ウェブ1丁目図書館

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当たり前に疑問を持ったら物理が発展した

世紀の大発見は、それを見つけて間もない頃は、世間から大注目されます。しかし、時が過ぎ、100年も経てば当たり前の概念となり、「そんなこと常識でしょ」と言われるようになります。

常識となっているから、それは大発見だったのですが、その概念が定着してしまうと意識されなくなるのは、何となく悲しいですね。

常識と言えば、地球が丸いことや地球が円運動を描いていることも、現代人なら当たり前に知っていることですが、発見した当初は周囲からバカにされたものです。しかし、これらが正しいとわかると、物理が一気に発展するのですからおもしろいです。

月食から地球が丸いことを発見

現在では、地球が丸いことは人工衛星で確かめることができます。きっと、多くの人が丸い地球の写真を見たことがあることでしょう。

地球が丸いことは、人工衛星がなかった時代からわかっていました。代々木ゼミナール物理講師の為近和彦さんの著書「高校生が感動した物理の授業」によれば、最初に地球が丸いことを発見したのは、アリストテレスだそうです。アリストテレスは紀元前の人なので、今から2000年以上前に地球が丸いことに気づいていたことになります。

人工衛星がなかった時代にアリストテレスは、いったいどうやって地球が丸いことに気付いたのでしょうか。

彼は、月食は、地球の影が月に映ったものだと考えました。月食の時、陰になっている部分の縁は直線ではなく弧を描いています。それはつまり、地球が球形をしているから、月が丸くかけて見えるのだと指摘したのです。

今では、月食は地球の影が月に映ったものだとわかっています。しかし、アリストテレスが初めて球形の地球の影が月に写っているのだと唱えた時、きっと多くの人が、「何を言っているんだ」という反応をしたことでしょう。

地球の公転も紀元前に気づいていた人がいる

地球は太陽の周りをまわっています。これを公転と言い、今では常識となっています。

地球が公転していると最初に唱えたのも、紀元前の人物でした。その人物は、アリスタルコスです。

アリスタルコスは、月が半月になった時に月、地上(地球)、太陽を線で結ぶ三角形を紙に描きました。月が半月の場合、太陽、半月、地球の角度は直角となりますから、描くべき三角形は直角三角形になります。

そして、次に太陽、地上、半月の角度を測ります。この角度は、直角よりも小さい角度になりました。

ここで、アリスタルコスは、月と地球の距離よりも、太陽と地球の距離の方が長いことに気づきます。それなのに地球から見る月も太陽も同じ大きさに見えます。そうすると、太陽は月よりも大きいはずだとわかります。さらに太陽は地球よりもはるかに大きいこともつきとめました。

この時代は、太陽が地球の周りをまわっているとする天動説が当たり前でした。しかし、アリスタルコスは、地球よりもはるかに大きな太陽が地球の周りをまわっているのは不自然だと言い、地球が太陽の周りをまわっているとする地動説を唱えたのです。

なぜ月は浮いているのか

リンゴを手から離すと地面に落ちます。

なぜリンゴは落ちるのか、それは万有引力(重力)が働いているからです。そう唱えたのはニュートンでした。

リンゴは、1階の窓から手を離しても、10階の窓から手を離しても地面に落ちていきます。そうすると、どんなに高い所でも、リンゴから手を離せば地面に向かって落ちていくはずです。ところが、月は地球に落下してきません。

かのアリストテレスは、「地上界は直線運動(落下運動)、天上界は円運動で、その境目は月である」と言ったそうです。

そこで、ニュートンは、境目について考えたのですが、どうしても思いつきませんでした。そして、地上界と天上界に境目はなく、月もまた地球に向かって落ちてきているんだと考えました。

月が地球に落ちてきているということは、月は地球に引っ張られていることになります。もしも、月が地球に引っ張られていないのであれば、月は直進して地球から離れていくはずです。しかし、月は常に地球と一定の距離を保っていますから、月は地球から離れて行ってはいません。


「これはつまり、動いている月を地球が引っ張っているから、月は円運動をしているのだ」とニュートンは考えたのです。


リードを付けている犬は、飼い主にリードを持たれている限り、どんなに走っても飼い主から遠ざかることはありません。なぜなら、飼い主がリードを引っ張っているからです。もしも、飼い主がリードを引っ張るのを止めれば、犬は公園中を走り回るでしょう。月も同じで、地球が見えない糸で引っ張っているから遠くに行くことができず、地球の周りをまわっているのです。この見えない糸が万有引力なのです。


物理は、ある仮説が証明されることで発達してきました。力学も、熱力学も、波動学も。そして、仮説を立てた人は、従来の常識を疑い、当たり前とされていることに疑問を持ちました。大発見の可能性は、実は、日常生活の「当り前」の中に潜んでいるのかもしれませんね。

「高校生が感動した物理の授業」は、微分積分を知っていることを前提に書かれています。そのため、物理に興味があるけど、数学が苦手だという方は、別の優しく解説された物理の本を先に読んだ方が良いでしょう。

高校生が感動した物理の授業 (PHP新書)

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