ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

変化が激しい時代には問い続ける力を身につけることが重要になる

現代社会は変化が激しいと言われるようになって久しいです。

変化が激しい時代とは、人々に学び続けることを強制する時代とも言えます。ある分野について、一度身につけた知識や技術が、一生の財産になるというのは、変化が少ない時代には当てはまります。

しかし、変化が激しい時代になると、これまで身につけてきた知識や技術だけでは対応できません。新たに知識や技術を身につける必要もありますし、時には、身につけた知識や技術を捨てる必要も出てきます。

そんな時代に我々は生きているのです。

教養教育の必要性

多くの日本人は、学びとは物知りになることと考えているのではないでしょうか。学校でも、暗記に力が入れられているので、学ぶことは、より多くの事柄を知ることと考えがちです。

もちろん、多くの事柄を知っているに越したことはありません。その情報が役に立つ場面はあるはずです。でも、これまでの常識がひっくり返るような変化が生じた時、これまでに暗記した内容が何の役にも立たなくなるかもしれません。

イェール大学で助教授をし、その後、帰国して小中高生を相手に英語と教養教育の塾(J PREP 斉藤宿)を運営している斉藤淳さんの著書『10歳から身につく問い、考え、表現する力』は、タイトル通り10歳からどのような勉強をしたら良いかが解説してありますが、その内容は、大人が学ぶための参考にもなります。

イェール大学は、教養教育に力を入れています。その内容は、「どんな困難な状況でも適切に判断を下し、問題を解決し、新しい価値を生み出す原動力となる不動の学び」です。変化が激しい現代では、イェール大学の教養教育の根底にある考え方が役に立つはずです。

どのような専門分野に進んでも、また、社会に出てからも、学問をするためには「問う」「考える」「表現する」力を養っておかなければなりません。ただ、暗記しただけでは、問うことも考えることもできません。どのような変化が起こっているのかを問い、どう対応すべきかを考える力を養い、さらに表現する力を身につけることが、これからますます重要になって来るでしょう。

常識はひっくり返る

今、常識とされていることは、未来永劫、変わらないという保証はありません。それは、さまざまな検証や反論を乗り越えてきた学説であり、現段階では最大公約数的に「正解らしい」とされているだけです。だから、ある時、いきなり、常識がひっくり返ってもおかしくありません。

その時、自分の専門分野だけを学び、ただ暗記していただけでは、新しい常識についていくことはできません。従来の常識がまちがっていたのなら、何がまちがっていたのかを問い、どうすれば真理にたどり着けるのかを考える必要が出てきます。

自分で「何を問い、検証するか」のテーマを設定し、自分なりに「仮説」を立てます。そして、「実験」し、仮説が正しいかどうかを「検証」します。これが科学的な手続きであり、学び続けるために必要な力です。

問題は、与えられるものではなく、自分で見つけるものです。問題は先生が与えるものであり、それに答えるのが学ぶ側の姿勢だと、古い教育を受けてきた人たちは思うでしょう。しかし、このような教育は、物知りになるなら良いのかもしれませんが、変化に対応する力を身につけるのには役立ちません。

常識がひっくり返った時、どう問い、考え、表現するか。その力を身につけることが、変化の激しい時代には要求されます。

読書の力

本書では、第四章で「表現する」ための読書法も紹介されています。

読書が、どう表現に結びつくのか疑問でしょうが、以下の文章を読むと納得できると思います。

何か新しいアイデアを表現するときに、すでにみんなが知っているような別のものにたとえて説明したり、新しいものに出会ってそれを自分なりに評価するときに、比較して検討する対象がたくさんあればあるほど、自分の評価や判断に自信が持ちやすくなります。普段からなるべくたくさんの材料を集めておけば、いざというときに役立ちます。(136ページ)

たくさんの材料を集める手段として、読書以上に効果的なものを見つけるのは難しいでしょう。

斉藤さんは、本を読むことについて以下のようなメリットを挙げています。

  1. 情報収集のコストが圧倒的に安い
  2. 一定の品質保証がなされている
  3. 知らない世界にふれられる
  4. 著者の主張が正しいか、自分の知識や価値観と照らして考えられる
  5. さまざまな表現方法がわかる


どんな学校にも図書館があるので、誰にでも本を読む最低限の機会は保証されています。また、本は専門家の知識が詰まっており、その内容を出版社が吟味しているので、一定の品質にあることも保証されています。信頼できる情報を安価に集める手段として、本ほど役に立つものはありません。

そして、著者により、文章が異なるので、1つの事柄について、より多くの表現方法を学ぶこともできます。自分の考えを他人に伝える時、読書によって身につけた表現力が役に立つはずです。

本で知識を得るには、古典、入門書、専門書を読む必要があります。

ここで、入門書を読む場合には、巻末や章末に参考文献のリストがしっかり書かれているものを選ぶのが良いとのこと。文献リストは、あとから調べたい時に役立ちます。また、文献リストがない本だと、その内容自体が怪しいものである可能性もあります。

表現力を身につけるためにも、読書の習慣は身につけておきたいですね。


変化が激しい時代では、まず「問う」ことが必要になります。

専門家が言っていることは信頼できる、新聞に書いていることは正しいと鵜呑みしていては問うことはできません。考えることも表現することも、まずは「問う」ことから始まるのです。