ウェブ1丁目図書館

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セブンイレブンが重視する機会損失の撲滅はPOSデータの真逆の活用にある

僕がコンビニと聞いてすぐに頭に浮かぶのはセブンイレブンです。

住んでいる地域にセブンイレブンが多いことが理由でもあるのですが、他のコンビニよりも品ぞろえが豊富というイメージがあるので、コンビニと言えばセブンイレブンがすぐに頭に浮かぶんですよね。

でも、よくよく考えてみると、どこのコンビニも店舗の広さは同じようなものです。そうすると、棚に置かれている商品の数も、どこも同じくらいになっているはずです。それなのにセブンイレブンの品ぞろえが豊富と感じるのは、何か工夫があるのでしょう。

で、セブン&アイホールディングスの鈴木敏文さんの著書「商売の創造」を読んでみると、そういうことだったのかと、その答えがわかりました。

小売りにとっての最大のダメージは機会損失

鈴木さんは、コンビニが成功する理由について、いろいろと述べていますが、最重要課題は「機会損失の撲滅」だと主張しています。

機会損失というのは、一言でいうと、「売り切れをなくす」ということです。普通に考えれば、商品が売り切れるということは、販売目標を達成したのだから、喜ばしいことのように思えます。しかし、鈴木さんは、そうではないと言ってるんですね。

例えば、おにぎりを100個発注したとします。そして、当初の予想通り100個のおにぎりは売り切れました。その後で、お客さんがおにぎりを買いに来て、売り切れだと知ったら、そのままお店から出て行ってしまいます。もしも、棚におにぎりがあったら売れたはずなのにその機会を失ってしまったわけですね。これが機会損失です。

おにぎりが棚になくても、お腹が空いているのならパンを買っていけばいいじゃないかと思うでしょうが、今は単品を目当てに買い物をするお客さんが増えているので、そういったことは通用しなくなってきています。

いまは、お客様は自分がほしい単品を目当てに買い物をするようになっています。お目当ての商品が品切れを起こしていれば、他のものはなにも買わずに帰ってしまいます。お客様のニーズに合わないものは代替品としても売れないから、当然、値下げロスや廃棄ロスが増えます。(141ページ)

機会損失が多くなると値下げロスと廃棄ロスも多くなる理由

鈴木さんがいう機会損失が増えると値下げロスや廃棄ロスが増えるというのは、こういうことです。

あるお店が、おにぎり100個とパン100個を陳列していたとしましょう。そして、200人のお客さんが食べ物を求めてお店にやってきました。単純に考えると、1人1個の食品を買っていけば、おにぎりもパンもそれぞれ200個ちょうど売ることができます。ところが、200人のお客さんのうち、150人はおにぎりを買いに50人はパンを買いに来ていたとしたらどうでしょう。

パンを求めに来店した50人全員はパンを買うことができますが、おにぎりを買いたかったお客さんのうち50人は何も買わずに帰っていきます。そうすると、パンが50個売れ残ってしまいます。この売れ残ったパンをどうにかして売ろうと思うと、値下げをしなければなりません。10円値下げをして残り50個が売れたとしたら500円の値下げロスになります。その後、まったく売れなければパン50個分の廃棄ロスが発生します。

もしも、おにぎりを150個、パンを50個発注していれば、おにぎりもパンもちょうど売り切ることができ、値下げロスも廃棄ロスも発生することはなかったでしょう。機会損失が増えると値下げロスと廃棄ロスも増えるというのは、これが理由なんですね。

機会損失を防ぐためにPOSデータを利用する

では、機会損失を防ぐにはどうすれば良いでしょうか?

コンビニに限らずスーパーなどの小売店ではPOS管理を行っています。POSとは販売時点管理のことで、どの商品を誰がどれだけ購入したかを管理できるシステムのことです。レジにバーコードを通せば、売れた商品と個数がデータとして残ります。さらにレジ担当者がお客さんの性別や年代を入力すれば、性別ごとに人気の商品を把握することができますし、若者に人気なのかお年寄りに人気なのかといったこともわかります。

ポイントカードを利用すれば、もっと細かくお客さんの特徴を知ることができますね。

このPOSデータを使って、多くの小売りでは、店内の売れ筋商品を見極め発注をかけています。しかし、鈴木さんはこういったPOSデータの使い方を否定しています。

POSデータからわかるのは、過去の売れ筋であり、将来何が売れるのかといったことを教えてはくれません。しかも、過去の売れ筋がわかるといっても、それは、店内に陳列している商品に限定されるので、他店で何が人気なのかといった情報を示すものではありません。だから、こういった使い方では、機会損失を減らすことはできないんですね。

では、POSデータはどのように使うのが良いのでしょうか?

それは、死筋商品の発見です。お店の棚に陳列している商品のうち、一定期間レジを通らなかった商品を見つけるのにPOSデータを使うのです。レジを通らなかった商品は、売れていない商品なのですから、それは死筋商品です。だから、そういった商品がいつまでも棚を占拠していたのでは、売れ筋商品を陳列できるスペースが狭くなるので、必然的に機会損失が発生しやすくなります。そして、死筋商品を売り切ろうと思うと値下げしないといけなくなりますし、消費期限がある商品だったらタイムアウトになって廃棄する必要もでてくるでしょう。

だから、POSデータを使って死筋商品を見極め、他の商品と入れ替えることが重要なのです。この時、新しく陳列する商品は、POSから導かれた売れ筋商品ではなく、今まで取り扱っていなかった商品にするべきです。どんなに売れ筋だからといっても、その商品が売れる数には限界があります。限界を超えて陳列したところで、売れ残るだけですから、今現在、店内に置かれていない商品を発注する攻めの姿勢が大切です。


冒頭で、セブンイレブンは品ぞろえが豊富だと感じると述べましたが、それは、多くの店舗でこういった手間をかけていることが理由なのでしょうね。コンビニで買い物をする時、死筋商品に見向きもしませんから、それらが少なければ少ないほど品ぞろえが豊富に感じるのでしょう。反対に死筋商品が多いと、棚には何も置かれていないのと同じですから、品ぞろえが少なく感じるのかもしれませんね。

鈴木敏文 商売の創造 (講談社+α文庫)

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  • 発売日: 2006/05/19
  • メディア: 文庫