ウェブ1丁目図書館

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うつ病かもと思ったら卵を食べること

現代社会は何かとストレスが多く、それがうつ病の原因となることもあります。

誰だって仕事がうまく行かなかったり、人間関係が悪化すると、イライラしたり気持ちがふさぎがちになったりするものです。それは当たり前のことなので、あまり気にすることはないのでしょうが、中にはそれがうつ病の引き金になる人もいます。

うつの状態からうつ病に発展しないためには、鬱の原因が何なのかを理解しておくことが必要です。

うつの2つの原因

精神や心のはたらきを物質レベルで解析し、生化学、医学、薬学などライフサイエンスを中心とする執筆活動を行っている生田哲さんは、著書の「食べ物を変えれば脳が変わる」の中で、うつの原因には2種類あると述べています。

ここで、うつとは、心の病というほどではないが、「気分が低調」、「ブルー」の状態にあることを言います。

気持ちが落ち込む原因は、「心の問題」と「脳の生化学」の面から考えることができます。

心の問題から見ていくと、うつとは一言でいうと怒りということになります。怒りをうまく表現できないで育つと、それが心の中で蓄積していき、やがて、うつという形となってあらわれるようです。こういう状況にある人は、心理カウンセラーに相談したり自己啓発書を読んだりすると良いとのこと。


しかし、気分というのは心の持ち方だけで決まるものではなく、脳の伝達物質のバランスを取ったり、伝達物質の流れをよくしたりすることも大切です。そこで、脳の生化学からのアプローチが重要になってくるのです。

脳を最適な栄養状態にすると気分が向上するだけでなく元気にもなってきます。

脳の生化学から見た気分の落ち込みの原因は3つ

脳の生化学という面から見たとき、気分が落ち込んだりやる気を喪失したりするのは以下の3つの場合です。

  1. 血糖値の乱高下
  2. 栄養素の不足
  3. トリプトファンチロシンの不足

1.血糖値の乱高下

血糖値の乱高下は、糖質を摂取すると起こります。甘いものはもちろんのこと、米、麦、イモなど糖質が多量に含まれている物を食べると血糖値が上昇し、それを元の水準まで下げるためにインスリンが追加分泌されます。血糖値が上がると気分が高揚しますが、反対に下がると抑うつ状態になります。

なので、血糖値を安定させるためには、糖質を多く含んだ食べ物を常食しないことが大切です。

2.栄養素の不足

気分を向上させるのに効果的な栄養素には、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸ビタミンB12、ビタミンC、亜鉛マグネシウム、オメガ3やオメガ6といった必須脂肪酸があります。

ナイアシン、B6、葉酸は、メタンに相当するメチル基を移動させるメチル化を進める酵素を助ける。このメチル化は、脳内の重要な伝達物質ドーパミンノルアドレナリンをつくるのに欠かせない。ドーパミンは快感を発生させる物質であり、ノルアドレナリンはやる気を発生させる物質であるから、ナイアシン、B6、葉酸がどれほど大切かは容易に理解できる。
(174ページ)

3.トリプトファンチロシンの不足

うつには、「みじめな気分になる」ものと「やる気の消失」の2種類があります。これらは、以下の2種類の伝達物質のアンバランスが原因です。

  1. 気分に密接にかかわるセロトニン
  2. やる気を生み出す、ノルアドレナリンやアドレナリン

セロトニン必須アミノ酸トリプトファンから作り出されます。また、必須アミノ酸フェニルアラニンの水酸化によりチロシンになり、それがドーパミンとなってノルアドレナリンとアドレナリンができあがります。

なので、気分を良くするためにはトリプトファン、やる気を生み出すためにはフェニルアラニンの摂取が大切になります。

トリプトファンはどうやって摂取すればよいのか?

気分を良くするためには、セロトニンが分泌されることが大切です。そのためにはトリプトファンを摂取しなければなりませんが、どうやって摂取すればよいのでしょうか?

SSRIという抗うつ薬を使うことでセロトニンの利用効率を高めることもできますが、副作用の問題があります。それよりも普段の食事からセロトニンの材料となるトリプトファンを摂取した方が良いでしょう。

トリプトファンは、ふつうの食事にはごくわずかしか含まれていないため、とくに不足しやすいアミノ酸として知られる。トリプトファンが多く含まれている食べ物は、魚介類、鶏卵、豆腐、ピーナツ、バナナ、アーモンド、牛乳、チーズなどである。
(185ページ)

これらの食べ物をよく食べるようにすればセロトニンの分泌が良くなることが期待されるので、普段から多く食べたいですね。特に卵は完全栄養と言われているので、アレルギーなどで食べれない方以外は積極的に食べるべきでしょう。ただし、バナナは糖質が多量に含まれているので、血糖値の乱高下を起こさないために食べない方が良いですね。

コレステロールは気にするな

卵にはコレステロールがたくさん含まれているので、健康に良くないと言われることがあります。しかし、これは誤った俗説です。

そもそも、コレステロールを多く含む卵を食べると心臓病になる、というのは迷信にすぎない。多くの研究がこのことを証明している。その一つは、カリフォルニア大学のアルフィン・スレーター教授の報告だ。それによると、血中コレステロール値の正常な二五人にふだんの食事に加え一日二個の鶏卵を八週間摂取してもらったが、血中コレステロール値は上昇しなかったという。
(72ページ)

仮に卵を食べると血中コレステロールが増えたとしても、何の問題もありません。むしろコレステロールが不足することの方が、うつの原因となります。

コレステロールについても、マイナス面ばかりが強調されるが、じつは健康、とりわけ脳と心の健康に欠かせない栄養素である。コレステロールは、脳に大量に存在し、神経細胞の膜を適度な硬さに保っているのだ。
しかも、コレステロールは生体でもモデルチェンジされて、男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンのエストロゲン、そしてストレスに打ち勝つコルチゾールがつくられている。
テストステロンは男女ともにやる気を引き起こす。エストロゲンは女性のきぶんを高める。だから、コレステロール値が下がると、男女ともうつになりやすい。これで、自殺者にコレステロール値の低い人が多いことも説明がつく。
(71~72ページ)

また、卵はプロテインスコアが100点満点の良質な食材です。プロテインスコアは、人間が必要とする9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれていることを表す指標です。つまり、卵を摂取することはセロトニンの材料となるトリプトファンだけでなく、ドーパミンノルアドレナリン、アドレナリンの材料となるフェニルアラニンも含まれているのです。

しかも、卵にはビタミンC以外の全ての栄養が含まれていますので、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸ビタミンB12、ビタミンC、亜鉛マグネシウム、オメガ3やオメガ6といった必須脂肪酸の補給も可能です。


もしかして、現代人のうつが増えているのは、卵が健康に悪い、コレステロール生活習慣病の原因だという誤った情報が広まったことが理由かもしれません。

それを信じて栄養のない野菜ばかりを食べる生活を送る人が増えると、当然、セロトニンノルアドレナリン、アドレナリンの材料となる必須アミノ酸が不足するでしょう。


最近、気分が塞ぎがちだと感じる、どうもやる気が出ないと感じる、そういった方は卵をたくさん食べることをおすすめします。

食べ物を変えれば脳が変わる (PHP新書)

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  • 作者:生田 哲
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 新書