ウェブ1丁目図書館

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読書が他者を尊重する態度を磨く

インターネットの登場で、現代人は多くの情報に触れられるようになりました。

ネットがなかった時代の人と比較すると、受け取った情報の量は圧倒的に現代人の方が多いと思います。しかし、たくさんの情報に触れているにもかかわらず、頭に知識として定着した情報は意外と少ないのではないでしょうか。毎日、ネットを見ていて博学になったという人がどれほどいるでしょうか。

それに対して、本から得た情報は、知識として定着しやすいと思います。きっと、読書を習慣としている人なら、同じように感じているはずです。

ネットは消費される浅い情報だらけ

ネットで見つけた情報が、知識として定着しないのは、それが単に消費されるだけの情報だからです。もちろん、しっかり作り込まれた文章が、ぎっしりと詰まったウェブサイトは、深い知識を得ることができますが、そのようなウェブサイトに出会うのは難しいです。

SNSが主流となっている現在のネット世界では、浅い情報が一瞬だけ頭を通過していくだけです。

教育学を専門とする齋藤孝さんは、著書の『読書する人だけがたどり着ける場所』で、そのようなネットで得る情報に対して、我々を「消費者」と位置付けています。ネットでは、面白いものだけを選び、それ以外のものは次々と切り捨てていく「消費」の姿勢で情報に接することが多いです。

ネット上にある情報が浅いものだらけになるのは、ユーザーを読者ではなく消費者と考えてコンテンツが制作されていくからではありますが、ユーザー側の「構え」の問題でもあると齋藤さんは述べています。読書の場合、著者に尊敬の念を持ち、2人で対話するような形でページをめくっていきます。その行為には、辛抱強さが要求されます。

また、本は構成も整っていますから、ネットのように断片的な情報ではなく、1つの塊として情報を吸収することができます。ある分野について1冊だけでも本を読めば、その分野の全体像を大雑把につかむことができます。

読書の幅を広くすることで深く理解できる

読書で知識を身につける場合、ある分野について続けて何冊か読むと理解が深まります。齋藤さんは、新書を5冊読むだけで、「全然知らない」Cランクから「けっこう詳しい」Aランクになれると述べています。

新書は、専門家が一般向けにわかりやすく解説したものなので比較的読みやすいものが多いです。そのような新書でも、同じテーマの本を何冊か読むだけで、それなりの知識を身につけられます。ネットである情報を探して見つかったけど、もう少し詳しい説明がほしいと思った場合は、新書から手をつけるのがおすすめです。

深い知識を身につけるには、その分野の本をたくさん読むことが必要になります。しかし、それだけでは知識に深みが出てきません。

スコップを使って地面を掘っていっても、直径が30センチほどの穴では自分の腕の長さくらいの深さまでしか掘れません。でも、直径を50センチまで広げれば、もっと深く掘りすすめられます。直径が1メートル、2メートルと長くなればなるほど、穴を深く掘ることができます。

読書もこれと同じで、1つの分野の本ばかり読んでいても、ある程度の深さまでしかたどり着けません。より深い知識を身につけるには、別の分野についての知識も身につける必要があります。そうすることで、点であった知識がつながり合い、面になっていきます。

例えば、日本史であれば、戦国時代について詳しくなるためにその前後の室町時代と江戸時代の本を読むといった感じです。また、同時代の中国やヨーロッパの歴史について書かれた本を読むことも、戦国時代の知識を深めるのに役立つでしょう。全く関係がなさそうな物理や化学の本も、戦国時代とつながっているかもしれません。

知識を深めるためには、広く読書をすることも大切なのです。

何がすごいのかがわかる

読書で知識を得ていくと、様々なことに驚けるようになります。

知識がある人は、何でも知っているから、そうそう驚かないように思うかもしれません。しかし、そうではなく、知識があるからこそ、他人の仕事の価値が理解できるのです。

野球の知識がない人は、1シーズンにホームランを50本打つことのすごさを理解できません。ホームランを50本打つことがどれだけすごいことなのかは、過去にホームラン王になった選手のホームラン数を知っているから理解できるのです。

多くの知識を身につけることは、多くの驚きを体験できることでもあります。それは、自分以外の人の仕事を評価する態度にもつながっていきます。知識がなければ、「こんなことは誰だってできる」と思ってしまいますし、そもそも他人の仕事に何の興味も抱きません。

驚きは、他者を尊重する態度とも言えます。そのような態度は、知識を持つことで養われていくのです。


齋藤さんは、本を読むのに才能は必要ないと述べています。日本では、読み書きは小学校で習いますから、ほとんどの人が楽に文章を読めます。

今は読書の習慣がなくても、簡単に読書を始められます。いくつになってからでも、読書の習慣を身につけることはできるのです。