ウェブ1丁目図書館

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うつ病と診断されて喜ぶ人はうつ病ではない

現代はストレス社会と言われています。

そのためか、近年、心の病で悩んでいる人が増えているそうです。心の病の代表は、うつ病ではないでしょうか?一昔前までは、一生涯でうつ病になる確率は1%程度といわれていましたが、最近では10%程度の人が一生の間にうつ病になるとされています。

実に10倍も、うつ病にかかる人が増えていることになります。でも、これって本当なのでしょうか?

うつ病のような人たちが増えている

今も昔も、うつ病になる人の割合は1%程度で変わらないのではないかと考えているのが、精神科医の香山リカさんです。

香山さんは、著書の「『私はうつ』と言いたがる人たち」で、うつ病と一律に診断されている人の中には、本当のうつ病である「大うつ病」、躁うつ病の一種と考えられてる「双極Ⅱ型」、そのどちらでもない「うつ病になりたがる人たち」の3種に分類されると述べています。また、最近では、パーソナリティ障害をうつ病と誤診する例もあるようです。

そして、「しっかりと治療や休養が必要なうつ病」と「それ以外」に分けた場合、前者に相当するうつ病の生涯有病率は、まだ1%に近い水準にあるのではないかと指摘しています。つまり、増えているのは本当のうつ病ではなく、うつ病のような人たちなのではないかということです。

いつでもどこでも気持ちが沈んでいるのがうつ病

香山さんによると、うつ病は本来、時と場所を選ばないそうです。

うつ病の場合、その小康状態は時や場所を選ばないというのがポイントだと思う。つまり、「ハワイ旅行中は楽しめました」「会社を出て乗馬クラブに行くと、いつもどおりにできました」などということは、うつ病の場合はまずないと考えられる。
このように、症状やエネルギー水準が時と場所を選んでよくなったり悪くなったりする場合には、私は「これはうつ病とは言えないな」と考えることにしている。
(139~140ページ)

本当のうつ病は、いつでもどこでも精神的につらい状態が続いているということですね。ただ、本格的なうつ病の場合でも、途中で多少は状態が良くなることもあるそうなので、ある時に元気だったというだけで、それはうつ病ではないとは一概に言えないとのこと。

しかし、仕事中は憂鬱だけど終業時間になると元気になる人は、うつ病ではなく「自称うつ」の可能性があります。

自称うつはどうやって見分けるのか?

では、うつ病ではないかと思っている人が、自称うつなのかどうかを判断するにはどうすればよいのでしょうか?

香山さんが、あるベテランの精神医学者にうつ病かどうかの判定をどうすればよいかを尋ねたところ、その医学者は以下のように答えたそうです。

「それはね、うつ病と診断してがっかりした人はうつ病うつ病と診断して喜ぶ人はうつ病じゃない、ということじゃないの」
(142ページ)

本当のうつ病と診断される人は、自分がうつ病だと診断された時にショックを受けるそうです。精神科医が仕事を休むように勧めても、今は仕事が忙しいから休むことはできないと言います。うつ病であることが職場にばれると困るといった感情が湧いてくるのが本当のうつ病のようです。

反対に自称うつの人は、うつ病という診断が出なかったら、別の精神科に行き、自分がうつ病だという診断書をもらおうとする傾向にあり、やや厳しいことを医師から言われると通院をやめてしまいます。そこですぐに主治医を代えようとする人たちは、うつ病ではないと考えられます。


これは、精神科医ではなくても、なんとなくわかるのではないでしょうか?

本当の悩みというのは、人に言いたくないものですし、自分が悩んでいるということを他人に知られたくないものです。うつ病なんだということを自分の口から言おうとする人は、自称うつなのでしょう。極端ですが、医師からガンを告知されて喜ぶ患者がいないのと同じように、うつ病と診断されて喜ぶ人はそうそういないということです。

うつ病アイデンティティ

最近では、ブログやSNSなどで自分がうつ病であることを告白し、それを克服するための活動を記している人が増えています。

そういった人の中には本当のうつ病の人もいるのでしょうが、中には自称うつの人も少なからずいるはずです。自称うつの人たちにとって、自分がうつ病であることが一種のアイデンティティになっていると、香山さんは指摘しています。

昔は、うつ病は隠したい病気だったのが、やがて身体疾患と同じふつうの病気となり、現在では、それを通り越して「人々から一目置かれるアイデンティティ」になりつつあります。そのようなうつ病アイデンティティは、大企業、役所、官庁、ネットの世界など一部に限られていますが、今後、うつ病アイデンティティが様々なところで増加していく可能性は十分あるでしょう。


そして、現在では、うつ病アイデンティティも使えなくなっていると感じた人が、次の病気を探し求めています。

慢性疲労症候群繊維筋痛症うつ病アイデンティティに代わる疾患になりつつあるようです。もちろん、本当に繊維筋痛症で悩んでいる方もいます。

でも、自称うつの人は、軽い腰痛なんかでも、それが原因で気が滅入ってしまうと、繊維筋痛症であると思い込み、その診断書を求めて病院を転々としているのではないでしょうか?そして、医師の診断書が手に入った時、自称うつから自称繊維筋痛症アイデンティティができあがるのでしょう。


もしも、自分がうつ病ではないかと思ったら、卵を積極的に食べることですね。卵にはトリプトファンというアミノ酸が含まれており、それが幸福感をもたらすセロトニンの分泌を促します。自称うつは、単純にトリプトファンが不足しているだけかもしれません。

また、普段の食事で糖質を摂りすぎないことも重要でしょうね。

糖質を摂取すると、血糖値が上がり気持ちが高ぶります。しかし、高血糖になるとすい臓からインスリンが追加分泌され血糖値が下がり、やる気が出なくなったり、気分が沈みがちになったりします。

日常の食事の中で、糖質が多く含まれている食べ物は、米、パン、麺類です。ほとんどの日本人が3食必ずと言っていいほど、これらのうちのひとつは口にしていることでしょう。こういった食品を毎日食べていれば、軽いうつ状態になるのは当然です。

うつ病かなと思ったら、米、パン、麺類に替えて卵を食べてみることですね。それでも、気持ちが沈んだままなら、精神科を受診してください。

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

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