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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

人間万事塞翁が馬。組織の結果が個人の成長につながる。

スポーツ

人間万事塞翁が馬

人は、どのようなことが幸いとなり、どのようなことが災いになるかわからないという意味です。ラッキーと思ったことがアンラッキーになったり、ついてないなと感じたことが思いがけない幸福をもたらしたり、人生は何が幸不幸を決めるかわかりません。

この言葉を座右の銘にしているのが、元プロ野球選手の松井秀喜さんです。

過去は変えられない

松井さんの著書「不動心」では、「人間万事塞翁が馬」という言葉が頻繁に出てきます。松井さんは子供の頃から、お父様によくこの言葉を言われていたそうです。

松井さんが読売ジャイアンツに所属していた1998年のシーズン。それまで2年連続で1本差でホームラン王を逃していた松井さんは、今年こそはという思いを抱いていました。しかし、松井さんは春季キャンプで左膝を痛めてしまいます。

プロ野球選手にとって膝の故障は、下手をすると選手生命に関わります。選択肢は手術か周囲の筋肉などを鍛えるかのどちらか。

松井さんが選んだのは後者でした。それまで持病がなかった松井さんでしたが、左膝の怪我によって持病と付き合っていくことになります。でも、持病とうまく付き合うことを選んだ松井さんは、その年に念願のホームラン王を獲得。おまけに打点王にもなり二冠を達成したのでした。

左膝の怪我は不幸なことです。しかし、それとうまく付き合おうと決心したことでホームラン王になれたのですから、何が幸いするかわかりません。まさに人間万事塞翁が馬ですね。変えることができない過去。それを受け入れて気持ちを未来志向に切り替えなければ、きっと松井さんはホームラン王のタイトルを獲得できなかったでしょう。

未来はコントロールできる

人間万事塞翁が馬

捉え方によっては、行き当たりばったり、できないことは仕方ないという諦めのような言葉に感じます。しかし、松井さんは人生を達観して諦めていたわけではありません。

人間万事塞翁が馬」を心の支えにしている僕ですが、何もかも達観しているわけではありません。何が起こっても仕方がないと、あきらめているわけではありません。「過去」は決して悔やまぬよう心掛けますが、「未来」は違います。未来に対しては、自分に厳しくありたいと考えています。過去はともかく、未来は自分でコントロールできるのですから。
(85ページ)

起こってしまったことはどうしようもありません。でも、未来は自分の努力でコントロールが可能です。

松井さんのお父様は、「努力できることが才能である」とも、よくおっしゃっていたそうです。

素人から見ると、松井さんは野球の才能にあふれた人のように見えます。ところが、松井さん自身は、自分を才能のある人間だとは思っていませんでした。むしろ、努力しなければ人並みにもなれないタイプだと思っていたそうです。

だから、「努力できることが才能である」という言葉をお父様からもらった松井さんは、試合に負けて、打てずに悔しいとき、素振りをしながら、紙に書いたこの言葉を見ながら素振りに励んでいました。きっと、過去は変えられないけども、努力によって未来はコントロールできるという信念が、松井さんにはあったのでしょう。

チームの勝利が最優先

松井さんは、ホームラン王や打点王などの個人タイトルを獲得していますが、プレイスタイルは常にチームの勝利を最優先するというものでした。

僕は、チームの勝利のために自分ができることは何かを常に優先して考えます。チームの一員としての最終目標は、あくまでも勝つこと。それは強いチームの選手だろうと、負けが込んでいるチームの選手だろうと、一緒でしょう。
僕がなかなか勝てないチームにいたとしても、この考え方は変わらないと思います。チームの負けが込み、仮に優勝争いの圏外にいても、本塁打ばかりを狙うようなことはしません。実際問題として、本塁打を狙えば打てる確率が高く、それがチームが勝つための最善の策なら狙いますが、そうでない限りは、チームの勝利に最も貢献する確率の高い打撃を心掛けます。
(151ページ)

チームが勝つためなら、犠牲フライを打って1点を取った方が良い場面では、安打ではなく外野フライに徹するバッティングをします。そして、高めの甘い球が来て、たまたまホームランになったというのなら、それは幸いなことです。同じホームランでも、個人タイトル狙いで打ったものとチームの勝利を優先して打ったものでは意味が違います。


松井さんがチームの勝利を優先するプレイスタイルを貫いていたのがわかる試合が、2002年シーズンの最終戦です。

このシーズンで松井さんはホームラン王と打点王の二冠に輝きましたが、首位打者のタイトルもあと少しで手が届くところにいました。最終戦で5打数4安打なら、中日ドラゴンズ福留孝介選手の打率を上回る状況。すでに読売ジャイアンツは優勝を決めていたので、松井さんが個人タイトルを狙うバッティングをしても誰も文句を言いません。むしろ、ファンなら松井さんの三冠王達成をどんな形であれ見たかったのではないでしょうか?

しかし、松井さんは、個人タイトル狙いはせず、その試合もチームの勝利のためにプレイしました。どのような場面であれ、常に同じバッティングスタイルを貫くだけ。チームの勝利のためのバッティングです。


人間万事塞翁が馬

松井さんは、現役時代、ジャイアンツ在籍時もヤンキース在籍時も三冠王になることはありませんでした。でも、日本ではホームラン王と打点王を取っていますし、ヤンキース時代には2009年のワールドシリーズでチームの優勝に貢献しMVPを受賞しています。

日本での個人タイトルもヤンキース時代のMVPも、チームの勝利のためにプレイをした結果、獲得したものであり、決して自分の記録を最優先にプレイしたわけではないでしょう。チームの勝利に貢献しようとした結果、松井さん個人の成績が伸びて、数々のタイトルにつながったに違いありません。


組織の一員が個人の成績のために努力をしても、大した成長をしないのかもしれません。組織のために努力をした個人が、結果として成長するのでしょう。

個人にとって旨味のない選択肢でも、組織のメリットになるのであれば、その選択肢を選んでいく。

それが組織で結果を出す個人なのです。

不動心 (新潮新書)

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