ウェブ1丁目図書館

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グループに属す安心感だけでは快適な社会は生まれない

誰だって、人と同じだと安心するもの。

海外に旅行に行って日本人が自分一人だけだと不安になります。でも、友人と一緒だと安心できます。たとえ、出発した時は一人だったとしても、現地で日本人を見れば安心します。

この安心感はどこから来るのか考えてみると、自分が所属しているグループがあるのかないのかが理由のように思えます。海外で日本人が自分だけだとグループは形成されないけど、他にも日本人がいれば、それだけで日本人グループに属している安心感が生まれるのではないでしょうか。

グループに所属していない人にレッテルが貼られる

日本国内にいれば、周りはほとんどが日本人です。たまにアメリカ人がいると、違和感を感じます。

この違和感もまた、自分が日本人グループに属していることから来るものでしょう。性別の違いもグループ分けの基準となりますし、年齢の違いもグループ分けの基準となります。でも、これらのグループ分けは、それぞれのグループのメンバーが多いので、大した違和感を感じません。

違和感を覚えるのは、大多数に混ざって、少数の異質なものが混ざっている場合です。そして、大多数のメンバーを持つグループが、少数の異質なものにレッテルを貼ることで、なんとなく安心感を得ている面があるように思います。

ところで、レッテルを貼られた少数の異質な人たちは、グループから排除されなければならないのでしょうか。きっと、多くの人はそんなことはないというはずです。それもまた個性なのだから、認めるべきだと。

漫画家の山田玲司さんの著書『非属の才能』は、まさにその個性を認めるべきであり、どこにも属さない異質なものにこそ価値があると教えてくれます。

多くの人は、グループに属すことに安心感を覚えますが、それは、言葉を変えると「みんなと同じ」であることを良しとする考え方に染まっていることを意味します。もっと簡単に言えば、同調圧力に屈しているということです。

誰が常識を作っているのか

同調圧力、つまり、みんなと同じであることを強要しているのは、いったい誰なのか。

それは、みんなが同じことをしてくれた方が利益になる人たちです。現代資本主義社会では、大企業がその典型です。大きな利益を出すためには、大量生産が最も効率的です。そして、大量に造った工業製品を多くの人が使うことで、利益はさらに増えます。

市場経済という漁場を国外にまで広げ、定置網を仕掛け、思考停止の魚の群れをメディア操作で巧みに追い込み、一網打尽にしてやろうというわけだ。(80ページ)

大々的に広告を出して、これが世界の常識だと消費者に思い込ませ、思考停止してくれれば、こんなにありがたいことはありません。後は、大量生産を続けるだけで、いとも簡単に利益を獲得できます。

同調圧力は、誰かが広めた価値観を多くの人が常識と思い始めることでできるのです。

しかし、世の中には、その常識を疑う人がいます。なぜ、人と同じでなければならないのか、別に人と違うことをしても不利益はないのにどうして常識に従う必要があるのか、そんな疑問を持ったら最後、その人は変わり者扱いされます。場合によっては、多動性障害などといった病名まで付けられ、病人扱いされることだってあります。

常識が革新の邪魔をする

画期的なアイディアが、どのようにして生まれるのかを考えてみましょう。

今までになかった製品でもサービスでも、常識の外にある思考回路によって生み出されていることが多いはずです。同調圧力に屈しなかった人々が生み出すのが革新であり、定置網にかかった人々から、そのようなアイディアが生まれることは滅多にありません。

誰もが見ているテレビ、誰もが読んでいる新聞、誰もが利用しているネットサービス。大多数の人の情報源が、ほとんど同じ状況では、革新が生まれることはないでしょう。それどころか、これらのサービスには、定置網が仕掛けられているので、いつの間にか彼らの利益になるように行動させられてしまいます。

しかも、そのような情報源から得た情報が本当に自分にとって有用かどうかはわかりません。大手メディアが取り上げた情報より、知り合いの体験談の方が役に立つことの方が多いでしょう。仕掛けられた定置網の中では、自分にとって画期的な経験をすることはできません。

努力なんて、そう簡単に報われない

常識とされていることに違和感を感じることは、自分が群れの価値観に流されていないことを意味しています。

これこそが、天才の構成要素です。しかし、ただ違和感を感じるだけでは天才になれません。少しの才能と大いなる努力、これらも天才の構成要素です。

しかし、どんなに天才と言われている人でも、そう簡単に結果が出たわけではありません。やったことのほとんどが失敗です。成功するのは、1,000回に3回くらいのもの。だから、常識に違和感を感じて何か行動を起こしても、すぐに結果が出ることを期待しないこと。

そして、ひとたび何かに挑戦したら、人の言うことは聞いてはいけません。常識に支配された群れの中にあなたが具現化しようとすることを理解できる人がいるでしょうか。

人が話すとき、そこには、相手を操作しようとする無意識が根底にあるという。話している本人は、善意で言っているのですが、そこには同調圧力に支配された思考が、気づかない間に入っているものです。


自分が、グループに所属していると、安心するものです。その安心を手にするためにグループに属す生き方も、決して悪いものではありません。無駄な心配をしなくて良いですし、そのグループの見えない掟を破らなければ、自由に生きていけます。

一方で、グループに所属していない人もまた、社会にとって重要な財産です。革新を生み出すのは、グループの外にいる彼らであり、そこから、より暮らしやすい社会が築かれていくのです。一見、社会の役に立っていないように見える人を役立たずだと決めつけるより、彼らの非属の才能が開花するのを待つ方が、社会にとって利益になるはずです。