーズに応え続けると厳しい目を持つ消費者が増える

現代の日本に住んでいてコンビニエンスストアを利用したことがない人は少数派でしょう。

コンビニが、スーパーよりも値段が高めなのに利用者が多いのは、端的に言うと利便性が高いから。取扱商品の単価はそれほど高くなくても、その利便性から多くの消費者がコンビニで買い物をするので、1店舗の平均日販が50万円前後もあります。

チェーンストアでも店ごとに売上に多様性がある

日本国内には、ローソンやファミリーマートなど多数のコンビニがあります。日本国内での最初のコンビニはセブン-イレブンですが、現在も業界最大手としてコンビニ業界をけん引しています。

イトーヨーカ堂の会長兼CEOとしてセブン-イレブンも含めたイトーヨーカドーグループを率いてきた鈴木敏文さんは、小売にとって発注はとても重要な仕事だと考えています。

緒方知行さん編著の「鈴木敏文 考える原則」によれば、鈴木さんは「徹底した個店主義と単品管理がビジネスの盛衰を決める」という信念を持っていたようです。従来のチェーンストアの場合、本部がほとんどのことを決めて、それに各店が従うのが一般的でした。本部が仕入を決定し、本部が店内のレイアウトを決め、本部が決定した価格で売る。これこそがチェーンストアのビジネスモデルの基本とされていたのです。

しかし、地域によって消費者の嗜好は変わりますし、天候によっても消費行動は変化しますから、画一的な方法では消費者の細かい要求に応えることはできません。だから、各店ごとにレイアウトや品ぞろえを決めることが重要になってきます。

単品管理をきちんと実施して、個店の状況に基づいて、仮説を立ててその検証を行っていけば、個店ごとに商品の売れ行きが違うことは明確にわかってくるのです。したがって発注は個店ごとに違って当然です。
そのためには、画一的な仕事の仕方を変え、情報収集を行うこと。個別具体的に踏み込んだ仕事をしていかなければなりません。
(97ページ)

所変われば、消費者の嗜好も変わるのですから、全国すべてのストアを同じように管理していても同じように売上が伸びるわけではありません。だから、地域の消費者の特性に合わせた店づくり、つまり、個店管理が重要になってきます。特にモノがあふれている現代日本では、店ごとの管理だけでなく、陳列する商品1品1品の管理まで徹底しないと消費者に飽きられてしまいます。

仮説を立て検証を繰り返す

多くの小売店では、販売時点管理(POS管理)を実施しています。レジに商品を通すだけで、いつ何が売れたのかのデータが蓄積していき、そのデータを利用して今後何が売れそうかを予測します。

しかし、POSデータは過去情報にすぎませんから、同じ商品が明日も同じ量売れるとは限りません。また、店内に陳列している商品の売れ行きを知ることはできても、陳列していない商品がどれだけ売れるのかを教えてはくれません。

いまのような買い手市場のときには、仮説・検証をベースにしなければ、仕事はできません。データを見て、何が売れ、何が売れないかを確認し、こういう考え方で、このように行動した結果、合っているのか間違っているのかを、データによって検証します。
(中略)
仕事の第一は仮説・検証をすることであり、これからの経営は、仮説・検証がポイントになります。データは仮説を設けて結果を検証する、つまり仮説が正しかったかどうかを見るためにあるのです。
(128ページ)

POSデータを見て、この商品が売れているから発注量を増やすというのもありでしょうが、なぜその商品が売れているかを考えなければなりません。

ビールよりもハイボールが売れているのなら、なぜハイボールが人気なのかを考え、もしかしたらハイボールに似たチューハイも売れるかもしれない、消費者が求めているのはハイボールと同じ価格帯のお酒ではないか、といったように様々な仮説を立てて発注をかけます。そして、実際に店内に陳列し、POSデータを見てその仮説があっていたのかどうかを検証します。

コンビニで扱っている商品は、100円や200円のものばかりですから、1品の粗利は数十円でしかありません。わずか数十円の利益のために仮説と検証を繰り返すのは面倒に感じます。でも、その面倒な作業を愚直に行う人がいたからこそ、コンビニがこれだけ普及したのでしょう。

消費者ニーズに応えるのは疲れる

日本の消費者の要求は年々厳しくなっています。

コーヒーを1杯100円で飲みたい。しかも、レギュラーコーヒーでなければダメ。

自動販売機で缶コーヒーを買っていた消費者まで、最近はコンビニに美味しいコーヒーを100円で飲みたいと要求しています。そして、コンビニは、それに応えレギュラーコーヒーを100円で提供します。しかも、挽きたてを。コーヒー好きには、何ともありがたいことですが、こんな低価格でしっかりと利益が出ているのかと心配してしまいます。

近頃、従業員を低賃金で長時間労働させる企業が社会問題化しています。そういう企業をブラック企業と言うそうですが、ブラック企業として名が上がる企業の多くは消費者と接する機会が多い企業のように思います。

飲食店やアパレルなど、接客が主体になる仕事で過労が問題となり、自殺する従業員も出ています。すると、世間はその企業をブラック企業だと叩きます。しかし、消費者に近い、いわゆるB2Cと呼ばれる業態の企業は、消費者ニーズに応えようとして従業員に無理を強いているのかもしれません。

ブラック企業が問題となるのは、実は、小売店や飲食店に厳しい要求を突き付ける消費者が増えていることも一因ではないでしょうか。

消費者のブラック化が進めばブラック企業も増える。

そろそろ消費者も妥協することを知った方が良いのかもしれません。

鈴木敏文 考える原則 (日経ビジネス人文庫)

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