ウェブ1丁目図書館

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円周率の発見を知れば数学が身近な道具だと気付く

高等学校の数学で習う微分積分

曲線のグラフが出てきたり、「f'(x)=」で始まる計算式が出てきたり、多くの高校生を挫折に追い込むのが微分積分だと言っても過言ではないでしょう。それ以前に高校1年生の時に数学の難解さに着いて行けず、微分積分を選択しなかった人もたくさんいると思います。

「こんなことを勉強して、将来、仕事に役立つとは思えない」

最後は、この言葉を口にして数学の世界から立ち去って行きます。

長方形の土地と円形の土地の面積

微分積分が、もっと生活に身近なものであれば学習意欲がわいてきた人は多いかもしれません。

現在は、学校で数式を覚えたり、グラフを書いたりするだけなので、微分積分が日常生活にどうかかわっているのか、想像できないのは仕方ないでしょう。でも、昔の人にとっては、微分積分が発明されたことで仕事が楽になったのではないかと思われます。

代々木ゼミナール数学科講師の山本俊郎さんの著書「高校生が感動した微分積分の授業」を読むと、そのことがよくわかります。

例えば、今、長方形の土地と円形の土地があったとしましょう。そして、両者の面積は同じだとします。

もしも、長方形の土地の所有者が、円形の土地の所有者に「両方の土地の面積は同じだから交換しよう」と言った場合、それをどうやって証明すれば良いでしょうか?

数学が発達していなかった時代だと、定規とコンパスを使って測量するしかなかったはずです。しかし、定規とコンパスがあっても、どうやって測量すれば良いのかわかりませんよね。

でも、首をひねりながら、うんうんと考え続けていれば良い方法が思いつくものです。例えば、円形の土地をバースデーケーキに見たてます。バースデーケーキをきれいに6等分や8等分すれば、ショートケーキになりますよね。

仮に8等分したとします。この8等分されたショートケーキを互い違いにして横に並べていくと、どうなるか想像してみてください。

上と下の部分は流線形になっているでしょうが、長方形に近い形になっていませんか?さらに16等分したら、上下の流線形が目立たない長方形を作れそうです。もっと細かく32等分して互い違いに横に並べれば、パッと見た感じだと長方形にしか見えないでしょう。

こうやって、土地の面積も同じように円形の土地を細分化して、互い違いに並べる発想を使えば、長方形の土地の面積と同じかどうかを調べることができそうです。円形の土地をもっと細かく96等分くらいにすれば、長方形と円形の土地の面積が同じかどうかをより正確に調べることができるでしょう。

円周率πをどうやって調べたのか

現在は、小学校の算数で、円の面積の求め方を習うので、上記のような面倒なことをしなくても、長方形の土地の面積と円形の土地の面積を簡単に計算できます。

円の面積は以下の計算式で求めることができますよね。


πr²=半径×半径×3.14=円の面積


我々は、すでに円周率πを知っているので、円周率が円周を直径で割った値である3.14だとわかります。

しかし、昔の人は円周率が3.14だとわかりませんから、円の面積を測ろうと思ったら、いくつもショートケーキを作って、それぞれの三角形の面積を計算し、そして合計して円の面積を求めていたのかもしれませんね。

でも、毎日、こんなことをやっていたのでは、仕事がはかどらなかったでしょう。

もっと、簡単に円の面積を計算する方法はないものか。そのような人々の期待に応えたのかどうか知りませんが、アルキメデスが円周率を初めて計算しました。

アルキメデスは、どうやって円周率πを計算したのか?

彼が採った方法は、円に内接する正多角形と円に外接する正多角形を書く方法でした。

アルキメデスによる円周率πの計算方法は、正6角形➡正12角形➡・・・・・・正96角形を作り、次第に円に近づけていくという方法でした。
(17ページ)

正96角形ともなると、見た目はかなり円に近づいています。

アルキメデスは、円に内接する正96角形の周の長さを求め、これを円の直径で割ってみました。すると、その値は3.1408でした。

同じように円に外接する正96角形の周の長さを求め、これを直径で割ってみると、3.1428でした。

ここから、アルキメデスは、以下の関係が成り立つことを確認したのです。


内接する正96角形の周の長さ<円周<外接する正96角形の周の長さ


そして、円周率πも以下のようになると結論付けます。


3.1408<円周率π<3.1428


ざっくりと円周率を3.14としておけば、円の半径を測るだけでその円の円周を計算できますし、面積も計算可能となりました。

これは画期的な発明だったに違いありません。長方形の土地と円形の土地を交換する場合にわざわざ円形の土地を測量する手間が省けたわけですからね。


数学は、何かを簡単に計算するための道具として役立っていますが、その発達過程を知ると、非常に泥臭い作業をして導き出した知恵だということがわかります。そして、数学は、手で編んでいたセーターやマフラーを機械で編むようになったのと同じように人々の生活を楽にしたはずです。

本書では、この後、微分積分の解説に入っていきますが、この円周率の話が最初に述べられていることで、より微分積分が理解しやすくなっていますね。でも、やっぱり、微分積分は難しいです。