ウェブ1丁目図書館

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パンゲアの崩壊と哺乳類の進化

現在、地球上を支配している生物は人間です。

科学技術を身に着けた人間は、自分よりも大きな生物に立ち向かうことができますし、目に見えない小さな細菌やウィルスとも戦うことができます。

人間は、イヌやネコと同じ哺乳類です。なぜ、人間が地球上を支配できるようになったかを知るためには、まず哺乳類がどうやって進化し続けてきたのかを探る必要があるでしょう。哺乳類の進化がなければ人間が誕生することはなかったでしょうからね。

恐竜の絶滅こそが哺乳類の夜明け

地球上には、様々な種類の哺乳類が棲んでいますが、今から2億年前のジュラ紀には恐竜が地球上を支配していました。

しかし、白亜紀末に地球上から恐竜は姿を消します。巨大隕石が地球に衝突したことが、その原因だと言われています。恐竜たちにとって巨大隕石の衝突は不運でしたが、哺乳類にとっては神が救いの手を差し伸べたと言えるでしょう。これまで、恐竜たちの食料であった哺乳類は、天敵がいなくなったことで、お日様の下を歩けるようになったのですから。

生物学者のリチャード・フォーティさんの著書「生命40億年全史 下巻」では、恐竜の絶滅から人類の進化まで時系列で解説されています。恐竜の絶滅は、哺乳類を食べられる恐怖から解放しただけでなく、多くの食べ物を与えてくれました。

陸生の恐竜が絶滅した時点で、それらが占めていたニッチ(生態的地位)はすべて空いた状態となった。それまで長らく食物連鎖の頂点を占めていたのが恐竜である。第三紀のいちばん最初の時代にあたる暁新世はユニークな時代だった。なにしろでっぷり太ったバッタやおいしいイモムシだけでなく、あらゆる種類のごちそうが食べ放題の状態で放置されていたのである。
(196ページ)

それまでは、恐竜の監視下にあった哺乳類でしたが、彼らがいなくなったことで自由に食べ物漁りができるようになりました。

哺乳類が何を食べていたのかを知る手掛かりとなるのは、歯の化石です。哺乳類の歯には、咬頭(こうとう)という突起があります。咬頭はその哺乳類の特性に適した発達をすることから、古生物学者は歯の化石を見ただけで、そこから様々な情報を見つけることができるそうです。

大陸の分裂が哺乳類の多様性をもたらした

現在、地球上には複数の大陸がありますが、昔は大陸は一つの塊でした。この一つの塊である超大陸パンゲアといいます。

パンゲアが現存していないことから、ある時、パンゲアは複数の大陸に分かれたのだとわかります。大陸が分断された時、地割れに落ちて死んだ哺乳類もいたかもしれません。しかし、巨大大陸の分裂は、哺乳類の多様化を促進しました。

移動を開始した個々の大陸に乗船していた動植物は、それぞれ隔離されたことで独自に進化する道を歩むことになった。自然界はそのおかげで五倍から六倍もの種数を抱えられるようになった(最終的には種よりも上のレベルでの多様性も増えた)のだから、われわれはこのことに感謝すべきだろう。分離は多様化をもたらすのだ。マダガスカルにあんなにもたくさんの種類のキツネザル類(原猿類)がいるのも、オーストラリアに土着のネコ類がいないのも、南アフリカのリャマが北アメリカのブロングホーンと似ていないことも、すべてそれで説明がつく。
(207~208ページ)

棲む大陸が違えば、動物にとって可能な生活様式は限られてきます。また、同じ大陸に棲む動物は、例え種が違っていても、似たような生活様式を選択することがあるでしょう。

パンゲアの崩壊は、哺乳類にとって嘆くべき出来事ではなく、分割されたそれぞれの大陸でさらなる進化を遂げていく時代の幕開けだったのです。現在、世界中に多くの哺乳類が生息しているのは、分割された大陸で独自の進化を遂げてきたからなのです。

人類は肉食で進化した

分割された大陸で進化した哺乳類には、我々人間の祖先もいました。人類はアフリカで誕生したとされていますが、今では世界中に拡散し、地球上を支配しています。

地球上を支配するまでに人間を進化させたものは、いったい何だったのでしょうか。

農耕の開始で安定的に食料を確保できるようになったことが人類の栄華に貢献したことを考えると、穀物や野菜を食べ始めたことが我々の頭脳を賢くしたように思いがちです。しかし、人類が農耕を開始したのは約1万年前でしかありません。

1985年に見つかったホモ・エレクトゥスの化石から、彼が170万年前に生きていたと推定されています。なお、エレクトゥスは我々の祖先とされています。アウストラロピテクスの身長が、雄と雌で2倍の差があったのに対し、エレクトゥスは雌雄の身長差が25%しかありません。

身長の差が小さいということは、単にチークダンスをするのに都合がよいだけでなく、社会性が類人猿のそれとは大きく異なっていることを教えている。ホモ・エレクトゥスは、性的平等へと大きく踏み出していたのかもしれない。
(269~270ページ)

エレクトゥスは、人類が農耕を始める遥か前から現代人にも見られる社会性を有していたのです。

彼らは石器を作成していましたが、それらからは狩りと死肉あさりが食料調達の方法としてすでに重要になっていたことがわかります。そう、エレクトゥスは肉食で進化を遂げたのです。

ベジタリアンの友人がなんと言おうと、人類の歴史においては、早い時期から肉食が重要な位置を占めていたことは疑いの余地がない(むろん、根、葉、木の実なども食べていた)。肉は栄養価が高く、栄養がよければ、創造的な活動を行なう暇な時間もできるというものだ。ほぼ同時代からたき火の跡も見つかることから、火を手なずけていたこともわかる。
(271ページ)

つまり、人間は農耕を開始して賢くなったのではなく、肉食によって賢くなったのです。もしも、人類が肉食を始めなければ脳が発達せず、農耕を開始することもなかったでしょうし、現代の科学文明を築き上げることもできなかったでしょう。

科学の世界は金と地位が重要

ここからは余談です。

科学者は真理の探究を目的として、日々研究をしていると一般人は思っています。ところが、リチャードさんによると科学の学会とはそういうものではないそうです。

たいがいのふつうの科学者に言わせれば、学会は危険と欲求不満に満ちた場所であり、営業会議に負けず劣らず攻撃的な環境である。学会の長い長いはしごでは、昇進などはほとんどない。勇み足でもしようものなら、抜け目のないライバルがすかさず揚げ足をとる。たまたま順位のトップに君臨し、研究助成金を握り、就職用の推薦状を書くことで、影響力を行使している一握りの科学者のなかの一人の独創的な研究を承認するという決まりはある。
(166ページ)

医学論文に改ざんや捏造があると、一般的な感覚ではひどいことをするものだとなります。しかし、科学の世界では珍しいことではないのでしょう。

ただ、改ざんや捏造が明るみになっていることをみると、科学の世界では、そのようなことを許さない自浄作用が働いているのだと思います。その自浄作用は嫉妬や妬みからくる揚げ足取りであり、外からは見苦しく見えますが、実は真理の探究に一役買っているのかもしれません。